夫は20代でB型肝炎を発症。

 

当時母子感染の可能性がなく、思い当たることが何もなかったため、

当時は床屋の髭剃りか、注射針の使い回しなど血液を介しての感染だろうとされていた。

 

B型肝炎は治療法がなく、生涯完治することもなく、肝硬変、肝がんに移行するリスクが高いので、

摂生して生活するよう言われていた。

 

数年単位で悪化しては入院となり、収まると節制しつつ仕事を続けていた。


モーレツ社員という言葉を現実に実践している男性が多い時代に出世よりも肝臓。

高タンパク低カロリーの食生活。

食後の安静。

肝臓に良いと言われるものは漢方でも民間療法でもあらゆるものにトライした。


 

発症から20年近く経った頃、血液検査で抗体はないが抗原もなくなったと言われた。

「めずらしく治った」と考えていいということで長きにわたる検査通院は終了となった。

 

その後は年1回の会社が行う健康診断のみで、節制生活も終了、元気に過ごしていた。


ところが30年後に、あっけなく原発性肝がんで亡くなった。

 

見送ってしばらくして、以前B型肝炎訴訟の書類を集めていたことを思い出し、

テレビで宣伝している弁護士事務所に相談して、提訴した。

 

しかし、特定無症候性持続感染者(給付金50万円)で提訴しましょうとなった。

 

 

理由は、

1、肝がん発覚当時B型肝炎の所見はみられなかった>>B型肝炎が肝がんの直接の原因とは言えない。

2、B型肝炎のカルテが残っていない。

 

1、はともかく、2は、大病院で20~30年前の治療記録が残っているわけがない。

入院した3件それぞれ申請に出向いたが、当然破棄処分されていた。

入院に至る社内健康診断の簡単な結果報告書、その後の血液検査結果と思われる数字だけのグラフ、医療保険の入院給付書等は残っていたが、

それでは足りないらしい。

 

予防接種に注射を使い回していたのは、60年も前の話。

夫はよくこんなに資料を残していたものだと感心するくらいなのに、これでも足りないなら、誰が申請できようか。

 

給付対象者数推定140万人とも言われて始まったこの制度の申請者が10万人にも満たないのは無理もない。

入院していた地方の病院を含み何件もカルテ開示の申請にいった交通費、小学校や兄弟の血液検査代、

膨大な過去の資料集めを思ったら、50万円なんてチャラになる。

 

国には夫と家族の人生に大きなダメージを与えた責任を、ちゃんととってほしい。

 

ちなみに結果はまだ。

提訴から1年以上かかるらしい。