㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。
ご注意ください。
そこからは大人たちのやることを見せられる日々が続いた。
摘発されたハ興業の話題で世間はもちきりになった。何人もの親が新聞に登場し、自分の子の行方を白状してもらいたい返してもらいたいと訴えた。何人かは行方が分かった。アメリカで養子縁組をしている子どももいたし、若い愛人として連れて行かれた娘もいた。
摘発できるだけの証拠が集まったのは、ハ興業が急激に手を広げ過ぎたことにあった。ユニを襲った者たち、医院に盗みに入ろうとした者たちなど、下っ端の動きを把握できない、または教育できていないがためにぼろが出たわけだし、それは売春宿や飲み屋などで働かせている女性たちの管理のずさんさにも及んだ。ユニの隣人の男の娘が保護されたように、何人かの女性が自力で抜け出してきたのだ。そして自分たちがそこに売られた経緯。行われている事柄などを訴え証言した。その中には、本来は海外へ養子として売られるはずだった者もいて、話が成立しなかったために売春の方へ行かされたという若い女性・・・ジェシンと同じ年ぐらいの少女もいたという。
「養子に行って、今よりいい生活ができる、ご飯もお腹いっぱい食べらるし綺麗な服も、それから学校へも行かせてもらえるって言い聞かされて、ある程度の年の子は怖いのとあきらめと、どうせならいい生活ができるところへ行こう、なんて自分たちを納得させて静かに閉じ込められてたんだけど、同じ家の反対側の部屋には赤ちゃんが何人もいるらしくって、小さい子の泣き声がずっと聞こえてて、ある日それが聞こえなくなって、またしばらくしたら聞こえて。」
その少女は一年近く養子縁組の対象にされていたらしく、もっと年端の行かない幼児たちが数回すでに海外に連れて行かれたことを示唆する証言も行った。
隣人の娘は、成人して働いていたしっかり者だったから、すぐに店に出されたらしい。売春も行う飲み屋のホステスとして。あまりにしっかりしていたので、店長の用事をすぐに任されるようになり、最初はくっついてきていたチンピラが徐々にさぼるようになったころに機会をうかがっていたら、警察に保護された。彼女は、店で行われる売春のあっせんを詳しく証言し、金の流れも掴んでいた。彼女が筋道立てて説明した、売春した人数によるノルマシステムにより、負っている借金が一向に減らないようになっている・・・つまりノルマに達しなければ罰金という形で給料が減らされるのだ。例えば酒を飲ませる店の女は、一晩に三人がノルマだが、酒を飲ませ、話し相手をし、それから個室に連れ込むのには時間がかかる。飲んだ挙句に女は抱かない男もいる。一人客をとっても二人取れなければ、一人分マイナスで計算されるのだ。最初からできない数でノルマが決められているが、知らない間に契約書に爪印を押してある状態になっていて、それに縛られるのだという。売春宿の女性ならもっとだろう、と彼女は泣き伏した。
ハ興業には捜索が大々的に入り、その中で閉じ込められていた子どもたちも数人見つかった。養子縁組の手続きに必要な証明書などが必要なため、偽造した証明書などが多く見つかった。しかし本丸は経営者だ。警察の踏み込みを感知したとたん、経営者は妻子を連れて雲隠れした。残された幹部は、金庫にあった多額の現金もないと証言した。優雅に華美に飾られていた美容院は警察に踏み荒らされ、怒った市民が石を投げてガラスは粉々になった。
「・・・ハ・インスが自宅に残っていた?!」
ジェシンがそれを聞いたのは登校した後だった。ヨンハが聞きこんできたのだ。ジェシンの父はもう何日も帰ってきていない。詳細を知るのは新聞だけが頼りだった。ハ・インスは当然登校してきていなかった。家族で雲隠れしたのだろうか、と思っていたら、自宅で堂々と警察を迎えたらしい。
「ああ。今は俺の家にいる。父が身元引受人になった。警察だって、いくら何でも毎日学校に通っている17歳の高校生が会社の何かを知っているなんて思っていない。一通り家族の行方の心当たりや最近の両親の動向などを聞かれて、うちの父親が連れて帰ってきた。」
カン・ムを呼び出して聞けば、そういう事だった。