金魚のフン -84ページ目

できない

わたしのなかにうずまく

こんなにあいされている

それなのにどうして

わたしはあなたを

見下してしまう



あなたにさえ

やさしくなれないわたしは

どこまでもみにくい



わたしのこころに音色があるなら

あいするあなたの耳を

奪い去ってしまうだろう

とめどなく流れる不協和音を

とめる術をわたしはしらない



わたしはだれも

たいせつにできない

戻れないのかな

さみしいと
素直に泣ける女になりたい

うれしいと
素直に笑える女になりたい

くやしいと
素直に怒れる女になりたい



わたしはいつも
素直であるように振る舞う

泣いたり笑ったり怒ったり
くるくるまわって最後に笑う



ぜんぶわたし

けど わたしじゃない


淋しくて淋しくてみんなが羨ましくて崩れそうなところ

怖くて怖くて誰も寄せ付けないダンゴ虫なところ

虚しくて虚しくて大切をもてない冷酷なところ


全部みせない

わたしのなかだけのほんと

そんなほんとはだれもしらない


わたしのなかにはほんとがあって

わたしのそとにはうそがある

うそがほんとのかおしてわらう

ほんとはうそにあこがれる


ふたつは離れたり近寄ったり

触れ合う瞬間があるかと思えば
永遠に遠ざかるような夜もある




子供につきまとわれてドウランを落とせないピエロみたい

タイミングをつかめず こまってわらう


ずっとこのままでも
いきていけるけど


素顔を忘れたピエロには


帰り道がわからない

なんだ

クジラは だれよりクジラらしく

渡り鳥は だれより渡り鳥らしく

珊瑚礁は だれより珊瑚礁らしく

生きていた



クジラは 渡り鳥になりたくて

空を追いかけ 潮をふく

渡り鳥は 珊瑚礁になりたくて

砂浜に 足跡をのこす

珊瑚礁は クジラになりたくて

潮の流れに 身をまかせる


それでもクジラは クジラであることを怠らず

それでも渡り鳥は 渡り鳥であることを怠らず

それでも珊瑚礁は 珊瑚礁であることを怠らなかった


わたしがあなたになりたいということと

わたしがわたしであることを怠ることとは

ソーダ水と雨ぐらい
べつのことなんだね