さっき、横浜のタワーで買ったP・ヤルヴィ/ドイツ・カンマーフィルによるベートーヴェンの交響曲第5&1番を聴いています。一昨年・昨年の来日公演の素晴らしい記憶がよみがえる、斬新で、衝撃的な演奏です。

ベートーヴェンの交響曲は、楽譜をめくるたびに新たな発見がある、とマリス・ヤンソンスが言っていましたが、ヤルヴィのベートーヴェンはまさに「ベートーヴェンが意図したのはこういうことだったのか」「こういう解釈の仕方もあったのか」と膝を打つ演奏!

さて、昨日・今日、横浜のみなとみらいホールで、そのパーヴォ・ヤルヴィと、同じドイツではあるが別のオケ、フランクフルト放送響のブラームスの交響曲全曲演奏でした。

プログラムにあるインタビューで、ヤルヴィは、自分は伝統の犠牲になりたくない、過去の巨匠の演奏よりもっとエモーショナルなエフェクトに満ちた演奏であったもいいのではないか、ということを述べています。

実際の演奏は、確かに一般的なブラームスのイメージ(ひげをたくわえ、お腹が大きいイメージ)からは遠い、情熱的で贅肉をそぎ落とした演奏で、かなりの水準に達していたといえるでしょう。ただ、しつこいですが、ベートーヴェンの鮮烈さにはやはり及ばす、といったところです。

オケの音はかなりごつごつしていて、ドイツ的な音が好きな人にはいいかもしれません。私は、ブラームスは原則ウィーンフィルの演奏でないといかん、という暴論の持ち主でして…まあ、これは冗談ですが、2番や4番の第2楽章の、濃厚な赤ワインのような味わいは、フランクフルトのオケからは聞こえませんでした。

ヤルヴィの指揮ぶりはいつもどおりシャープでしたが、第1番の第4楽章の、歓喜の歌に似た第1主題の再現部で、指揮棒を左手に持ち替えて右手で表情付けをするあたりは、師匠のバーンスタインを思い出させるものでした。

アンコールは2日ともハンガリー舞曲の5、6番。外来オケのアンコールでハンガリー舞曲とスラブ舞曲は、もううんざり、といったところですが、ヤルヴィの演奏はデフォルメが効いていて相当面白いものでした。最後は2日ともホルンセクションの四重奏で、初日の曲は不明、2日目はブラームスの子守歌。このオケのホルンはなかなかいいかもしれません。初日の最後の最後で一音はずしたのはご愛嬌。