ひょんなことから『予告犯』という映画のDVDを観た。2015年に劇場公開されたことは知っていたが、大して興味がなかったので観る気はしなかった。今回はたまたま時間つぶしの時間に観る機会があったのだ。
超簡単にストーリーを教えると、主演の生田斗真と3人の友人(鈴木亮平・荒川良々・濱田岳)が、クズ人間を懲らしめる“テロリスト”となり、ネットで犯行を予告してから行動するのだが、実はこの行為にはもっと奥深い意味があった。…という内容なのだが、これがなかなかよくできたストーリーだった。
しかもラストシーンでは涙を流してしまった。全く期待していなかったのに、こんなに面白い内容だったとは! 見終わった後で、すぐにネットで検索してみた。きっといい評論がされていると思ったからだ。
ところが、思ったほど絶賛されていない。むしろ今イチ評価が目についた。
ある一般人のコメントでは、「原作である漫画の方が良かった」とあったが、これは原作が漫画である場合、実写になるとよく言われることだから仕方がない。また、「原作での一番いい内容が省かれていた」「テロリスト役に荒川良々と濱田岳は似合わない」というのもあった。
ある映画評論家のコメントも監督の手腕に対して少し辛口な論調だった。
原作である漫画はそんなに良かったのか? すぐさま本屋に行き単行本を買って読んでみた。しかし、私としては映画の方が面白かったと思う。
しかも、ラストで泣いてしまったシーンは、漫画原作にはない監督のオリジナルだったことが分かった。逆にこれがなければ、「ああ、面白かった」で終わってしまったはずだ。評論家の言うことなんて鵜呑みにできない。
キャスティングミスを言う者もいたが、ひょうひょうとした顔の荒川良々が、泣きながら生田斗真に罪をかぶせるシーンなどは、彼にしかできない名演技だった。他人の評論はあてにならない。
現代社会に絶望しながら生きるだけだった若者の姿が、監督の最後の演出で男の友情を美しく描き出していた。…と私は思った。しかし、これも批評の一つ。人によっては泣けるほどのモノじゃないという意見もあるだろう。
そこで、実験をしてみた。二十代半ばの若造君に、私の感想はひとことも言わず、この映画のDVDを観てもらったのだ。すると、ラストシーンでうるうるしていた。やはり泣けるのだ。特に感受性の強い人は泣く。もっともっと評価されていい映画だと思う。
出演者の生田斗真は、ただのイケメン俳優としか思っていなかったが、なかなかのハマリ役だったので好感が持てるようになった。当時売り出し中の鈴木亮平も良かった。荒川良々は独特な顔が生理的に苦手だったが、この演技で見る目が変わった。濱田岳は軟弱な存在感が好きではなかったが、適役だったので好感が持てるようになった。タレントのイメージはちょっとしたきっかけで変わるもんなんだな。