皆さんこんにちは。

本日は、「プロティアン・キャリアについて」というテーマで書き留めたいと思います。

 

この「プロティアン・キャリア」という言葉は、1976年にボストン大学経営大学院のダグラス・ホール教授が提唱したキャリア理論からくる言葉です。 ギリシア神話に登場する自由自在に姿を変えることができる海神プロテウスが語源となっていて、社会や環境の変化に適応する 「変幻自在なキャリア」を意味しています。日本では、法政大学の田中研之輔先生が書籍や様々な活動を通して、プロティアン的なキャリア形成の大切さを説いてくださっています。

 

 

人生100年時代となり、我々の寿命は延びました。でも一方で年金をはじめとするセーフティネットは、税収の低減、生産年齢人口の減少などで未来像が描けていません。そもそも人口の減少に歯止めがかからない現在、年金支給を抑えるために、国は企業にも個人にもなるべく長い間働くように制度改訂を行ってきていますが、現実は60歳を過ぎた世代の就業環境は厳しいものがあります。

 

日本企業は終身雇用を前提に、賃金制度や退職金制度を作ってきていますし、人材の育成やキャリア開発もその前提で企業主導で行われてきた故、特に年長者にとっては、「慣れ親しんだ企業の所属を離れて自分自身で新しい世界を再開発する」という人生の転換・転職にドライブが掛かりにくいのもうなずけます。

 

でも現実は、あまりにも急なスピードでIOT関連の技術革新が進み、またグローバル化による多様性が一気に浸透し、必ずしも日本国ブランドが世界に通じなくなってきているわけで、従来のようにすべて企業側(経営側)が解答を作って与えてくれることはできなくなったのだと思います。意思はあっても実務に対応できるスキルがなければ、「働かないオッサン」と烙印を押されてしまうのが現実なのです。

 

そういう環境変化に対応するために、辛くても心細くても、キャリアのオーナーシップを自分自身に取り戻し、自分の持っているタレント(才能、個性)を社会に貢献できるような形で世間市場に提供していく姿勢を持つことが大切で、これをプロティアン・キャリア的な思考だと私は思います。

 

田中先生は、「活動すること、変わり続けること、挑戦すること」を大切なスタンスとして教えて下さいました。また同書の中で、ウィリアム・コフィン牧師の言葉を引用されて、「キャリアの主人公を企業に預けたままであれば、たとえラットレースに勝ったとしても(=どんなに地位を得ようとも)、君たちは所詮ネズミのままだ」と示して下さいました。

 

コロナ感染の再拡大に歯止めも掛からず、社会活動も大きな制限を受けている現在、具体的な行動を積極的に取ることは難しいし、特に人脈を通じた社会関係資本の増強は、オンラインでは達成できないケースが多いかと思います。この時期、「自分自身が変わる」という精神作業や「自分の能力、価値観の棚卸」を通して、来るべき時期に備えたいと思います。

 

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

2021.7.24 #194