天皇の住居を「皇居」といいます。

 現在の皇居は、江戸時代に徳川幕府が築いた「江戸城」があった場所で、総面積は1,150,436平方メートル、実に日比谷公園の約16倍の広さがあり、

住所番地は「東京都千代田区千代田一番地」、

また郵便番号は100-0001です。

 明治天皇が居所を京都御所から東京の旧江戸城に御移しになったのが今の皇居の始まりです。

 明治2年からは「皇城」(こうじょう)、また明治21年からは「宮城」(きゅうじょう)と呼ばれるようになり、昭和23年から現在の「皇居」と呼ばれるようになりました。

 初めに天皇の御座所(ござしょ)(天皇が普段御過ごしになる場所)とされた旧江戸城西の丸御殿は明治6年に焼失し、以降長らく赤坂離宮が仮皇居とされていました。

 明治22年になって元の皇居に新宮殿が完成し、後に「明治宮殿」と呼ばれるようになります。

 木造でありながら、重厚華麗な建物でした。しかし、明治宮殿は昭和20年の東京大空襲で焼き落ちてしまいます。

 その後、しばらくの間は宮内庁庁舎の一部が仮宮殿とされましたが、昭和43年には明治宮殿のあった場所に新宮殿が完成しました。

 それが現在の宮殿です。

 鉄筋コンクリート、地上二階、地下一階建て、延面積約23,000平方メートルの新宮殿は、天皇の公的な活動の場として機能しています。

 儀式などが行われる「正殿」(せいでん)、正月の一般参賀などで廊下に皇族方が御立ちになることで知られる「長和殿」(ちょうわでん)、宮中晩餐会などが行われる「豊明殿」(ほうめいでん)、そして天皇陛下が執務をなさる「表御座所」(おもてござしょ)などからなり、それぞれが回廊や廊下で結ばれています。

 「威厳」よりも「親愛」を、また「荘重」よりも「平明」をとの意図で造営された宮殿は、無駄な装飾を全て省き、簡潔なつくりに徹しています。

 ところで天皇陛下が御住まいになっていらっしゃるのは、宮殿よりも奥に位置する吹上御苑(ふきあげぎょえん)です。

 昭和天皇は戦前までは明治宮殿に御住まいになっていらっしゃいましたが、昭和20年に宮殿が燃えてしまうと、昭和天皇は御文庫(ごぶんこ)を居所となさいました。

 御文庫は、元々は天皇の防空壕として昭和17年に建設されたものです。

 砂を詰めた壁と床は厚さが2メートル以上もあり、1トンの爆弾にも耐えられるように設計されていました。

 終戦の聖断が下った御前会議が開かれたのもこの場所です。

 そして昭和天皇は昭和36年になって、新たに建てられた吹上御所に御住まいになりました。

 昭和天皇が崩御遊ばされると、吹上御所は「吹上大宮御所」(ふきあげおおみやごしょ)と呼ばれるようになり、昭和天皇后の香淳皇太后が御住まいになっていらっしゃいましたが、香淳皇太后が崩御遊ばされてからはどなたもお使いになっていらっしゃいません。

 また今上天皇は、平成元年に即位遊ばし、平成5年に完成した吹上新御所に御移りになり、現在に至ります。

 ところで、全ての皇族方が皇居の中に御住みになっていらっしゃるかといえば、そうではありません。

 皇居の中に御住みになっていらっしゃるのは、天皇家のみ(現在は天皇陛下、皇后陛下のみ)です。

 皇太子御一家は赤坂御用地内の東宮御所にいらっしゃいますし、その他の皇族方も、赤坂御用地をはじめ、皇居とは別の場所にいらっしゃいます。

 皇居にはその他にもたくさんの建物があります。

 宮内庁庁舎は皇居内の宮殿の近くに位置し、同じく宮殿の近くには、皇居で最も神聖な場所である宮中三殿(きゅうちゅうさんでん)があります。

 宮中三殿の中でも中心に位置するのが、天照大御神を祭る賢所(かしこどころ)で、三種の神器御うちの鏡が奉安されています。

 そして天神地祇(てんじんちぎ)を祭る神殿と、歴代天皇と皇族の御霊(みたま)を祭る皇霊殿(こうれいでん)を合わせて三殿呼んでいます。

 そして宮中三殿のすぐ近くには、天皇陛下がお手植えをなさる水田が、また宮内庁庁舎のすぐ裏手には、皇后陛下が御養蚕をなさる御養蚕所があります。

 皇居の正門は二重橋を渡ったところに位置し、普段は閉ざされていますが、国賓などを迎え入れるほか、新年と天皇誕生日の一般参賀の際に開かれます。

 これまで説明してきたのは、皇居の中でも西の丸地区についてでしたが、皇居の東側一帯には「皇居東御苑」と呼ばれ、一般公開されています。

 江戸城の本丸跡には今でも石垣が残り、将軍が政務を執った御殿、将軍の配偶者の生活空間だった大奥などの跡地は、現在は芝生となり、憩いの場所となっています。

 また、その広大な芝生の敷地では、平成2年に今上天皇の大嘗祭が行われました。

 皇居東御苑にはその他にも、宮内庁病院、皇宮警察、厩舎(きゅうしゃ)、宮内庁書陵部、宮内庁雅楽堂、桃華楽堂(とうかがくどう)、三の丸尚蔵館(さんのまるしょうぞうかん)などがあります。

 皇居東御苑は春になると美しい梅の花が咲き乱れることで知られています。


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