㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。
ご注意ください。
「うちはさ、取り締まりはしないの!一民間業者なんだからっ!」
「商売の縄張り争いしてるだろうが。」
「業種違いだよっ!うちは飲食店はメインじゃない。」
「だが迷惑は被ってるだろうが。」
冷静に詰めていくジェシンに、ヨンハは最後はスン、とした表情を向けた。
「商売で被った迷惑は商売で仕返しするんだよ。」
「そのためには調べるだろうが、相手のことを。」
それが知りたい、とジェシンはヨンハに言った。
「仕事のことには口は出せないんだよって何度も言ってるよな。」
「分かってら。だが、眼に見える被害ならお前だって知ってるんだろ。ジョンの店の女の子のこととか。二人ほど減ってないか?」
ジョンに話を聞きに行ったとき、開店の準備をする従業員たちをジェシンは見ていた。ボーイや女の子たちは皆同じ時間に出勤するはずだった。だが、人の入れ替えなどあまりないからこそジェシンだって知っているその顔ぶれの中に、二人ほど欠けていたのだ。たまたま事情があって休みを取ったのかもしれないが、ヨンハに鎌をかけてみたところ、ぐっとしかめた眉頭に図星だったのかと理解した。
「・・・あの店の通りの反対側は、総合病院が作られる予定になってて、店の業態を変えることになってるんだよ・・・。普通のレストランにさ。あの通りもそのうち病院を中心とした作りになってくだろうから、それを見込んでさ。今の従業員はそのまま働いてもらってもいいし、っていう話にはなってて。そんな時に、三人女の子が辞めた。」
ウエイトレスとして働いている女の子は、皆ジェシンとヨンハより少し年上。しかし一番年上でも20代前半だろう。働き口を求めて、半分酒を飲む男相手のこの店に来ている。他の仕事より断然給料がいいから。学校に行かせてもらえない境遇で、自分で学費を溜めるために、という目的の子もいるし、単に生活のため、という子だっている。皆生活のためなのは大なり小なり変わらないのだが、その中にも、男性相手の接客業が得意である子もいたし、この仕事を通しての出会いをほのかに期待していた子もいる。それは個人の事情で、野党側としては店の方針に背かずちゃんと働いていればよかった。
そして、やめた三人は、この後半の部類に入る女の子たちだったのだという。
「辞めるときに、その辺りは本人たちが言い訳していったそうだよ。顧客を付けて自分の店を開くつもりだ、とか、普通のレストランでは見つからない金回りの良い男と巡り会いたい、とか普通に言ってたらしい。そんなところを勧誘されたときにつつかれたんだろう、ってジョンは言ってたけど。ただ、あの子たちがそれぞれ言ってた店の名前とか、場所とかが三人共違うのと、その店や場所が・・・調べたらさあ・・・。」
ヨンハは表情をゆがめた。
「全部偽物。ないんだよ。そんな店、いってる場所に。」
「詐欺じゃないか。」
「詐欺だろうねえ・・・。」
「何もしないのかよ。」
「騙されたのはこっちじゃない。女の子たちだ。」
「そんな薄情なこと・・・。」
「分かってたら止めただろ。薄情なんて言わないでくれ。ジョンだって気を落としてる。今残っている女の子たちに事情を伝えて、都合のいい話に簡単に乗っちゃダメだって忠告してるよ。」
店のものが出来る事なんてそれぐらいだよ、とヨンハは歪んだ顔のままで言った。
「女の子たちが行った先は・・・分からなくはないんだ。ない店の住所、全部ハ商会の店があったところだから。」
吐き捨てるように言ったヨンハに、ジェシンは顔を上げた。
「売春の摘発が入るたびに店と称する売春宿を捨てるんだ。違う場所に移るだけ。捨てた土地は違う店にするか誰かに貸して家賃をとる。そういうやり方をしてる。」
ヨンハはジェシンを見詰めた。
「多分あの子たちはそういう店に売られたんだと思う。親父もそう言ってた。女の子たちの行方を追ってくれるなら、それこそ売春の摘発だ、警察の仕事だろ、情報を渡すって親父は言ってる。あいつらちょっと図に乗り過ぎだ。親父が昔、格安で土地を貸して商売をさせてやったのを忘れてるんだよ。持ちつ持たれつの時代の仁義を捨てたって怒ってる。コロ、お前こそ親父さんの仕事に口出せるか?親父からすれば、たった女の子三人だけの被害だ、大事にしなくてもいい。ただ、ハ商会へのやり返すきっかけにはなる。それだけだ。親父さんにつなげられるなら、俺だって親父に頼む。」