よみがえる昭和歌謡 |  ライター稼業オフレコトーク

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アイドル記者を皮切りに、心霊関連、医療関連、サプリ関連、
コスメ関連、学校関連、アダルト関連、体験取材など様々な
分野の取材執筆をしてきました。
ここでは当時の面白かった話や貴重な情報、取材で思ったこと、
記事にできなかった裏話などを披露していきます。

 テレビ番組のBGM等で、7080年代の懐かしい楽曲がよく使われている。おそらく社会的に力のある地位についたクリエイターたちが、若い頃によく聴いていた曲をBGMとして選曲しているからだろう。

 

 そして、それらの曲を現代の若者たちも「どこかで聴いたことがある」と、興味を持って受け入れている。それは、親世代の影響によるものが大きい。

 母親がキッチンで、鼻歌交じりで料理をしていたのを子供の時に聴いていたパターン。家族でドライブする時に、父親がカーステレオで流していたのを聴いていたパターン。

 

 

 これらのように、家族間においていろいろなシチュエーションの中で、今の若者たちは、親から聴かされていた音楽を子供の頃に記憶していたのである。それが現代になってメディアから耳にすることで、どこかで聴いたことのある懐かしい音楽として、抵抗なく自然に受け入れているのだ。

 

 親世代は、CMやテレビ番組BGM等で流れている懐かしい音楽を聴いた子供達(現在の若者達)から「この曲知ってる?」と聞かれたり、あるいは子供達自身が生まれる前に流行っていた音楽を口ずさむ姿を見て、「なんでこの子がこの曲を知ってる?」と驚くことも珍しくない。

 

 かつての80年代アイドルが、現在は結婚し子育てを終え、バラエティ番組などで復活し始め、当時の曲を耳にすることが多くなったのも、昨今のブームの引き金になっている。

 

 

 昭和歌謡が流行っているのは、社会的地位にある親世代のマスコミ操作による影響だけではない。

 3年位前に、NHKで「昭和の歌に若者が夢中になっている」という特集をやっていた。20代だけでなく10代の若者までがカラオケで、7080年代の曲を歌っているのである。

 

 彼らが言うには、「昭和歌謡は歌いやすい」「歌詞が覚えやすい」「上手に気持ち良く歌える」とのこと。つまり、今のJPOPと言われるものは、歌いにくいものが多いらしいのだ。高度化し過ぎるってこと? 確かにそれもあるだろうが、一番の原因は歌詞にあると推測される。

 

 個人的に受け入れられないのは、やたらと英語が多いこと。日本語として歌詞のメッセージが伝わってこないのだ。横文字を使えばカッコイイからか? だから心に残らない。歌いたくても歌いにくい。

「CDの売上げが新記録」「ダウンロード販売数がトップ」というような言葉を耳にするが、すべての国民がその歌を知っているのかと言えばそうではない。なかには、ただアーティストを応援するために一部のファンが熱狂して買い漁っているという状況もある。

 

 記録は残るが、記憶には残らない…それが90年以降の音楽界に多く見られる傾向。調査会社のマクロミルによると「10代の認知度」では、小室ファミリーが約31%なのに対して、山口百恵は約61%もあったという。山口百恵は記録以上に、記憶と伝説を残したことになる。

 

 

 若者が昭和歌謡に惹かれるのは、歌詞に独創性があったからだ。だから目新しく感じるのだろう。先の番組に出ていた音楽ジャーナリストの柴那典氏は、「JPOPの歌詞は共感するものであり、歌謡曲の歌詞には憧れがある」と言っていた。確かにその通りだ。今にして思えばハチャメチャな歌詞も多かったが、それこそが憧れであった。そして面白くもあった。

 

「伊代はまだ16だから~」…だから何なんなの? 自分の名前を歌詞に入れるの?と思った。

「あなたに女の子の一番大切なモノをあげるわ」…そんな大胆な歌詞をよく口に出せるなぁ~と聴く方が恥ずかしかった

「なんてったってア~イドル。私はアイドル!」…自分で言うんだと驚いた。

 ピンクレディの歌詞なんて全然現実的ではない。でもウケたし、未だに歌詞を覚えてる。『UFO』にいたっては振り付けさえ覚えてる。

 

 中三トリオの中で、山口百恵だけが出遅れていた。しかし『ひと夏の体験』という大胆な歌のおかげで大スターへと登り詰めた。当時、桜田淳子は「あんな歌を歌わされて百恵ちゃん可哀想」と同情していたほどだった。まさかその歌のおかげで伝説のスターへの足掛かりになるとは夢にも思わなかっただろう。

 

 松田聖子中森明菜の歌も歌詞に憧れがあった。だから今でも語り継がれている。そういう7080年代の音楽を直に聴くことのできた世代は幸せであり、今の若者たちがその曲の良さを見い出し始めているというのも嬉しく感じる。カラオケにおける世代間格差なんてそのうちなくなるのではないか?

 

 深夜のアニメ番組ではたびたび昔の歌謡曲が使われる。サッカーアニメのエンディングで『太陽がくれた季節』が使われていた。漫画家が主人公のアニメでは『君は天然色』が使われていた。やはりノリが良くて歌いやすい。思わず翌日カラオケに行って歌ってしまったほどだ同行した20代の若造もその歌を知っていてデュエットしたものだ。

 頑張れ昭和歌謡! もっと行け行け昭和歌謡! 次の世代が社会的地位に立ってグレイやアムロの曲を使い始める時まで、その次の世代である今の若者がYOASOBIや髭男の曲を使い始める時まで、7080年代の曲を聴いて育ってきた者たちをノスタルジックな気分に浸らせてくれ!

 

[編集後記]

 は一部の軍歌が歌える。子供の頃、父が風呂の中でいつも歌っていたのを聴かされていたからだ。つまり無意識に学習し記憶していたのだ。ところが、それを接待のカラオケで歌うと年配者からウケが良く、親近感を持たれたりする。その親交から仕事につながったこともある。当時は古臭い歌を湯船で聴かされうんざりしていたものだが、今にして思えば父親に感謝だ。