この日、昨年末打ち合わせをしていた皆さんと、野生動物の痕跡である「フィールドサイン」探しへ。

場所は地元の里山。正月2日にバードウォッチング出歩いた経路を中心に。

 

市道沿いにはそんな痕跡は確認できなかったものの、早速脇道に逸れると…

 

おお! 路肩の落ち葉の上に小鳥の巣が落ちている。 

 

手にとってみると

サイズからすると小鳥であろうとは推測できたものの、巣の作りから主を割り出すするまでには至らず。

内部の羽毛だけでなく巣の材質からでも識別できるらしいのいで、外観(飛び方)→ 鳴き声 →  羽根  →  巣  ぐらいの順番で覚えられるといいんだが。

 

 

この日一緒に探索されたのは、飯田市立動物園のスタッフや飼育員の皆さん。

(その時の様子はコチラ

普段から様々な 動物に接してこられているだけに、自分の視線以外にも様々な箇所にある痕跡を発見していた。

 

 

倒木の上には…

小型獣の糞。テンかイタチか? 

 

 

確実な証拠を求めて、木の枝で内容物を

ぐりぐりと 崩す(笑)

 

地面に顔を近づけてウンチを突いてるなんて、傍から見たら怪しい衆にしか見えまい。

 

 

他にも猛禽類が小型の鳥類を捕らえ、食べるために羽根をむしった跡も確認。 

 

そして、里山での糞の痕跡といえば

何故か道の真ん中に山盛り!

 

 

タヌキの溜め糞です。

 

タヌキのフィールドサインといえば「溜め糞」と呼ばれる(?)ぐらい、他の野生動物と比べても種を特定するのに判りやすい。

この生態は他の種にはないものらしく、しかも個体だけでなく家族、そして縄張り以外からの個体(家族ではない)も利用するらしい。

 

何故?なのかは、縄張りの主張の他に「他から来ました」との引っ越しの挨拶も兼ねているとか。

「掲示版」の役割も果たしているとも。

 

そのためか、溜め糞がある場所というのは、尾根とか歩道の真ん中とか、すこし周囲が開けている場所が多い。

ヒトだったら陰でこそこそになるんだろうけど、情報交換の場とする彼らにとっては、目立つとか解りやすいといった事が重要なのだろう。

 

そして、糞から判るのはこの場所を縄張りとしているタヌキの食生活。それは内容物を分析すればすぐに判る。

タヌキは雑食なため、季節によって食べるもの=糞の内容物も変わる。ちょっと崩して中を見てみると、カキの種が多い。

おそらく収穫されず落ちたカキの実をそのまま食べているのだろう。他にも複数の種が見えた。

 

里山の植物にとって、その種が増えるのに多くの野生動物の働きがある事が知られているが、カキにとってはタヌキは大いに種の散布を助けてくれているのだろうなと。実際に自分も里山を歩いていると「何故こんな場所にカキが?」という事に遭遇したことがある。

おそらくタヌキの溜め糞から発芽したカキが、育ったものであろうと推測できた。

 

カキは陽樹であり、発芽し成長するには日差しを必要とする。タヌキが糞をする場所というのは先に述べたように「少し開けている場所」であり、森の中でも比較的開けていて日光が当たりやすい場所でもある。

 

カキはその果実を食べ物として提供する代わりに、タヌキに次世代が発芽し育つ場所へと種を運んでもらう「互いに依存する関係」を構築している。お互いに「持ちつ持たれつの共存」をしているとも。

 

今回、同行してもらった動物園の皆さんに特に見てもらいたかったものが…

斜面に幾つも穿たれてた

 

何らかの

 

獣の住処。

ここは以前から巣穴らしい穴があると気づいており、しばらく出入りする痕跡(獣道)の存在も確認していたのですが…

正月に来た時には歩いていた獣道がすっかり落ち葉で覆われており、しばらく出入りがない状態でした。

 

今回訪れた際も、出入りしている痕跡は発見できず。

 

その代わりに…

!!

 

!?

 

 

持参していたメジャーで計測。

シカにしては小さい…。この住処の主だとすれば合点もいく。

キツネかタヌキの肩甲骨と睨んだが…

 

不思議だったのは、周辺に他の部位の骨が無かったこと。

もっと範囲を拡大すればあったかもしれないが、もしかすると巣穴の中にて息絶えた亡骸が、何らかの動物によって巣穴から外へと持ち出されたのかもしれない。

 

残念ながらこの場所の巣穴では、確実にこの場所にて何かの生き物が生活しているという痕跡は発見できず。

 

しかし、移動して次に訪れた場所では…

この巣穴の出入り口には

 

 

 

くっきりと

 

真新しい足跡が残っていた。

 

尾根沿いの少し開けた、南向きの斜面は先ほどの場所と同じ。

主を特定するためにもカメラを設置してはどうかと話もした。

 

また、

この尾根沿いの道を登った小高い丘の上の畑には…

明らかに何らかの獣の足跡。

 

これはおそらく

 

ニホンジカの足跡。

この地域の里山はニホンジカの生息数は少ないけれど、数頭はいてこの辺りでも目撃事例や食害(りんごの芽を食べてしまう)も確認されているので、まず間違いないなと。

 

 

大切なのは、この里山はニンゲンだけのものではないということ。

木材を得るとか、土砂災害の防止や景観とか、環境とか…。森や林の持つ多機能な効果について見直されてきているが、それはあくまでニンゲン目線。ヒトはサルから進化する中でこの森から出て変わっていったけれど、その他の生き物達はずっとこうした環境下で暮らしてきた。

それは大きく改変するニンゲンと違って、あくまでその環境の中でお互いに依存しながら共存してきた関係。

 

その観点を忘れ、ニンゲンの都合だけでどちらかだけを使おうとか排除しようというのは違うなと。

もし利用させてもらうにしても、その範囲や規模などを良く考える必要がある。

 

そんな事をフィールドサインをきっかけにできないものかと。