早いもので、今日で今年も終わりですね。
今年もこのブログを通じてたくさんの出逢いをいただきました。
来年はいったいどんな一年になるのでしょうか。
ニュースを見れば暗い話題ばかりが先行する現代の社会。
マスコミは「ダメな現代」を煽りすぎの感があり反省して欲しいものですが
まぁそれにしてもあまりいい時代ではないのは現実のようです。
とりあえず確かなことは、来年も僕たちはお酒を呑んでいるということ。
そしてそのお酒が人と人との縁を呼び、きっと繋いでいくだろう。
そして僕たちはその酒縁を通じて何かを見つけ前へ進んでいくだろう。
今年も一年、ありがとうございました。心より感謝申し上げます。
来年も僕自身にとって素晴らしい一年になるよう努力致しますと共に
僕に関わって下さるみなさんにとって幸多き一年になりますようお祈り申し上げます。
さて、そんなわけで
去る28日は今年最後となる蔵元訪問に出かけてまいりました。
時期が時期(造りの真っ最中)ですからちょっとお手伝いも兼ねての訪問です。
1時間に2本のバスを降りて歩いていくと・・・見えてきました・・・!
今日、訪ねた蔵元さんは 久保田酒造株式会社
8月にご縁をいただき訪問 してからお付き合いいただいている蔵元さんです。
有名な新潟の久保田さん(百寿とか万寿とかの蔵元さん)とは関係なく、
神奈川県相模原市の山と水に囲まれた清涼な地に立つ小さな酒蔵です。
若き職人晃杜氏と、熱き蔵人徹さん兄弟を中心に今年は3人、
そして臨時のお手伝いの方で手造りの酒を醸している蔵元さんです。
蔵の中では既に造りの作業が進行中。
ご挨拶もそこそこに、着替えて蔵の中に急ぎます。
今日は酒母造りから作業がスタートしていました。
米を洗う→和釜と甑で蒸し上げる→冷ます→麹と水と一緒に小さなタンクに仕込む
簡単に書くとそんな一連の作業でお酒の元になる「酒母(酛=もと、ともいう)」を造ります。
但し残念ながら諸事情により到着したのが8時半だったため作業はほぼ終了(苦笑)
和釜に残った熱湯の湯気だけが僕を迎えてくれたのでありました。
はい、ではお約束の蔵人たけの写真(笑)
ちゃんと蔵人の顔になっているでしょうか?(ちょっと眠そう・・・笑)
ここで一般の方にはあまり見慣れないであろう写真をお見せします。
お米を蒸す「甑(こしき)」の中の写真です。
これ、なんだかわかりますか?(お米ではないですよ)
ひとつひとつ、外していくとこんな感じです。
これは「擬似米(ぎじまい)」と呼ばれるもので
プラスチックで作られた米のダミーです。(ゆえにダミー米とも呼ばれます)
下からの蒸気に直接当たる部分にこれを入れて米をその上から入れることで
蒸し上がった米がべたついたりすることを防ぐ役割を持つ優れものです。
最近使う蔵元さんも増えてきましたが、
造りには人一倍気を遣うここ相模灘でもやはり使っていました。
実際に触ってみるとたしかに精米したお米に近い感覚があります。
さて、今日の僕のお仕事は製品の箱詰め整理とラベル貼りです。
地味な作業ではありますがこれも蔵の中では大切な仕事のひとつ。
ああ、これが呑み手に直接渡るんだ・・・と思うとけっこう緊張するものです。
300mlの生酒を24本ずつ箱に詰めてはそれを倉庫に運びます。
おおよそ50箱くらい運んだことになるでしょうか・・・なかなか大変な作業です。
普段はこれも晃さん徹さん兄弟を含めた蔵人さんがやっているのです。
ラベル貼りも一枚一枚、彼らがやっています。
正直言いますが、ずっと同じ姿勢での作業はめちゃめちゃ大変でした。
しかしラベルに託して呑み手に伝えられるという充実感はありましたが・・・・・
どちらにしても作業中、腰にきました(笑)
そして翌日は朝から上腕~背中が筋肉痛だっとことも告白しておきます。
やはり蔵仕事は肉体労働です。
でもやはり、作業をしていて思ったことがあります。
なんというか、僕はこの「蔵の空気」が大好きなんだなって。
蔵で作業をしているとあちこちでいろいろな音が聴こえてきます。
シン・・・・・という静寂の音。
タンクを洗う、まるで銭湯にいるような残響の音。
売店にお越しになるお客さんの遠くに聴こえる笑顔の音。
蔵の中に立ってそれを感じているだけで身が引き締まるのは何故でしょうか。
思えば昨年4月に、ある試飲会でこの相模灘と初めて出逢いました。
若い蔵人の笑顔とその秀逸な酒質に惚れて帰宅後にHPを拝見して
少人数で頑張る奮闘記に感動してメールを出したのが僕にとって相模灘の原点。
あの時感動し頭で描いた蔵の中に今、僕は立っているんだと思ったら身震いがしました。
やはり縁が僕を導いてくれているように思います。
その合間をぬって蔵の風景をいくつか・・・・・
蔵では一日中、何かを洗っています。
こういった布類も大量に使うため洗っては干しの繰り返し。
久保田酒造では清冽な井戸水をふんだんに使って洗いまくります。
倉庫の向こうにあるうっそうとした森がこの蔵を護っているように思えてなりません。
でも蔵人さん曰く「冬は日当たりが悪くて困るんだよねぇ」(笑)
そうそう、酒母造りの様子も見せていただきました。
入念に指先から腕まで洗う晃杜氏。
日本酒造りは雑菌との戦いでもありますので一日中手洗いと消毒の繰り返しです。
これが酒母室の風景。
今はこの53番タンクで酒母を育てているところです。
今朝仕込んだばかりの酒母の様子。
少しずつ米が溶けてどろどろになっていくのがわかります。
この酒母を一日数回、かき混ぜて均一にしてやらねばなりません。
その作業を「櫂入れ(かいいれ)」と言い、通常は櫂入れ棒でかき混ぜます。
米粒を潰さないように優しく、かつしっかりとかき混ぜるのは見た目以上に難しい技なのです。
・・・・・と、晃杜氏、
なにやら腕を捲くったままタンクに近づくとそのまま・・・・・
(ちなみに後ろに立てかけてあるのが櫂入れ棒)
これ、手櫂(てがい)といって南部流の杜氏さんの一部に残る技術なんです。
米の粒が残っている2~3回目まで、優しく潰さずに櫂入れできるとのことでした。
話には聞いていましたが実際に見たのは初めてです・・・感動です。
貴重な体験をさせていただきました・・・晃杜氏、ありがとうございました。
さて、休憩の合間に晃杜氏がこんなお楽しみをしてくださいました。
ある酒販店さんがお奨めして下さった新酒が届いたということで
その7本を全員で試飲してみることになりました。
好み的な上位と下位2本程度はほぼ全員一致していましたが
その他についても有意義な意見交換ができて楽しかったです。
やはり造りをしている方の舌は僕とは視点が違うというか、
これだけでもとても勉強になりました。
その後、造りについての質問などさせていただきましたが
お二人とも本当に「勉強熱心」で「手間暇惜しまない」のが凄い。
今期の相模灘はまた一段とグレードアップする予感ビシバシです。
夕方、後ろ髪を引かれる思いで蔵を辞しました。
来年も再訪してまた造りを見せていただくつもりです。
晃さん、徹さん、お手伝いのKさん、
お忙しい中本当にありがとうございました。
さて、帰宅後にあらためて今年の相模灘を呑んでみました。
相模灘 本醸造しぼりたて
精米歩合:65%
価格:1,250円(720ml)
まだ少し炭酸ガスが残ってぴりりと舌を刺激するくらいフレッシュ。
広がる米の香り、ガツン系の生酒らしい甘いコク、しっかりキレる後口と
非常にバランスの整った文句なしに美味い生酒です。
昨夜、友人が来たので開けたらあっという間に空になってしまいました(笑)
そんなわけで、みなさん、よいお年を・・・・・
正月明け2日から4日は長野県信濃大町に滞在して蔵元さんを2軒、取材予定です。
来年も 楽しく!熱く!攻めの姿勢でイキたいと思います。よろしくお願いします。