お店やってるとよく聞かれるようなことを書いておきます。

日本酒通(笑)の方たちには釈迦に説法ですが初心者の方にも知ってもらいたいからね。

別にシリーズ化するつもりもありませんが、HPを更新するついでにこちらにも書いておけば誰かの役に立つかも知れませんし、ね。


あ、こんなこと知らなくても日本酒を楽しむことはできますからねー。

ただ、知っておくと日本酒の世界が広がることもたぶん事実。

せっかくなら「正しい知識」を前提にラベルを眺めるともっと楽しくなるかもよー。



【BY】ってなーんだ。


びーわい、と発音することが多いです。

醸造年度(brewery yearまたはBrewing year)を略してBYと呼んでいます。

いつ醸造されたお酒なのか、を明確にするために「24BY」とか「17BY」とか使います。


日本酒の新年は1/1ではなく、7/1に始まり6/30に終わります。

なので現在は24年7/1に始まった「24BY」のお酒が生産されている真っ最中です。平成25年ですが6/30までは平成24年度なのです。


とりあえず今は24BYとあれば「ああ、新酒なんだな」23BYとあれば「ああ、約一年寝かせたお酒なんだな」なんて思えばOKです。


ですのでわかりづらいですが、

23BYは平成23年7/1から平成24年6/30に生産されたお酒、

17BYは平成17年7/1から平成18年6/30に生産されたお酒、となります。

大雑把に言えば「その表記年の秋冬から造られたお酒」と覚えるのがいいかな。



【生酒・生貯蔵酒・生詰め酒・火入れ酒】ってなーんだ。


お酒は搾られた後に63度くらいに加熱殺菌して品質の安定を図るのが古来からの手法でした。

加熱殺菌の回数は搾ってからすぐ(貯蔵前)に一回、熟成させて出荷前に一回、という二回火入れが基本。それを回数に関わらず「火入れ酒」と呼んでいます。


火入れすると安定やバランス、柔らかさと引き換えにフレッシュさや旨味の強さはどうしても失われる傾向にあります。そこで「火入れを一回だけ」するお酒が生まれてきました。生貯蔵酒や生詰め酒です。


搾った後に火入れせず生酒のまま貯蔵し旨味を育てて、出荷前に火入れするのが「生貯蔵酒」

搾った後に火入れして貯蔵して、出荷前に火入れをせずそのまま詰めて出すのが「生詰め酒」

そして搾った後も出荷前も一切火入れをせずに出すのが「生酒」


いずれも冷蔵技術の進歩や管理に厳しい酒販店の増加があってこそのバリエーションです。



【原酒】ってなーんだ。


お酒は搾られた直後には16度~20度という高いアルコール度数を持っています。

アルコールのきつさを和らげたり、バランスを整えたり、価格を抑えたり・・・各蔵元の意図するさまざまな理由で水を加えてアルコール度数を落としたお酒が古来からの主流でした。

その「加水」をせずに、もともとのアルコール度数のまま出荷しているものを「原酒」と呼びます。

加水したものに比べ1.1~1.3倍程度の価格になりますが「味の濃さ」が魅力のお酒になります。



【無濾過】ってなーんだ。


昔、「酒は透明じゃなければいい酒ではない」というくだらない法律がありました。

そのため蔵元は炭を使って色を抜いて一級や特級のお酒を造っていました。それを「炭濾過」といいます。


ところが色や雑味が取れるのはいいのですが、一緒に味や香りといった大切な成分も抜けてしまいます。そこに気付いた良心的な蔵元は炭を使わない、使っても最低限しか使わない方法に切り替えたりしています。


しかしお酒の性格やバランス、熟成などを考えた時に「ここはキレイにしときたい」という時のためにフィルター(紙)濾過が現代では進歩していて「酒の旨味はそのままに取りたい成分だけ濾過する」ことが可能になっています。


そういった全ての「濾過」を一切行わないものを「無濾過」と呼びます。

全てがそう、とは言いませんが光にかざすと生まれたままの黄金色をしていることが多いはずです。

味が濃くわかりやすいため、なんでも無濾過を珍重するファンも多いですが、酒としての完成度を考えてあえて無濾過を出さない蔵元もあります。



ちなみに今回取り上げた項目のすべては「法律で決められた記載しなくてはならない項目」ではありません。要するに書いても書かなくても蔵元の自由。なので、その点はご注意ください。



・・・・・とりあえずここまで覚えるとですね。



地酒屋こだま TAKE’s ROOM


首のところに貼ってある「酒造年度 平成24年」で「平成24年7/1から25年6/30(はまだ先だけどw)の間に造られた」ことがわかりますね。

メインのラベルには「生原酒」とありますので「一回も火入れしていない=生」「加水してアルコール度数を落としていない=原酒」ということがわかりますね。

ちなみにここの蔵元さん、濾過も一切しないので実は「無濾過」なんですがここには書いておりません。



地酒屋こだま TAKE’s ROOM


首のところに「無濾過 初しぼり」とありますので「濾過はしていない」ということがわかりますね。ちなみにこのお酒、3月の終わりくらいには品質保持のため全て濾過を掛けるので、以降のお酒は表示が変わります。
そしてメインのラベルには「生 純米 原酒」とありますので「一回も火入れしていない=生」「純米」「加水してアルコール度数を落としていない=原酒」ということがわかりますね。



こんな風に読み解いていくとラベルを眺めながらのお酒もいっそう美味しくなるもの。

変に頭でっかちのウンチク野郎にはなって欲しくありませんが(笑)是非とも楽しんでいただきたく思います。