メジャーとマイナーの扱い |  ライター稼業オフレコトーク

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アイドル記者を皮切りに、心霊関連、医療関連、サプリ関連、
コスメ関連、学校関連、アダルト関連、体験取材など様々な
分野の取材執筆をしてきました。
ここでは当時の面白かった話や貴重な情報、取材で思ったこと、
記事にできなかった裏話などを披露していきます。

 若かりし頃、勤務していた学研の芸能雑誌を請け負う編集プロダクションが潰れ、何気に朝日新聞の求人広告を見ていたら「芸能雑誌立ち上げの為の社員募集」というのが載っていた。聞いたことのない出版社だったが、朝日に載るくらいだから丈夫だろうと思い、とりあえず面接に行った。

 ……ビニ本屋だった。(←注:当時の呼び方)

 帰ろうとしたら社長に袖を引っ張られ引き留められた。下品なものばかりでなく英知出版の『Beppin』みたいな上品なエロ系雑誌を作りたいのだという。それだったらいいかなと、失業中で金もなかったので仕方なく入社した。

 そこで、早速企画を練りあげ、お色気ページ用のモデルを探すためにヌード専門のモデル事務所に電話をしたのだが……。みんな断られてしまった。 

 ただ脱ぐだけの質の落ちるモデルしかいない事務所はOKなのだが、顔も体も質の高いモデルがいる事務所は絶対NOなのだ。こちらがどんなに「いい本を目指してるんです。これで女の子を綺麗に載せればいい宣伝になれますよ」と企画を説明しても、最初から出版社の格で見下しているのだ。高飛車な喋り方で、“おまえみたいな二流エロ本会社がうちにアポを取るなんて生意気だ。身分が違う”という感じなのである。

 私個人としては過去に一流雑誌でやってきたプライドがあるから、妥協なんかしたくない。しかし、そのうち進行が滞ってしまった。その状況を見て社長は「新雑誌は諦めよう。君もビニ本の部署に移ってくれ」と言ってくる始末。それでも俺がかたくなに拒否すると「縛りがあろうが、ブスであろうが、どんな裸も芸能なんだよ」と屁理屈を言ってきた。

 辞めた。

 

 それから1週間と経たないうちに関わった出版社は芸能雑誌の大手ワニブックスだった。ここには新人タレントや売れないモデルなど外部からいろいろと売り込みがくる。もちろん男性雑誌だからお色気ページは必需品。例えヌードでも有名にしたい女の子を抱える事務所は必死になって売り込んでくる。

 そんな時だった。ビニ本屋に在籍していた時に、私の依頼を鼻であしらったモデル事務所のマネージャーから電話があった。しかも、売り込みたいという素材の中には、以前私が使いたいとお願いした女のコも含まれていた。マネージャーは私のことなどすっかり忘れ(そりゃそうでしょ。2週間でビニ本屋から一流誌に転職する奴は滅多にいないし)、恐ろしいほど腰を低くして喋ってくる。

 ドタマにきたね。こんなにも態度が違うのかと。仕方がないのは分かる。結局、世の中に平等なんてないのだ。悲しいけど……それが現実。

 で、そのモデル事務所の扱いはどうしたかって? 自分がされたことを平等にしてあげました。

 

             *  *  *

 

 リイド社の少女向け恐怖雑誌でタレントの恐怖体験インタビューをしていた。同時に角川書店の男性向け雑誌でアイドルのインタビューもやっていた。角川の方が大物タレントの取材も多くアポも楽だったが、リイド社の方は結構苦戦した。しかしそれは、雑誌の特性と部数に差があったから仕方ない。メジャーとマイナーの差も少しはあったかもしれないが……。

 そこで俺は、角川の側でインタビューをする時、必ずアイドルに霊体験があるかどうかを何気に聞いていた。恐怖体験があれば、リイド社の編集者に「このアイドルは恐怖ネタがありますよ」と報告し、自分に仕事を回してもらうためだ。

 そんなある日、売り出し中の西田ひかるに話を聞いている時、海外でとても怖い霊体験をしたという話を聞きだすことができた。早速そのことをリイド社の編集者に報告し、アポを取るように依頼した。

 数日後、編集者から連絡があったが、「マネージャーが、西田ひかるは恐怖体験なんか絶対してないので取材しても無駄です、と言われました」とのことだった。ていよく断られたのだ。

 当時バリバリのアイドルだった高橋由美子も霊体験があるという情報を得たので、同じ編集者にアポを取ってもらった。しかし、「彼女は霊の話をするといっぱい寄って来てしまうというので断られました」とのこと。ほんとかな? それともまた……。

 どっちにしてもメジャーは仕事が楽だ。