大腸内視鏡検査の待ち時間、待合室で一緒になったウチの親父同い年のオッサンと話をした。
オッサンはどうやら大腸がんを患ったらしく、術後の検診のようだった。
現在も抗がん剤を使用しているとのこと。
話を聞いているとCVポートを埋め込んでいるようだった。
ということはFOLFOXなどを行っているのだろう、と考えた。
オッサンが若い俺に興味を持ったらしく、
「お宅さんは何をしている方で?」
と聞いてきたので、
「博士課程の学生です。」
と答えた。
「ほ~すげぇな。何を勉強してるんだい?」
とさらに聞いてくるので、
「実は抗がん剤を中心に研究してるんですよ。」
と答えた。
(あながち間違いではないが、抗がん剤だけを研究しているわけではない。)
オッサンは、
「へぇ~やっぱ知ってるほうが良いんかな?そういうこと(抗がん剤など)は…。」
と言った。
確かに知らない幸せは存在すると思う。
抗がん剤の中にはあんまり効き目が望めないものもある。
身内にもしがん患者がいたとして、使用する抗がん剤の種類を聞いて、
効き目の望みや現在の状況がある程度わかってしまう。
インターネットで調べられる程度の知識であっても不安になるし、
まして俺らは論文を読み、臨床での話を聞いたりすることがある立場。
もし知らなければ望みだけを持ってすごせるのではないか?
そういうことを考えてしまう。
俺は潰瘍性大腸炎を抱えていて、この病気による大腸がんのリスクもある程度知っていて、
そして大腸がんの治療法は大体知っているつもりだ。
知っているからこその覚悟もあるが、知っているからこその不安もある。
複雑なところだ。
オッサンにもそう答えた。
難しい問題だ。
事実俺は知ってしまっているのだから。