トートツではありますが、僕は東京の生まれです。
父は秋田県、母は大阪府の生まれなのでちょうど真ん中辺?(笑)
生粋の江戸っ子ではありませんがそれなりに愛情もあります。
東京にも「地酒」を醸す蔵がいくつかあります。
東京都酒造組合のHP を見るとその数12、
しかし休蔵中その他の蔵が3つあるので実質は9蔵となります。
先日訪ねた赤羽の小山酒造さんに続き、
今回は東村山の豊島屋酒造さんを訪ねてきました。
これも発端は6月に行われた「一般公開・呑み切り」での出逢い。
この時のご縁も後押しになり、実現した訪問だったのでした。
主要銘柄は「金婚」
最近は別ブランドで屋守(おくのかみ)や十右衛門なども手がけます。
西武新宿線の東村山駅から北へ歩くこと約20分、
府中街道から少し東に入った大きな大きな欅の下に蔵が立っていました。
秋は落ち葉の掃除が半端じゃなく大変だそうです(笑)
しかし最近、大欅佇む処に良水あり、という気がします。
玄関から蔵を臨みます、いい「蔵構え」をしています。
手前、右手が事務所になっています。
この下には約150mの深さまで井戸が掘られ、
豊島屋の酒を醸すための水が汲み上げられています。
実際に水を飲ませていただきましたが軟水というよりは少し硬い感じ。
造りの性格に合わせて濾過した上で使っているとのことでした。
この井戸の脇にはこんな風景が。
人は心 糧は風土 未来は心と風土が醸しだす
これは酒米ではなく飯米とのことだが「田園部」なる部署が手がける(笑)
訪ねる異邦人の心をふっと和ませる効果に蔵人が気付くかどうか。
今回の案内は田中部長と石井杜氏というこれ以上ない豪華キャスト(笑)
同行した酒友の繋がりがこの幸運をくれたことをここに書いときます。
ありがとね、なほさん。そしていちべーさん。
ここでちょっとだけ歴史に触れておきます。
調査が厳密でないので「絶対」ではないのですがこの豊島屋酒造さん、
江戸時代まで酒造りを遡れることのできる東京唯一の蔵元さんなのです。
いや、正確な記述は震災での消失でなにひとつ残っていないのです。
ただ「白酒」を造る風景をかの有名な江戸名所図会が残しておりまして
これが創始者・豊島屋十右衛門であることが確認できているだけなのです。
なので現段階での結論としては「江戸の酒は豊島屋」となります。
現代に残る江戸の酒は東村山にあり、なかなか面白い現象でもあります。
では、蔵の中を拝見しましょうか。
事務所を過ぎてさらに奥へ進むと蔵が見えてきます。
これは釜場・・・なんですが和釜と甑は既に廃用していました。
今はこの中に蛇管を通して火入れに使用しているとのこと。
その右手に鎮座するのがこの連続蒸米機、これで全量蒸しています。
甑に比べてどうなのか気になるところですが要は使い方かな、と。
この辺は今度お会いした時に突っ込んで聞いてみたいところです。
これが酛場(もとば)、酒母を仕込む部屋ですが今は物置状態(笑)
この直後から清掃が始まり今頃は酒母を造っている頃だと思います。
自動製麹機を備えた麹室。(右手はそれを制御・調整する機械)
ちょうど今期最初の麹が育っている途中でした。
(これは豊島屋のお酒用ではなく他社からの依頼分のようです)
初期段階とはいえ久しぶりの麹香にちょっと嬉しくなっちゃいます。
これが仕込みタンク、全部で21ほど。
開放タンクは使わず、すべて泡なし酵母を使うとのこと。
ところでこの仕込み蔵、
これだけ広いのに柱がまったくないのにお気づきですか?
これが仕込み蔵の天井です。物凄く高さがあります。
他蔵と違ってめちゃめちゃ太い木を使うでもなく
しかし綿密に木を組んであるという印象を受けました。
うん、これならいい菌もいっぱい住んでいそうです(笑)
搾りには標準的なヤブタを使っていました。
今は解体状態で見る影もありませんでしたが(笑)
これは冷房設備完備の貯蔵タンク、+4℃に調整されていました。
仕込みの時期になると吟醸クラス用の仕込み蔵になるそうです。
出荷前のお酒をいくつか。うーん、香りがたまりません。
濾過にはかなり気を遣い、味の抜けないよう工夫をしています。
やはり呑兵衛はこの色を見ているだけで涎が出て困ります(笑)
全体の感想として「機械をうまく使った効率的な蔵」だと感じました。
というのは少ない人数で清酒全体で900石程度を造っています。
それだけ聞くと「機械に頼った蔵元」と思われる方もいるかも知れません。
ところがね、これがいちいち違うんです。
麹も酒母も仕込みも、別ラインで手造りを貫く酒も造っているんです。
会社が求める酒と別に杜氏のチャレンジと言ってもいいお酒があるんです。
最後に、そんなお酒たちを試飲させていただきました。
いつも思うのですが、造り手の言葉を聞きながら呑むお酒は贅沢。
特に屋守(おくのかみ)と十右衛門はこの先必ずブレイクします。
今のところ、という前提つきですが
屋守・・・全国レベルを狙った旨味・甘味・酸味の揃ったハイレベルなお酒
酒米に八反錦を使っているのがなお面白く、杜氏の技術の高さを裏付ける
十右衛門・・・これも八反錦だがさらに不思議な味の濃さ、深さを感じる
しかし重くなりすぎないのは独特の酸が味全体を支えているからだと思う
最後にはこんな貴重なお酒まで呑ませていただきました。
貴醸酒(きじょうしゅ)とは水ではなく日本酒で仕込むお酒のこと。
23年の熟成を経たお酒は、濃くてロマンティックな味わい。
貴重という点を差し引いても雑味もなく本当に素晴らしかった。
試飲という名の下に呑み始めたら盛り上がっていつの間にか大宴会。
4時にお伺いしてお暇したのがなんと9時半(爆笑)
田中部長、石井杜氏(右)、本当にありがとうございました。
最後になりますが、表題の件。
東京の蔵元が頑張っていないとは思わない。
各自、それなりにいい酒を造りそれなりに満足して呑んで貰っていると思う。
東京都酒造組合も頑張っていないとは言わない。
少ない人数でそれなりにイベントをやっている姿勢は評価する。
しかし。
起爆材料がまったくと言っていいほどないのです。
これは賛否両論ありますが、例えば東京独自の酒米や酵母。
東京地酒らしい味わいは何?と聞かれたら答えることは出来ません。
全国レベルに肩を並べることのできる酒質を持った蔵元も少ないし
だいたい「東京」のイメージが邪魔して美味い酒に感じないのが現状です。
そこにこの屋守や十右衛門なのです。
広島の八反錦で協会や宮城酵母を使って東京地酒もないですが(苦笑)
それでもこの酒質は東京を引っ張れる実力を持っています。
ごたごた言う前にとりあえず引っ張って貰って、
次のステージに上がった後でまた考えましょうよ、というのが僕の考え。
そんなことをとても感じた、貴重な蔵訪問となりました。
ホントにホントに最後に、同行した友人のブログのご紹介。
僕とはちょっと違った視点で今回の訪問を書かれています。
この中でビデオをUPしていますので、よかったら見てください。
年内に「東京地酒」のイベントをやりたいなぁ!
本気でそう思う、たけでした。




















