お祭り大好き! その6 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 ごちゃごちゃと小さなことで悩んでいても、ユニは基本生真面目な性格だ。何かしなくてはならない立場になれば、出来ないことだってできるようにならなければと思うし、するのであればうまくなりたいという負けん気もある。そういうところが、男しかいない成均館でどうにかやってこれた要因ではある。ジェシンはそう見ている。

 

 ジェシンだけでなく、ヨンハも、ソンジュンも、知っている。キム・ユンシクという南人の儒生が本当は女人であることを。それは既に王様もご存じのことで、それでもユニは許されてここ成均館に居ることが出来ている。チョン博士という、ほぼ最初からキム・ユンシクの正体を知っていた人が何らかの働きをしたのかとも思っていたが、王様が不快に思えば博士の懇願など何の足しにもならない。この国の法の精神的柱である儒学に反することなのだ、女人が儒学を修めるという事は。そして王様は儒学の徒である。それも熱心な。女人が賢い事と学問を修めることは違うと信じて生きてきた人にとって、女人が成均館で学ぶことは儒学に対する侮辱と等しい。けれど王様は許した。許すだけでなく、学ぶことも黙認している。それはいかにこの小さな後輩が真剣に儒学に向き合っているかを知ったからか、と最初は思っていたが、よく考えればそんな人物は掃いて捨てるほどいる。

 

 それでも、学ぶのが当たり前であるジェシン達に比べたら、その真剣度は格段に違うはずだ。男なら当たり前に与えられ、あまつさえ必須である学問を、弟の名を借りてまで彼女がしているわけ、それをつぶさに聞けるわけではない。彼女は自分が女人だと皆は知らないと思っているから、わざわざこっちからは言わない。だから聞けない。けれど、女人禁制の場に寄宿してまで彼女が成し遂げようとしているキム家の再興・・・それは命をかけたものなのか、と薄々感じている。発覚すれば勿論のこと、発覚せずに終わったとしても、彼女の人生のそれからは、どうなるのかわからない。弟の人生は始まる。彼女が土台を作り上げつつあるから。だが彼女は?キム・ユンシクとしか名を知らないあの娘は?先など何も見えないのを承知で、彼女は今を真面目に、必死に生きている、学んでいる。それを王様はどんな言葉で、態度で知ったのか。ジェシンにはわからない。分からないが知ったのだと思っている。ジェシンやヨンハ、ソンジュンが一年以上かけて知った彼女の意志を、王様は数日の彼女の監禁で知ったのだ。

 

 ハ・インスの父親の事件に絡み、ユニが女人の身で成均館に居ることが密告された。王様は当然怒り狂った。それが王様の弱みになるからだ。王様が自らが見出したと公言し続けていた優秀な儒生が実は娘だった。そんな事、あってはならない醜聞だった。その上、王様は儒学の妄信者だ。女人に儒学を穢された、そう感じたに違いない。当然秘密裏にユニは王宮に連れて行かれ、王様自らに詰問された、と後にチョン博士から三人は聞いた。物も食べずに静かに閉じ込められていたという彼女と王様との対峙の結果は、結果として彼女が成均館に戻ってきたこと以外、誰もその内容を知らない。

 

 彼女が焦っているのはわかる。早く元の状態に戻らなければ、不自然さはどこからか出てしまう。彼女が隠している女人らしさ・・・それは体つきも含めてだが、それはやはり大人の女への過渡期である年齢に差し掛かり、男とは違う香りを発し始めている。それは知りもしない彼女の弟、本物のキム・ユンシクとて同じだろう。彼女より体つきは男らしく骨ばり、髭も生え始めるころ合いだろう。どんなに似ていても、男は頬もそげて来る。彼女は未だに柔らかなバラ色の頬で自分たちの傍にいるというのに。

 

 そのバラ色の頬をさらに紅潮させて、キム・ユンシクは今球を追っている。打杖大会のために練習をしているのだ。昨年、付け焼刃で行ったジェシンとの特訓で、彼女はなかなかのすばしっこさを見せた。けれど大きな男がぶつかってきたら、球どころか本人が吹っ飛ぶ。去年はそれでも出なければならなくなった。ハ・インスの策略で。今年はそんなことはないと思うが、年齢的なものもあって、どうしても補欠としての名は名簿に載せられてしまう。そうなったら彼女は皆の足手まといにならないように、とこうやって練習を始めるのだ。あんなに、『行事』について文句を言っていたというのに。

 

 

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