原爆による被害の話や写真が忘れられず、話の流れで成功を祝う人たちの姿を観ることになるのが耐えられないのではと、今まで観れなかった。でも彼の複雑な心情も伝わってきて、思ったより冷静に観れた。

国を想い、世界が平和になると信じ、物理学者として最善を尽くす。想像以上の犠牲と被害をもたらす、世界を破壊しうる力を生み出し、その力によって世界の流れが変わる。変わらないのは混沌としていること。創り出した重みは彼にしかわからない。

作るまでの大変さ、実験の際の大気に無限に引火して世界を破壊するかもしれない可能性もゼロではない恐怖…技術的に成功しても、それが終わりじゃない。

世界でも1番名の知られた物理学者でも、世界の流れを自分たちの力で変えようとする意思には良くも悪くも種々様々あり、政治力や人を自分の望む方へ動かす知恵、心理の影響をわかっているかはまた別。力にもいろんな力と方向性がある。もちろん実際のことはわからないけれど。ここまで人間の世界における複雑な状況や心情を様々に時系列を混乱させずに作り上げる監督の力量はすごいと思った。
『オデュッセイア』神々や冥界の存在、戦いを通じて非常に重厚に人間というものを描き出していた。
長く続いたトロイア戦争を終結させた、トロイの木馬の作戦がもたらしたもの。それにより帰郷というものを物理的な側面だけでない困難を伴う。人が抱える善悪、正邪。神々の怒り、予言。人の生死は儚いが故に信念や覚悟が問われる。何かを選べば何かを得、何かを失う。年月や選択により何かが生まれ、積み重なっていく。

中盤でセイレーンの歌のシーンがあったのだけど、観客には聞こえず、それがどんなものであったのか語られる言葉によってより想像を促され、現代や自分の人生に想いを馳せるきっかけとなり、私は好きだった。

いつもの私はメインのキャラクター達の心理にフォーカスする。
今回はオデュッセウスや彼の帰還を信じる者、死んだと思っている者だけでなく、犠牲となった名前の残らない数多くの人達の人生を通じていろんなことを思った。それが私にとっても大切なことだったと思う。



それにしても欧州の複数の国が食べ物や水を備えるように伝えているのがかなり気になる…。ロシアが数週間以内に攻めてくる可能性が高いよう。
『華麗なる賭け』を見始め初めて'99の『トーマス・クラウン・アフェアー』はこの映画のリメイクであることに気づいた。いろんな人がカバーしてきた曲もこの映画の主題歌。改めて聴くと歌詞が心に沁みる。

何不自由ない生活を送り、魅力溢れる多才な経営者の完璧な犯罪。
'68は銀行強盗、'99は絵画泥棒。ラストも違う。
主人公が何を考えているかがよくわからないのは'68の映画の方だと思う。

スティーブ・マックイーンの美しい海の色の瞳、フェイ・ダナウェイのファッショナブルさは印象的。
当時画期的な魅せ方だったのだろうと思われるカメラワークが洗練された印象を残す。
いくらかクラシカルな映画を見ていると、今の時代とはまた全然趣の違う、いろんな方法が試されているのだと感じる。

勘が鋭く頭の回転も速い、誰よりも先に犯人に目星をつける女性。気が強く強引だけど、憎めない。女性的な心の揺れも魅力的。
私はこういう女性が昔から好き。このような女性になりたいとさえ思っていたとも思う。

「満ち足りた人が最後に求めるのは何だと思う?」

追記:
あとで調べるとこの曲はもともとフランスの歌詞の曲だと知った。雰囲気がとても素敵。
映画ではあの華やかさの中、自由に生きられる人生なのに何を求めているのか心理が読みにくいトーマスが、終盤に近づくにつれどうなるのか、どう選択するのか気になり、この詩的な歌詞がより心に沁みるように感じた。

曲の紹介の仕方が素敵なのはこの方の文章だと思う。






















こちらは'99年の映画のポスターになっている写真。

個人的にはピアース・ブロスナンは007よりこの映画の雰囲気のほうが似合ってるように思うな。