最もエコな暖房は何かといえば、暖炉と火鉢に尽きる。

 今や電気やガスによる暖房が一般的だが、これらは化石燃料を熱に転換しているのであり、環境に一定の負荷をかける。

 そしてもちろんCO2も排出させる。

 暖炉と火鉢も、それぞれ薪と木炭を燃やしているのだから、CO2を出すことには違いはないが、同じCO2でも化石燃料を燃やしたときに出るCO2と、薪や木炭を燃やしたときに出るCO2は全く異なるものである。

 つまり、薪・木炭は、いわば樹木が光合成によって太陽のエネルギーを、形を換えて貯えたものであり、暖炉と火鉢は太陽エネルギーの利用だといえる。

 薪や木炭を燃やしたときに出るCO2は、樹木が成長する過程で大気から吸収したCO2であり、それが自然界に戻されるだけなのだ。

 だから木材を燃やしても地球規模でのCO2収支には影響を与えない。

 特に日本人が昔から薪材として利用してきたのは雑木林で見かけるクヌギである。

 クヌギは成長が早く、クヌギの林は10年で再生する。

 つまり、十分の一ずつ伐採していれば、雑木林は毎年再生する。

 過剰に伐採しなければ、薪と木炭は再生可能な資源なのだ。

 暖炉と火鉢の魅力は、環境負荷が少ないということだけではない。

 火を囲むこと自体が楽しいことではなかろうか。

 人は火の回りに集まる。昔は家の中心には囲炉裏があり、家族の中心でもあった。

 火には人と人とのコミニュケーションを活発にする力がある。

 特に私は火鉢を愛用している。

 寒い日に帰宅すると先ず火鉢に火を起こし、南部鉄器に湯を沸かす。

 湯が沸けば蒸気が立ちのぼるので部屋の乾いた空気に潤いを与えてくれ、また茶を入れることもできる。

 しかも、鉄器で沸かした湯は適度に鉄分が溶け出し、体によいは美味しいは、その上じわじわと遠赤外線が体を芯から温めてくれるのだ。

 だが火鉢には大きな問題点もある。

 現代の機密性のよい家では、定期的に換気をしないと一酸化炭素中毒にやられる危険がある。

 私はそれで一度死にかけたことがある。



この記事は、平成18年に、連載していた『フジサンケイ・ビジネスアイ』の「エコマインド・アイ」に寄稿したものです。


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