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BEYOND (ストリートバスケ小説)

北海道を舞台にした、架空のストリートバスケリーグの物語。競技バスケとエンターテイメントバスケの光と影を描いています。
読みづらい文章ですいません。また更新も不規則ですので暖かく見守ってください。たくさんな方に読んでもらえると嬉しいです。


第8話  「八女の実力③」


残り8:47
八女       4
清水       0


豊田「…………。」
その光景を見守る豊田。

清水の左サイドはガラ空きである。
八女は体勢を中腰よりやや低くし、清水側の右サイドを半身で塞いでる状態。そして左手を伸ばしボールにチェック。

清水(こいつ…!)

清水はボールを両手で真上に持って行き、すかさず真下へ。グッと腰を低くしスペースを確保しようとするが、八女はスペースを開けない。清水の右側を徹底的に埋める。

シュートフェイクや揺さぶりでフェイクをするが、動じない八女。

痺れを切らした清水が空いた左側でドライブ。簡単についていく八女。
ゴール下ペイントやや左側で清水はクルッと背中を向け、一瞬八女と接触。

が、コート左側3Pエンドまで逃げる清水。すかさずゴールに正対。正対と同時に一気に右ドライブ。ついていく八女。
フリースローラインより少し内側で、ジャンプショットを試みる清水。ブロックに行く八女。

ドライブからの勢いで流されながらも、フェイダウェイ気味にシュート。八女のブロックは惜しくも届かず。

ボールはリングを一回弾き、ネットに吸い込まれた。

DJ23「清水ーーー!!!フェイダウェイーーー!!!よく決めたーーー!!!」

盛り上がるギャラリー。

少しドヤ顔で八女を見つめる。
八女は微笑むと、ボールを取りに行く。


豊田「…………。」

八女のターン
ボールをもらった八女は、ドリブル始めた。次第に身体を大きく揺らしながら大きくクロスオーバーしたり、時にタンタタンッと細かくクロスオーバーをしたりした。
今度は前後しながら、時には後ろでノールックでクロスオーバーさせながらのドリブル。

魅せるドリブルに沸く場内。

今度は軽くジャンプしながら交互に股抜き、そしてグッと腰を落としてゆっくり前に出ながらの股抜きで清水に近づく。
清水はその間、ずっと腰を落としボールを見放さなかった。

が、その集中力が仇となった。

ほんの一瞬ドライブで抜く仕草を見せてすぐやめる八女、清水もそれに対応し、清水もまた少し気を抜いた。

その刹那、ドライブをやめて切り替えした左手でボールを清水のおでこに当てる八女。
跳ね返って来たボールを受け取りすかさず、左ドライブする八女。

何が起こったかわからない清水。
清水が振り向いた頃には八女はゴールを背にして、空中にいた。

ガコーン!!!

DJ23「八女のバックダンクーーー!!!清水、置いてけぼりだーーー!!!」

沸く場内。と、同時に少し笑い声も混じる。

不満そうにギャラリーを睨む清水。
観客とゆっくりとハイタッチしながら、ボールを取る八女。

これこそストリートバスケの魅力である。競技バスケではなかなかない、トリックプレー。だが、ここではこんなのは朝飯前で日常茶飯事である。魅せるバスケ、それがストリートバスケである。

特に競技バスケ出身者はこのストリートの独特のプレーに困惑することが多い。長年蓄積された経験が逆に邪魔をするからだ。自分の頭に教科書がないからだ。
ここでは、キャリアやプレーの価値観を押し付け合うことは皆無であり愚かなことである。
なぜなら意味の無いことだからだ。

清水のターン。
ボールをもらう清水。

清水「⁉︎」

清水が困惑するのも無理はない。
八女がまた先程と同じく、清水の左サイドをガラ空きにしているのである。

清水(ナメやがって!)


豊田「……やっぱり」
奈良「ん?何がやっぱりなんだ?」
豊田「奈良さん、清水さんを今まで見てきて気づいたことてないですか?」
奈良「えー?何だ?ん~…」

豊田「清水さん、多分ですけど左が極端に苦手なんじゃないですか?」

奈良「え?」


そう。
豊田の仮説は当たっていた。
また八女もそれをわかっていた。

清水は決して左でのドライブやステップが全くできないわけではない。ただ、右手右足でのプレーが極端に得意なためそれに頼る傾向があった。
素人はよく、左サイドでも右手に持ち替えたりということは多々あるが、プロやストリートの世界ではそれは命取りになる。

右に頼った結果、左を軸にするプレーは極端に弱く威力は半減する。

八女はそれを知っていて、あえて左手サイドをガラ空きにしていたのだ。

故に先ほどの清水のターンでは、エンドに逃げてからのドライブは威力があり、八女は止められなかった。

八女は過去の一戦で、それを感じ先ほどの2プレイで確認をした。そして、その違和感を確信に変えた。

豊田「多分八女はわかっていて、あのディフェンスをしているんだと思います。」
奈良「ほぇ~、気がつかなかった」


八女のプレーは派手さの裏にも堅実さがある。相手の弱点をつくあたりは非常にクレバーでもある。

魅せる、そして勝つ。

八女はその両方を兼ね備えている。

豊田はある意味ファンになりかけていた。その魅了するプレー、そしてクレバーなプレーに。

奈良「けど、おめぇはやっぱすげーな。今まで長く見てきたけど、そんなの全然気がつかなかったよ。」

豊田「いやぁ、まだわからないすよ。多分ですけど。でも自信はありますね。」

奈良「八女も気がついてるのかー。」
豊田「おそらくは」

奈良「ふーん。…おめぇと八女が戦ったらどっちが強いんだろうな」

豊田「え?」

奈良は何気なく言った。普通の日常会話だ。しかし、豊田には違った。

豊田「………。」
奈良「ん?」

奈良は豊田が一瞬別人に見えた。
豊田は鋭い眼光になり、ほくそえんだ。
そして試合を鋭く見つめた。

その時奈良はこう思った。
スイッチを入れてしまった。

豊田は自然と試合モードになってしまった。


清水のターンは、八女のディフェンスでバイオレーションとなってしまった。


そして八女のターン。





to be continue