恋人よ その33 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 どこに相談もしようがない事は二人ともわかっていた。妄想を見ているのか、何か精神的なものなのか、などと言われるかもしれないことだともわかっていたから迂闊に話すわけにもいかなかった。

 

 「いや・・・イ・ソンジュンには言っちまったな・・・。」

 

 ジェシンのつぶやきに、ユニは目を丸くした。ジェシンは、自分の家の家系図をソンジュンに見てもらう時に、自分が見た夢の話…次の王となったのだろう王族の味方として存在した自分の夢の話をしたのだ。その夢の中でも妻がユニだったことも。その人物らしき人間がこの家系図に存在するだろうかを知りたかったし、時代が合う人物がいるかどうかも何となく知りたかった。ソンジュンは賢い男だから、ジェシンが急にこんなことに興味を示したことに疑問を持っただろうし、実際持っていた。だから軽くは本音を言うしかなかった。だからこそ、『在信~ジェシン~』という名の人物が家系図の中に二人も存在することが分かったわけだが。

 

 そのうちの一人の『在信』は、どうも儒学が盛んに推奨された正祖の時代の人物であるともわかっている。その『在信』が儒生だった時代もあるだろう。何しろ王宮に関わる階級は決められていたのだし、家系図を残すほどの家柄だから、当然貴族階級両班だっただろうからだ。そして実際、弁護士事務所のイ所長の父親によってその時代の家臣団の中に名があった事が分かっている。所長には夢のことは言っていない。家系図に自分と同じ読みの先祖がいたから気になって、という事だけを言った。

 

 「ユニは誰にも言っていないのかよ。シクにも?」

 

 「ユンシクにも言ってはいないの。あの子・・・あの子は夢を見ないと思うわ、こんな。」

 

 ジェシンもなんとなく頷けた。ユンシクはユニとよく似ているが、結構その心根は豪傑だ。体つきは、少年時代虚弱だったという名残なのか、ほっそりして筋肉も付きにくそうだが、冒険はしない代わりに、着実に諦めずに事に当たる忍耐強さと、人の懐にするっと入り込める愛嬌とが混在していて、年上の男に可愛がられる要素をたくさん持っている。その時その時を懸命に生きて、大きな夢はもたない代わりに現実的で芯がぶれない。だから願望がたくさん入った夢は見ないだろうし、感情的な理解もできないように思う。

 

 願望。願望なのだ。前世や、運命などを信じていないと言っても、ユニといつまでも一緒にいたい、ずっと一緒だった、そういう人間でありたい、と思う気持ちは根底によどんでいる。こんな欲を持つとは、ユニに会うまで思ってもみなかった。人間関係はあっさりしていて、それが女性関係なら尚更縁がなかったジェシンが、ユニを新入生の集団の中に見つけたとき、眼が持っていかれ、心も体もそちらに向かおうとしたのだ。一目ぼれと言いたければ言え。そんな簡単なものではない。ただ、見つけた、と思ったあの時の自分の心情は誰にも分らない。ユニだって、ジェシンと居る前世っぽい夢を見続けることをどこか納得していて、けれどその納得は弟ユンシクには理解されないと分かっているからこそ、あんなに仲の良い姉弟なのに話をしていないのだろう。

 

 それぐらい、出会い頭に惹かれ合った自分たちの心の動きは説明できないものなのだ。そして逆に、連続してみるこの前世らしき夢を信じるなら、納得のいくものなのだ。自分たちは出会うべくして出会い、一緒にいるべきなのだ、と。また、その納得は誰にも理解されないものなのだともわかっているから相談のしようもないのだから。

 

 「こうやって考えられるってことは、俺たちは正気なんだろうなあ・・・。」

 

 「今は頻繁に夢の続きを見てるけど、季節ごとに一度か二度見るだけなら、普段は忘れていたもんね。」

 

 「今は何か影響あるか?」

 

 「ないけど、夜中に目が覚めるのはちょっとだけ朝が辛い・・・。」

 

 それに、とユニは眉を下げた。

 

 「そのアイスじゃないクリケットみたいな競技の大会の夢で、ソンジュンさんが怪我をするの。私をかばって。私を嫌いな人から。ハ・インスって駆けつけてきたサヨンが叫んでた。名前がはっきりわかる登場人物なんて今までいなかったのにね・・・サヨン・・・どうしたの?」

 

 ジェシンの顔色が変わったのを見て、ユニが縋り付いてきた。

 

 

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