20日、サントリーホールにて、

ヴェーベルン:パッサカリア op.1 、管弦楽のための6つの小品 op.6 、9つの楽器のための協奏曲 op.24

ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 op.98

(アンコール)J・シュトラウス:レモンの花咲くところ


ウィーン・フィルでヴェーベルンが聞けるなんて!今回の来日公演の目玉と言っていい公演だ。それに、パッサカリアに始まり、パッサカリア(ブラームス4番の終楽章)に終わるという、粋なプログラミング。


ウィーン・フィルのヴェーベルン、昨年のザルツブルク音楽祭にて、ヤンソンスの指揮で「夏風の中で」を聴いたのが初めて。

ウィーン・フィルはなぜか新ウィーン楽派を今まであまり演奏してなくて、1980年代くらいからアバドなどの指揮で取り上げ始めたと記憶する。プログラムにもあるとおり、例えば2曲目の作品6などは、初演時に聴衆からも、評論家からも全く理解されなかったとのこと。新ウィーン楽派の3人(シェーンベルク、ベルク、ヴェーベルン)は、ウィーンで活動したものの、ウィーンでは極めて冷遇されていたわけだ。そのような経緯からなのか、単に歴代の指揮者が彼らを取り上げなかったからか(フルトヴェングラーが新ウィーン楽派を演奏したという話は聞いたことがない)、とにかくウィーン・フィルがこの3人の音楽を頻繁に演奏するようになったのはここ2、30年のことなのだ。まあそれを言い出すと、ウィーン・フィルのマーラーも似たようなものであるわけだが。


最初のパッサカリアは、ヴェーベルンの音楽のなかでは、夏風と並び調性が維持されて比較的ききやすい音楽だ。この世紀末ウィーンの響き!この曲こそ、シェーンベルクの浄夜などと並びぜひウィーン・フィルで聴きたい曲のひとつであろう。

続く作品6は、個人的には大好きな曲である。意外にも日本でも取り上げられる機会が多く、私も今までに日本のオケでは飯守泰次郎、ベルティーニ、高関健、アルミンク、沼尻などで聴いたし、ピエール・ブーレーズはこの曲が好きらしく、来日公演ではロンドン響、マーラーユーゲント管で取り上げている。この曲の何がすごいって、それぞれが極めて短い6つの断片に、20世紀を予見するようなカタストロフがちりばめられているところであろう。特に第4楽章は強烈な印象を受けること必至である。日本のオケで聴くと、ヴェーベルンの音楽がとても「きれい」であると思うのだが、ウィーン・フィルで聴くと「美しい!」と思えるのがすごい。

続く9つの楽器のための協奏曲は奏者が9人しかいないので、なんか損した気分だが、こちらがまたウィーンフィルの若き名手たちによる鮮烈な演奏。


さて後半はブラームスの4番。ウィーン・フィルのブラ4といえば、もう名盤のオンパレードであり、バルビローリ、ベーム、クライバー、バーンスタイン、ジュリーニなど枚挙に暇がない。今日の演奏も、ウィーン・フィルなら当然できる水準の演奏だったが、正直言って全く感動しなかった。第2楽章のチェロなんかも、CDで聴くと泣けるんだけど…先日のベト7よりはましだが、この演奏なら指揮者はいなくても変わらんだろう。


アンコールは前日の川崎と同じ。まあ、4回でポルカ4曲、ワルツ1曲を2回聴いたので、もうニュー・イヤー・コンサートの3分の1くらいは聴いた気分。25日は所用で残念ながら行けないが、25日のアンコールもまた別の曲やるんだろうな…