㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。
ご注意ください。
月は満ち、ユニは男児を産んだ。ソンジュンはあまりの小ささに怖くて抱くのを躊躇したが、取り上げた産婆と医女が、とても体格の良い赤ちゃんだと笑うので恐る恐る腕に乗せてもらった。暖かくて、まだ真っ赤な顔で眉をしかめている我が子の顔が初対面だった。
ユニは産褥期の間は産屋となった部屋から出られない。赤子もその健康のために本来なら人前には出さないが、待ちきれなくて見に来る人はいるもので・・・当然まだかまだかとせっつくヨンハと、何も言わないが睨みつけて来るジェシンの圧に負けて、ソンジュンは一月後皆を招待した。
ユンシクは母親を連れてきていたから、当然生まれたての子を見ているし抱いている。それでも生まれて三日後だった。その頃にはうっすら赤みが引いてきていて、その容貌が分かるようになってきたと世話する女たちから言われるようになっていた。
「額がね、ソンジュンそっくりだって乳母やさんとか姑様が言うんだよ。でもね、ソンジュン。耳がね!」
「そうだね、耳はユニと同じ形だね。」
「他はどうなんだ。鼻は俺に似てないか?」
「なんでお前に似るんだ?!」
「いって~~!冗談だってば冗談・・・でもおれさあ、まだ腹の中にいるときにしょっちゅうテムルの所に行ってたから、おや、この人は大層美形だからちょっとばかり体の柔らかい間に摘んでおいて似せようかなあ、なんて思ったかもしれないじゃないか!」
「そんなわけねえだろ・・・今もまだ目があいてないんだろ?うちの母上がそう言っていた、赤子は最初あまり周りが見えていないものだ、って。」
「そうなのか?!」
会う前からうるさかったヨンハとジェシンだったが、乳母が赤子を抱いてやってきたとたん、ぴたり、とそのばかばかしい会話は止まった。
恭しくソンジュンの腕に預けられ、乳母は一旦退いていく。乳を含んだら連れてくるよう命じてあったのだ。ついでに着替えさせられたらしく、清潔な産着に綿入りのおくるみで包まれていた。
三人は一斉に覗き込んだ。ユンシクはすぐにジェシンに追いやられたが。仕方がなくユンシクはソンジュンの背後に回り肩越しに覗き込んだ。だから赤子の顔だけでなく、二人の顔もよく見えてしまった。
ジェシンもヨンハも真剣に・・・そう怖い位真剣にユニの産んだ男児の顔を見詰めていた。ひと月経つと、怖いぐらいに細く感じた首や手足に柔らかく肉がつき、赤かった顔も本来のものなのだろう色白になっている。和毛がふわふわと顔の輪郭を縁取り、その美しい額が皆の言う通りソンジュンに似ているのが分かった。目を閉じているから寝ているのだろうが、その小さな唇が少し尖って見えることに気づいたジェシンがふわりとほほ笑むのをユンシクは見た。ヨンハが小さな耳にそっと触れて、目元を緩ませるのをユンシクはまたもや見てしまった。
「おい・・・起きるだろうが・・・。」
耳に触れた手を滑らして、柔らかい頬をつつくヨンハをジェシンが咎めた。とても、とても小さな声で。
「そっとやってるよ・・・ってか柔らかい・・・絹の布団みたいだな・・・。」
これも小さな声で返したヨンハが感動したように言う。
「少し起きればいいんですけど、赤ん坊って本当に一日寝ているんですね、起きるときは襁褓が濡れているか腹が空いたかですし、泣きますし・・・。」
「赤ん坊はそれが仕事だって母上が言ってたよ。」
「そうなんだけど、ユニがね、時々襁褓や乳と関係なく目を開けて笑う時があるって言うんだよ・・・でも俺、まだ見たことなくって・・・。」
「仕事は休めないもんねえ。」
一日傍についているわけにはいかないソンジュンが赤ん坊に会える時は、いつもこうやって寝ているらしい。
「そのうち嫌でも起きているようになるから・・・っと・・・。」
そのとき、見つめる皆の前で赤ん坊のまつ毛が震えた。眉が少し寄る。首を柔柔と動かして、また震えたまつ毛。そしてゆっくりと瞼が上がった。
ああ、と嘆息が漏れる。
そこに在った瞳は黒々と輝いていた。そう、ユニのあの輝く瞳のように。