「触れてはいけない真実」というのは本当に多くある。いわゆるタブーと言われているものだ。当然のことながら出版界にも大なり小なりの多くのタブーが実在する。
例えば、誰もが知っている例として「皇族」が挙げられる。ちょっとでも批判もしくは揶揄した内容を掲載しようものなら、ありとあらゆる方面から攻撃されて雑誌は廃刊に追い込まれる。それだけならまだいいほうで、小さい出版社ならつぶされかねない。
だから、みんな神経質になる。それゆえこんな話もあった。
昭和63年11月、女優(兼アイドル)の小川範子が「ガラスの目隠し」という新曲を出した時のことだ。たまたま歌詞の中に「♪死んでるみたいよ~♪」というのがあったのだが、当時の昭和天皇は昏睡状態に入っていた。そのため、歌詞が縁起の悪さを連想させるということで、各方面で自粛が始まったというのだ。圧力がかかる前に…。
あくまでも噂の段階なので、本当にどこまで影響を受けたのかは定かでないが…。ただ、火のないところに煙は立たないのでね。
もうひとつ有名なのが「宗教団体」への批判だ。オウムを取り上げたところは乗り込まれての抗議を受けたし、TBSなどは屈服してしまったほどだ。
そして、創価学会と週刊新潮が誌面を通じて激しくやりあったことも。新潮は大きい出版社だから対抗できるが、中小の出版社には絶対耐えられない。
また意外と思われるかもしれないが、オタクも恐れられている。これは実際身近であった話なのだが、働き盛りの課長が一人のオタク少女によって会社をクビになったことがある。
その課長は進学情報誌を発行している会社に勤めていて、そこで資料請求をしてくれた高校生に渡すための8ページの小冊子を毎月編集していた。その記事の中で「コミケに参加する女の子達のパワーはすごい。どれだけ徹夜が続いても平気で漫画を書き続ける。そのパワーを勉強に注げばいいのに」という内容のものを書いたのだ。
すると、一通の抗議の手紙が!それには「頭のいい子だっているんですからね。○○さん(同人誌界では有名らしい)は東大に行ってるんですよ。漫画を描いてる子がみんなバカみたいな言い方をしないで下さい」と書かれてあった。
別に課長はバカにしているつもりは毛頭ないのだが、勝手にそう受け取られてしまったのだ。そして、詳しい事情を知らない上司の部長は、抗議してきた少女の学校がお得意様だったこともあり、菓子折りを持って謝罪に行ったのである。さらに課長を激しく叱責し、その結果追い詰められた課長は…。
それ以来、オタクには触れてはいけないという暗黙の約束がなされているそうである。
それから気をつけないといけないのが時事ネタ。
かつて雲仙普賢岳が噴火して、火砕流で多数の死者が出た時だった。ある編集者がパロディ記事で「今登ってみたい山は普賢岳」と書いたところ、「遺族の感情を逆なでしている。シャレではすまされない」と抗議されたのである。確かにそうだろう…いくらパロディとはいえ…。
また、ある漫画家がホラー漫画を描いた時、ラストで赤ちゃんが母親を殺すというクライマックスシーンがあった。そこが一番面白くもあり、恐ろしくもあり、その漫画の売りだった。
しかし、当時は母親の赤ちゃん殺しが社会問題になっていたこともあって内容変更を余儀なくされたのである。そのため詰めの甘いラストシーンになってしまった。
これらの実例は氷山の一角。「触れてはいけない真実」というのは、まだまだ多く実在する。
[編集後記]
オタク少女のひと言で会社をクビになった元課長は、今でもコミケやオタクを恨んでいる。そのため、以前コミケ会場のビッグサイトに爆弾が仕掛けられたという事件があった時、犯人は元課長ではないかと疑われたものだ。
しかし運命とは皮肉なもので、それから10年後、今は自分の娘がカートを引きながらコミケ会場に足を運んでいるという。元課長は「これは祟りか…。いったいいつまでオタクは俺を苦しめれば気がすむんだ」と嘆いていた。
笑えない怖さがそこにあった…。