田んぼののり面を制覇した「クズ」は、いよいよわが家からほど近い国道の制覇へと触手を伸ばしてきた。ガードレールは自動車の突入は阻止できても、クズの侵入は「想定外のこと」として阻止できなかった。
また、道路際に立っていた道路標識さえもも占拠されてしまった。人間どもの車優先社会に対する植物界からの反攻メッセージだったのだろうか。
それ以上に、雑草だらけだった法面を地元が花で植栽しようとしたものの、いつのまにかクズ王国の管轄に代わってしまった。生命力の強いはずの「レンギョウ」もクズ王国の「特別軍事作戦」の侵攻には手も足も出せない状況だった。レンギョウの姿は景観から見事に抹消されてしまった。これでは3月に開花するはずの黄色の絢爛な花を見ることができない。レンギョウを上から遮蔽してしまったクズのツルをあわてて伐ることから始める。
しかし、国道に侵出したツルはなんとか鎌で退治はできたが、本体のレンギョウへの絡まりは複雑で半端ではなかった。地雷を除去するようにじっくりやらないと本体まで伐ってしまう恐れもあった。道具も鎌と草刈鋏みしか持ってこなかったので時間もかかる。むしろ、トリマーでやった方が早かったかもしれない。
急峻な法面なので足場の確保が意外に難しい。田んぼ側に回るには脚立がないと上の方まで鋏が届かない。しかも、法面から下に落ちてしまう危険性さえある。
ひとりでは限界がある。以前は集落に呼び掛けてみんなに協力してもらっていたが、最近は自分も含めて後期高齢者が多くなったので戦力が激減。だもんで、一人でやれる範囲でやるしかない。今回は道路側からツルを除去して、レンギョウを日光に当てるのを目標にし、まずは終了とする。
本当は、都会からのボランティアを受け入れたいところだが、その時間的・事務的対応ができないのが実情だ。田んぼ側のクズの除去はやれる時にやるというスタンスでやるつもり。限界集落でやれることはマイペースを守らないとつぶれるだけだ。
それでなくても、地域より自分ちだけでもやることが多くてみんなゼイゼイしているからね。十年前なら一緒にやれる人がちょっとはいたけれど、自分を含め病気や病院通いにも追われているというのが現実となってしまった。こうして、日本の自然も地方も中山間地も疲弊していくのだ。
「強い経済」を謳う総理の誕生があるものの、実際は、格差のますますの拡大と人口減の進行と希望の喪失に拍車がかかる。さて、ここからどうするか。雑草園と化したわが庭にため息をつきながら熱いコーヒーを飲む。





