エサ-ペッカ・サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団の演奏を、サントリーホールにて聴く。

ムソルグスキー:はげ山の一夜(原典版)

バルトーク:中国の不思議な役人(組曲)

ベルリオーズ:幻想交響曲

(アンコール)

シベリウス:悲しきワルツ

ワーグナー:ローエングリン 第3幕への前奏曲


私が初めてサロネンを実演で聴いたのは、1998年の来日公演。本日のオケ、フィルハーモニア管との来日で、東京オペラシティでリゲティ、ラヴェル、ストラヴィンスキーという涙が出そうなすごいプログラムだった。このときの演奏、客席は半分も埋まってないくらいガラガラであったが、一生忘れないくらいの名演で、このとき以来私はサロネンの大ファンになったのである。そのときのオケ、フィルハーモニア管の印象もとてもよくて、(それ以前にも聴いたことはあったが)やはり知名度にふさわしい繊細なオケだなあ、と感心したものだ。


その後、2007年にフィルハーモニア管の演奏をインバルの指揮で聴いた。このときはマーラーの交響曲第1、2、5、9番だったが、その演奏が最悪だったのである。とにかくがさつな演奏で、弦はすかすか、木管は弱く、特に怒りを覚えたのはティンパニで、自己主張しすぎのあまりにがさつで無神経な強打の連続に辟易!よくあんなダメ奏者をインバルが許したものだと驚いてしまった。そんなわけで、私はこのオケに三行半を突きつけ、次回の来日は行かなかった。


しかし、今回は再度サロネンとともに来日するというので、足を運んだ次第。


オケはインバルとの来日のときに比べればずっといいけれども、私の好みの問題なんだろうか、このオケがあまりいいとは思えないのは変わらなかった。このオケの弦はいぶし銀とかビロードとか表現されることがあるが、私には弱体に聞こえるし、木管も技術にばらつきがある。私は、巧いオケでないと満足しないいやな奴なのだ。同じロンドンのオケなら、絶対にロンドン響のほうがいい。


でも、サロネンの指揮、これはやはり最高にかっこいい!サロネンが得意とする「役人」でのハイテンションの連続、強烈かつすさまじいスピードのリズム、クールと言う表現がベストだろうか。彼の指揮は動きが激しく、「巧い」指揮ではないかもしれないが、すさまじいエネルギーの放射である。

冒頭の「はげ山」、R・コルサコフの編曲版の華麗さはなく、モノトーンの土臭い音楽で、最近はアバドなんかが取り上げてかなり主流になってきている。こちらもサロネンの手にかかるととてもエネルギッシュな音楽となる。

後半の幻想、2楽章はコルネット入りバージョン。コルネット奏者が、右手にいるトランペットセクションから左手にいるホルンセクションの左手に移動し、コルネットの存在を強調していた。4、5楽章ではサロネンの小技が光って面白い。


アンコールでサロネンのワーグナーが多少とはいえ聴けたのはうれしい限り。サロネンは、ロスフィルでもフィルハーモニアでも「トリスタンとイゾルデ」を演奏会形式でやっているそうだ(ビル・ヴィオラの映像付き)。聴きたかったなぁ…


それにしても、サロネンは私のガキの頃のあこがれであった現代作曲家を本業とし(その作品はとてもわかりやすい)、50を過ぎてなお少年のように若々しく、指揮姿もかっこいい。今でもまさに、この人は私のあこがれの存在なのであった。