ちょっとした工夫でサロンに人が来る・3 |  ライター稼業オフレコトーク

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アイドル記者を皮切りに、心霊関連、医療関連、サプリ関連、
コスメ関連、学校関連、アダルト関連、体験取材など様々な
分野の取材執筆をしてきました。
ここでは当時の面白かった話や貴重な情報、取材で思ったこと、
記事にできなかった裏話などを披露していきます。

 個人の店だとやることにどうしても限界がある。一人だけで考えてやっており、情報量の収集力も限られている。その点チェーン店は従業員の勉強会、時には講習会を行い、情報収集のネットワークも優れている。だからといってチェーン店と個人店に良い悪いの差があるわけではなく、それぞれに長所がある。ただ、両者を取材してみて分かったのは、情報共有できるのがチェーン店の大きな強みだということだった。

 そこで今回は、個人店も真似をすると良いだろうと思われる、チェーン店が行っている成功例を紹介したい。

 

〖チェーン店成功例〗

 

【商品の生産地や成分の良さを熟知させる】

 個人店のオーナーには、商品知識に対する勉強意欲に差があった。メーカーから送られてきた資料には必ず目を通すし、一通りの知識を植え付ける。しかし、個人の技量に自信がある人は、必要以上の知識を身につけようとする向上心が見られなかった。確かに完璧でなくても差し障りはないのだろうが、商品の生産地の状況や個々の成分の効能など、そのような細かい情報を頭に入れておいて損はない。

 

 対して、チェーン店の場合は従業員に徹底的に勉強をさせていた。商品知識の勉強会だけでなく、接待マナーの講習会、経皮毒についての講習会、自己啓発セミナーなど様々なことを行っている。チェーン店ならではの強みだと思ったが、唯一残念なのはせっかく学んだ知識も離職してしまうことで無駄になってしまうことだ。チェーン店は実に離職率が高い。

 

 

 

【インナービューティーの捉え方】

 個人店でもあることだが、オーナーの方針でスキンケア以上にインナービューティーに力を入れているところもある。

『身体の中から美しくしなければ肌は綺麗にならない』…これは基本中の基本だ。しかし、個人店では考え方がそれぞれだった。重視するところもあれば、生活習慣の方が大事だというところもあり、中にはサプリメントを嫌っているところもあったからだ。

 それに対して、チェーン店では共通した見解を示すので、店舗によって差が出ることはなかった。

 

  

 

 

車椅子でも利用できるように改築

 チェーン店は店内規模が個人店より大きくお客も多く訪れる。その中には多種多様な人がおり、エステサロンL店ではそのような人にも対応できるように店の一部を改築した。車椅子の人でも気軽に利用できるように、スロープを付けたり店内通路を広くするなどしたのである。

 

 女性である限り本当はスキンケアをしたいのに、車椅子であるがゆえに外出の機会が少ないからと諦めている人がいかに多いことか。行きたくても車椅子では利用ができない店がほとんど。そのような現状を嘆き、何とかしてあげたいという思いから下したオーナーの改築の決断だった。

 

 結果は言わずもがな。車椅子のお客には喜ばれ感謝もされている。今の世の中はバリアフリーの時代になってきているので、多種多様な人々に対応できるようになることも必要だ。

 

 

 

【商品の価値を伝えれば高い商品も売れる】

 化粧品メーカーA社の商品は相場より高い。稀少な成分を使ったこだわりのオーガニック商品であり、大企業のように大量生産できないためだ。そのためどんなに良い商品だと分かっていても多くのサロンが取引きの際に躊躇してしまう。お客が気軽にかつ頻繁に購入できる額ではないからだ。といってもべらぼうな値段ではなく、高級ブランド品のような価格ではない。学生など若い女性には高くても、主婦にとっては必要に応じた価格である。

 

 そもそも、高いから売れないということはない。本当に良い商品は値段に関係なく売れるもの。つまり、消費者に商品の価値が伝わっていれば相応の価格として受け入れてくれるのである。

 

 エステサロンM店がA社の商品の取り扱いを決めた時、ほとんどの従業員が高いので売れる自信がないと口にしていた。しかし、オーナーはこう言った。

「私たちは、ただ商品を“売る人”ではなく、商品の価値を教えてあげられる“アドバイザー”にならなければいけない」と。

 

 その商品がどのようにして誕生したのか、どのような過程を経て生産されているのかなど、大量生産ではありえない製造までのストーリーを伝えることで商品の価値は生まれるという。

 その上で、お客の気持ちになって考え、どのような接し方なら人の話を聞いてくれるのかを学び、そうして物の価値観をいかにお客に伝えるかを会得すれば商品は価格に問題なく売れるというのである。

 

「価値を伝えるのが私たちの仕事。5000円のローションを売っているわけではない。5000円のローションの“価値”を伝えるのが私たちの仕事なんです」

 このオーナーの考えの元、M店は飛躍的に支店の売上げを伸ばしている。

 

 自分が商品や施術を高いと思ったらだめだ。しっかり価値を伝えればお客は買うものなのである。

 

 

 

【待合テーブルに「魅せるポップ」を置く】

 雑誌を置いてある店舗は結構あるが、考え抜かれた手作りポップをテーブルに置いていたのはエステサロンN店だ。当たり障りのないどこにでもあるような地味なポップではなく、ちゃんと人の興味を引くような文面で書かれてあった。ポップならなんでも置けばいいというのではなく、どうすればお客に見てもらえるかという常にお客目線で考えられてあった。

 

 ポップの作り方で心掛けているのは、「読ませるよりも伝える」「見せるのではなく魅せる」ということ。深い説明文にはせず、パッと見ただけでイメージが伝わるものにしている。

 逆に、お客に「?」と思わせるような内容にして興味を引かせ、後でスタッフに聞いてこさせるように仕向けていることもある。

 

 また、商品の多様な使い方も教えているポップもあった。例えば、東日本大震災が起こった際に、商品のコットンが防災グッズに役立った等の裏話や変わった使い方を教えたりしていた。

 売れ行きの良くない商品のポップを作り関心を持たせるということも行っている。目新しい使い方や人気商品との組み合わせで発揮される効果を紹介することで、商品が動き出すこともあるそうだ。

 

 施術中、ポップの内容について話が弾み、そこから商品購入意欲を搔き立てることにつながることがあるという。「お客の待ち時間も無駄にしてはいけない」というのがオーナーの考えだ。

 チェーン店は若いスタッフが多いので、みんなでアイデアを出し合って作るという強みがある。そして、良い内容だと全店で共有するようにしている。

 

 

【母親が綺麗になると娘を連れてくる】

 エステサロンP店では、お客との会話に戦術を設けていた。例えば40代の主婦だと家族構成を聞きだし、年頃の娘がいる場合は、その娘もお客になるように仕向けている。つまり、母親を徹底的に綺麗にすることで、娘も来たくなるようにさせるのである。

 トークで誘うのはもちろんのこと、実際のところ母親が綺麗になれば娘も来たくなるものだ。そして、今度は娘が友達を連れてくるようになる。その友達が自分の母親を連れてくるようになる。

 このようにお客の輪をつなげていく戦略を立てているのである。そこまで上手くいくかはどうかは分からないが、綺麗になった母親が娘を連れてくるパターンはかなり高いそうだ。

 

 もう一つの戦術は、施術者とお客との会話を、他の客にわざと聞かせること。もちろんたわいもない会話ではなく、お客の誰もが興味を引きそうなエステや商品に関する内容を、聞かせるように話すのである。

 一見せこそうにも思えるが、こういうさりげない小技が商品購入につながるとオーナーは話している。

 

 

 

【繁盛店はオーナーやスタッフが見本になっている】

 これは基本中の基本といえる。今さら何を言うかという感じだが、エステサロンQ店ではこれを徹底している。従業員が5人いて、5人とも肌が綺麗だとお客への説得力は十分過ぎるほどだ。もし、一人でも不完全者がいれば、その子が綺麗になるまで徹底的に仕上げていく。あるいは、その子が綺麗になるまでの過程をお客に見せるということもしている。

 

 

【効果的な街頭宣伝戦略】

 サンプルやチラシの配布は、その配る姿勢が大事だと前々回のF店の例でも述べた。

 それをやらされているのは新人もしくはアルバイトだが、たいていがノルマをこなすためだけに淡々と行っている場合が多い。特にニコリともせず黙々と渡すのは最悪だ。

 

 エステサロンR店では、配る本人が楽しくやるように指導しているという。直接取材したわけではなく、また聞きなので具体的な内容は分からないが、とにかく『やらされてる感を無くす』というのを大事にしているとのことだった。

 確かにそれはそうだ。街のティッシュ配りなんかはやる気が全然感じられないから宣伝効果などあったものではない。ただ受け取るおばちゃんが喜ぶだけだ。下手をすると店のイメージ自体が悪くなってしまう。そうならないように、サンプルやチラシの配布は疎かにするべきではなく、十分な配慮も必要だ。

 

 サンプルを渡す場合は、相手を選別しているという。むやみやたらと配るのではなく、急ぎ足でない人に目をつけ、相手の肌質を観察し、身なりを見たりして、スキンケアに関心のある人かどうかを判断させているという。

 そして、渡す時には黙って渡すのではなく、使い方などを簡単に説明させている。ここが大事で、中には興味を持って説明を聞いてくれる人もおり、そのような人はサンプルを使用して気に入ると、後日R店を訪れてくれる可能性が高いという。

 常に計算高く、効果的な配布をすることで、サンプルやチラシ配りはやる意味がある。

 

 

 

【早すぎたメンズエステ】

 今やメンズエステは珍しくなくなった。これもある意味多種多様なお客への対応から生まれた産物だ。

 今から約10年以上前にもこのような動きがあり、某個人店ではすでに行っていたところもあった。しかし、女性客から「男性がいると嫌だ」との声があり途中で断念していた。

 

 同時期、エステサロンS店でも、客を増やすために男性を受け入れようという話があった。しかし、ベテランオーナーは首を縦に振らなかった。その理由をこっそり聞いてみたところ、「うちの店の女の子に可愛い子は誰もいない。男はなんだかんだ言っても可愛い子のいる店に行くから」とのことだった。

 10年前はそういう考えもあったかもしれないが、今の時代は自分の肌の美しさを真剣に考える男性が増えている。S店の着眼点は良かったのだが、時代が早すぎた…。また、資金力のあるチェーン店だったら、男性専用のサロンをオープンできていたかもしれない。

 

[編集後記]

 個人店舗同士が連絡を取り合ってグループを結成し、チェーン店並の情報共有をしているところもあった。良いことは独占せず、皆で協力して共有し合うということも生き残り戦略の一つだ。