皆さんこんにちは。

本日も、「働くみんなのモチベーション論」の続きです。キャリア開発考の12回目になります。

本日は、金井先生の同書に戻り、モチベーション論を再度鳥瞰して、理解を深めていきたいと思います。

 

ここ数回にわたり、心理的な3つの要素、すなわち「認知」「情動」「欲求」という角度からモチベーションについて考えてきました。基本的に人間は、学ぶこと、働くことなど多くの活動において自己決定すること(=自律的であること)が高いパフォーマンスや精神的健康をもたらすといえますね。

 

その角度から考えられた理論に、デシ、ライアンの「自己決定理論」という考え方があります。生来人間は、以下3つの自律的要素を持っているという考えに立っています。

 

(1)人間は、能力を発揮したいという「有能感」を持っている

(2)自分の意思で自律的に自分の行動を選択したいという「自律性」を持っている

(3)人々と関係を持ちたいという「関係性」を持っている

 

目に見えない「心」を科学的に捉えようと、ヴント以来の心理学者は「意識」に着目して研究してきましたが、その後1960年代は、「行動主義」という目に見える行動を中心に捉えて心を捉えようとする考え方が主流となりました。簡単に言えば、外部からの刺激に反応する「学習」という概念ですね。

でも人間は、外部からの刺激が無くては自発的に動かない、というわけではありません。内発的動機付け、すなわち自ら考え行動することに欲求を持っているのです。ヘッブの「感覚遮断の実験」、ハーローの「アカゲザルの実験」などでも証明されていますね。そして、内発的動機付けこそが、本人の成長や高いパフォーマンスを生む原動力となります。

外発動機と内発動機の関係を考えたのが、自己決定理論です。

 

一般的に「外発的動機付け」というと、「主体性が無くて悪いもの」のように考えられがちですが、一口に言っても外発動機にもレベルがあります。デシとライアンは、ある行動がどれくらい自律的に生じているかによって、4つの自己調整の段階に分けて考えました。

 

 

私たちのやる気を引き起こす動機付けは、自分が決めた程度(自己決定)が大きいほど大きくなります。

 

また、この自己決定理論で、「アンダーマイニング効果」を説明することもできます。
アンダーマイニング効果とは、内発的動機づけの状態の人に外発的動機づけを施してしまうことで、内発的動機づけが阻害されるとする理論です。例えば、楽しくて絵を描いていた幼児たちが、絵を描く見返りとして何らかのアメなどの報酬をもらうようになると、自律性が低下して、報酬がなければ絵を描かない、といった心理に変わってしまうことです。

逆に言えば、「自律性」を損なわず、「有能さ」や「関係性」を高める外的報酬(例えば褒め言葉)を与えることができれば、アンダーマイニング効果は発生しません。

 

外発動機、内発動機的考え方は、心理学的なモチベーション論となりますが、経営学視点でのモチベーション分類もあります。次回からは、こちらの視点で思考を深めていきたいと思います。

 

最後までお読みくださりありがとうございました。

2020.7.23 #103