ヤバい編集者 |  ライター稼業オフレコトーク

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アイドル記者を皮切りに、心霊関連、医療関連、サプリ関連、
コスメ関連、学校関連、アダルト関連、体験取材など様々な
分野の取材執筆をしてきました。
ここでは当時の面白かった話や貴重な情報、取材で思ったこと、
記事にできなかった裏話などを披露していきます。

 まだ新人だった頃、先輩の編集者X氏に連れられてアグネス・チャンのインタビューに出向いた。その頃のアグネスはすっかりベテランで、マスコミの露出も少なくなっていた。

 取材が2時ということで、我々は直前に昼食をとったのだが、X氏はこともあろうにビールを注文して飲み始めたのである。

「先輩、取材前にマズイんじゃないですか?」

「大丈夫、大丈夫、俺は酒に強いから。それにアグネスはもう売れっ子アイドルじゃないから見逃してくれるよ」

 そういう問題ではなくてマナーの問題なのだが、このX氏には何を言っても無駄だった。

 

 ちょっと話が逸れるが、X氏は坂上忍が売り出し中だった頃、本人ととても仲が良かった。それで調子に乗り過ぎて、忍ファンの女の子に手を出してしまったのだ。さらに、そのことを坂上忍本人にわざわざ自慢したものだから、当然のことながら忍は怒った怒った。なのにX氏は分かっちゃいない。しかも、開き直ってこう言った。

「ったく忍ったら怒りんぼなんだから。あんなことぐらいで…。忍のバ~カ」と。

 バカはあんたでしょ…。

 

 こんな人だったわけ。で、いざ取材先に向かいアグネスを見たとたん、X氏は私に耳打ちしてきた。

「意外にオッパイでけぇな~」

 完全に酔ってる! 

 大丈夫かなと思いながら取材は開始された。新人の私は黙って二人のやり取りを見ているだけだった。しかし、10分くらいは順調だったのだが、X氏は突然しゃべらなくなったのである。見ると、目がとろんとし始めていた。酔いが回って寝かかっている! 焦った私は、急いで代わりのインタビュアーを務めた。

 

 

 なんとか最後までやり遂げることはできたのだが、明らかにアグネスとマネージャーは不快な表情を浮かべていた。しかし、怒って途中で取材の中断をしなかったアグネスの度量の大きさにはさすがと思った。…が、こんな気まずい取材は初めてだった。

 アグネス達が帰ってからX氏はやっと意識を取り戻した(正気に戻った)。

「あれ、アグネスは? もう帰ったの? 黙って帰るなんて失礼な奴だな」

 おまえだろ、それは!

 * * * *

 

 私は今でもX氏が嫌いだ。一番頭にきたのは電話で失礼なことをされた時。当時彼は4畳半一間の共同トイレのボロアパートに住んでいた。

 固定電話で話をしていたのだが、突然話をしている最中に受話器の向こうから、ジョンジョロリン、ジョンジョロリンという音が聞こえてきたのだ。アルミに水が落ちるような音だ。何をしているんだろうと思い聞いてみた。

「何やってるんですか? 水道が漏れてるみたいですよ」

「おしっこ行きたくなってさ。でも、部屋にトイレないじゃん。話を途切らせるのがいやだから、流し台でやっちゃった」

 

  

 

 絶句した…。いい大人なのに…。さらに彼は言葉を続けた。

「今日が初めてじゃないよ。いつもやってることだよ」

 私は以前、彼の部屋に泊まりに行って、その流し台で料理を作ってやったり、水を溜めて顔を洗ったこともある。

 電話を叩きつけて、それ以来会っていない。

 

[編集後記]

 4畳半一間の共同トイレのボロアパート…80年代の若手フリーライターやフリー編集者はこういう所に住んでいた。今じゃ考えられない…。