「経皮毒」という言葉を初めて聞いたのは今から13年前のこと。当時、オーガニック化粧品のメーカーで仕事をしていたこともあり、『経皮毒勉強会』という講演を聴講したのがきっかけだった。
当時はネットで検索しようにも、「経皮毒」という単語がすんなり表示されなかった。辞典にも載っておらず、造語の括りだったかららしい。また、科学的根拠が乏しいという理由に加え、インチキコスメ業者が経皮毒の恐怖を煽り業務停止命令を受けるという不祥事を起こしたことも一因にある。
しかし、今では病院関係者やオーガニックを重視している人たちによって多くの情報がネットであげられたりするようになった。ようやく浸透されつつあるというところか。だが、まだまだの感は否めない。
「経口毒」は食品添加物や残留農薬など口から入る有害物質のことで、その90%は体外に排出することができる。
一方「経皮毒」は皮膚を通して体の中に吸収される有害物質のことで、その多くが体内に蓄積される。現在のアトピー患者の増加もそれが原因ではないかと言われているほどだ。
現に経皮吸収率は部位によって異なるが、男女ともに陰部(生殖器)への影響は格段に高いというデータも出ている。それを考えると頷けなくもない。不妊もその一因かも……。
講師の先生は自らの体調不良をきっかけに身の周りの多くの日用品に害があることを悟ったという。そこで経費毒という言葉を用いて、日用品に含まれている化学物質が、呼吸や皮膚吸収で体内に取り込まれることの恐ろしさを著書や講演で述べられていた。
講演では「経皮毒とは何か?」「化学物質はどのようにして体内に入ってくるのか?」という経皮毒に対する基礎知識から始まり、それらが私たちにどのような影響を及ぼすのかについて話が進められた。
聴衆は化粧品関係者ばかりだったので、もとより経皮毒に関しては多少の知識を持っていた。だが、詳細を耳にすることにより、初めて身の周りの有害物質の危険性に気づいた人が多くいたように思える。そして、化学物質が皮膚から浸透することの恐ろしさとそれらが脳や体に与える影響というものを改めて思い知らされたようだった。
講師は講演の最後で、「未来の子供たちと地球のために」というテーマで話を締め括った。経皮毒を考えることは、自分のためだけでなく、最も影響を受けやすい赤ちゃんを守るため、ひいては子どもたちの未来を救い、地球環境をも救うことになるのだと。まさしくその通りだと思う。
経皮毒に関しては、未だに医学的な根拠が乏しいと否定する意見もあるが、一概にそうとも言えないのではないか。講師もそれらの意見に対しては憂えていた。
しかし、少しでも関心を持ってもらうことを目的とし、化学物質に囲まれた生活の中でいかにそれらと上手く付き合っていけばいいのかを考えながら、自分たちに今何ができるのかを日々提唱し続けているという。
なんと素晴らしい活動だろうか。陰ながら応援したいと思う。
[編集後記]
オーガニックに関わる者は、化学物質が皮膚に及ぼす問題に対して様々な見識を広めていく必要がある。