第9話 「八女の実力④」
残り8:02
八女 6
清水 2
八女のターン。
右ひざ付近でボールも持ち、かがみながら様子を伺う八女。さきほどのトリックプレーで、無意識に距離を開ける清水。
奈良「清水は守りづらいだろうなぁ」
奈良の言うとおりである。トリックプレーによって、相手のディフェンスの集中力を下げた八女。そのウィークポイントを攻めないはずがない。
ショットクロック残り4秒となった。
まだ動かない八女。
その時、しびれを切らした清水が身体を寄せボールにチェック。
その瞬間、左ドライブで抜きにかかる八女。遅れながらつく清水。
八女にはそのわずかな時間で十分だった。ワンドリしたあと3Pすぐ内側でジャンプショット。
チャッという綺麗な乾いたネットの音。
DJ23「八女のジャンパー!!清水!完全に翻弄されているーーー!!」
天を仰ぐ清水。
豊田「あぁ…。終わったかな」
奈良「えっ?」
豊田「八女の勝ちですね…」
奈良「はっ?いや、まだ7分あるだろ⁉︎」
豊田は感じていた。
アスリート特有の格付けが終了したことを。力の差を完全に見せつけたからだ。引導を渡したのだ。
どうしても追いつけない、諦めざるを得ないと思わせた時点で勝ちである。スポーツの世界はこれのしのぎ合いである。特にこのストリートバスケでは顕著である。
八女は清水の弱点を狙い、また自分の得意プレーも確実に決めた。相手に迷いを与え、完全に狂わせた。こうなると相手はなかなか立ち直れない。
が、清水も自身のキャリアでそのしのぎ合いに勝ってきている。ただ、そこは競技バスケの世界での話だ。ここはストリート。名誉と金で動いている世界である。そこでのプレイヤーの底は計り知れない。
清水のターン。
ゴール真正面の3Pライン付近でボールをもらう清水。
清水「……!」
八女はフリースローラインまで下がり中腰で立っている。清水との距離は2mくらいだろうか。ほぼフリーである。
清水「ちっ…!」
清水はフリーのチャンスを逃さずその場でジャンプショット。
ボールは綺麗な放物線を描き、ゴールに向かう。八女はゴールに振り返る。
ボールはリング奥に当たり跳ね返った。ちょうど八女に跳ね返った。
DJ23「おーーー!!清水ーー3Pならずーーー!!」
清水は目を閉じ溢れる怒りを抑えていた。清水は自身でもわかっていた。
八女に対する感情がプレーの集中力をかき、ショットが入らないことも。そしてそれをわかっている八女に打たされたことも。
奈良「ありゃあ…」
豊田「清水さん、集中しないと…」
奈良「清水が外したかー」
清水は中国リーグでは、典型的なガードであったが、チーム事情によりシューターとして活躍していた時期もあった。
豊田「逆にフリーにされると外してしまうことは、ありますね。バスケあるあるですよ。」
奈良「そういうもんかー」
清水は自分の集中力と気持ちの整理が出来ないままプレーをしている。
ようは切り替えなければ、100%勝てる可能性はない。
それは逆に切り替えることができれば、勝てる可能性はまだ残るということだ。
切り替えるというのは、よく言葉では耳にするが、実際にすぐ出来るかというとそう容易ではない。
アスリートにとってその切り替えの早さもよく要求されるものである。
各々のキャリアによって、それは洗練されるものである。
ただ、今回ばかりは相手が悪かったのかもしれない。
清水は早々に立ち直る気配はなかった。ズルズルと引きずり、次第にプレーに明白に出た。
結果このようになってしまった。
残り4:13
八女 19
清水 8
八女、ノックアウトまであと2P。
to be continue.......