新日本フィルサントリー定期で、マーラーの8番を聴く。
アルミンク&新日本フィルを極めて高く評価し、ことあるごとに人に勧めている自分であるが、今日の演奏、はっきりいって駄演である。最後の「神秘の合唱」だけ盛り上げて終わってみました、という程度で、観客は割と沸いていたが、こんなまやかし演奏で満足して喝采するほど私は甘くない。
アルミンクの指揮は終始安全運転。遅めのテンポで、緩急に乏しく単調、ディナーミクの幅も狭い。オケの音色もいつになく精彩を欠き、ホルンなどひどいものだ。もともとアルミンクのマーラーは音が薄くすっきりしすぎていてどろどろ感はないのであるが、今日の8番は突出してつまらない演奏。響きの美しさを追いすぎたのか、曲の流れというか、推進力が全く感じられない。
いったい、どのくらいプローベをしたのかわからないが、まあ十分とは言えないだろう。もちろん、これだけの大曲、出演者全員の合わせなど当日の本番前くらいしかできないだろうけど、せいぜいオケ部分だけでももうちょっとどうにかなってないと、共演する独唱者や合唱がかわいそう。
最大の問題は、指揮者の読み込み不足ではなかろうか?曲への共感もあまり感じられない。
これと比較すると、昨年の4月28日にサントリーホールで聴いた、インバル指揮都響の同曲の演奏がいかにすごい演奏であったかがわかるというものだ。インバルの演奏は、テンポの伸縮が自在で自然、まさに今、曲が生まれたかのような新鮮さが感じられるし、フレージングがつぼを得ていて、これ以外にありえないという絶対的な確信に満ちていたと思う。
私はアルミンク&新日フィルのファンであるだけに、今日のような演奏は残念である。
蛇足ながら、マーラーの8番のCDでは、ブーレーズ/ベルリン州立歌劇場管(DG)が圧倒的に素晴らしい。冒頭の「Veni,Veni creator spiritus...」の部分など、拍子抜けするほどあっさりしているが、全体のバランスがものすごくいいし、歌心も意外に感じられる。語り尽くされたショルティ/シカゴ響(Decca)も完成度が高い。先述のインバル/都響盤(Exton)は、私が聴いた翌日のミューザ川崎ライヴだが、録音するとオケの音がやや硬いのがちょっと気になる。インバルだとフランクフルト放送響盤(DENON)もいい。
ちっとも面白くないのはアバド/ベルリン・フィル(DG)。あまりに優等生的。
さらに蛇足ながら、トンデモ盤は山田一雄/都響の藤沢市民会館ライヴ(Sony Classical)。これはすごい…抱腹絶倒の演奏。第2部に入ると壮絶さはさらに倍増し、オケ、独唱、合唱、そして指揮者が「今、どこ??」というカオス状態に突入。でも、ヤマカズさんの演奏は壮大ではある。大物だ。