今人気急上昇中の上岡敏之指揮新日本フィルで、

R・シュトラウス:組曲「町人貴族」と家庭交響曲(すみだトリフォニーホール)。


最近、やたらとR・シュトラウスを聴く機会が多いが、今年は記念の年だったろうか?生誕60周年?


上岡は、1月に読響でマーラーの10番、モーツァルトのピアノ協奏曲23番と、やはりR・シュトラウスのばらの騎士組曲を聴いたが、シュトラウスはテンポを驚くほど動かして躍動感ある音楽を作り出していた。


今日の2曲は、R・シュトラウス好きの私でもどちらかというとなじみが薄い曲だ。

前半の町人貴族はピアノを含む小編成のオケによる組曲で、リュリの音楽をベースとしている。オケは少々粗さが目立たぬわけでもなかったが、室内楽的なこじんまりとした感じのなかにも、躍動感を感じさせる瞬間がいくつかあり、まずまずの演奏だろうか。


後半の家庭交響曲、私の認識では45分程度の曲。冒頭のチェロの主題に続くオーボエのソロを聴いて、少々いやな予感が…

遅い。この調子だとかなり長いのでは?

予想通り、遅い部分かなり歌い込んだ演奏で、通常より長かった。


しかし、上岡の解釈、遅い部分はじっくり歌って遅いのだが、速い部分は普通に速い。いや、並み以上にたたみかけるように演奏するから、速い部分がものすごく生き生きして劇的効果を上げていた。もともと一本調子のところがあっていまいちわかりにくいこの曲、このような解釈のおかげで非常に起伏に富んで聴き応えがあるものになっていた。

この曲は4部構成の単一楽章であるが、結果として第4部がとても引き立ち、素晴らしい効果を上げていたと思う。

開始時刻を正確に記憶していないが、終わったのは9時20分。全曲通して1時間近かったのでは?


やはり、終演後は拍手喝采。今日のプロはトリフォニー定期での2回に加え、サントリー定期でも同一プロだから、都合3回も演奏されることになる。このようなプログラムになったのは、上岡の人気を予想してのことか、あるいは単に企画上の都合か。


オケは粗い部分も散見されたが、それでも弦や木管の美しさはますます磨きがかかっている。最近トリフォニーホールで新日本フィルを聴くと、本当に素晴らしい音がすると思うようになった。オケの響きがホールになじんできたのだろうか。素晴らしいことである。ウィーンフィルとムジークフェラインザール、コンセルトヘボウ管とアムステルダムのコンセルトヘボウのホール、ベルリンフィルとベルリンのフィルハーモニーホール、こういった関係が日本のオケにできつつあるのは喜ばしい。あと10年、20年後が非常に楽しみだ。