ノワール その12 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 ハ家とムン家、というより、警察を司る立場にいるジェシンの父と繁華街を牛耳ろうとしているハ・インスの父との、戦時中からの闇市を巡る取り締まりのあれこれが、基本敵対関係にあるため、インスからすれば、ジェシンは父の商売の邪魔をする奴の息子という立ち位置だろう。ジェシンの父は賄賂の効かない公務員として有名で、インスの父がシマとしている闇市や歓楽街に何度も手入れを行って摘発している。いたちごっこなのは仕方がなかった。物資の不足は裏取引を横行させた。値はその方が何でも吊り上がるのだ。それをうまく自分のところで采配を振るったのがハ一家、一応ハ商会という看板を掲げているが、裏ではならず者を飼って力づくでみかじめを屋台からまで取り上げる、小さなマフィアのような集団だった。

 

 ヨンハの父は、対外事業がなかなかできない時期、それでも戦争前から続いているアメリカなどとの取引で手にいれられる食料や衣類などを、土地建物を借りて小売りし、周囲で金を落とせる連合軍側の兵士相手の飲食店で荒稼ぎし、それで人を雇い、そして世が停戦後落ち着いてくるとその土地建物を持ち主が使えるように返し、飲食店を整理して、普通に労働者層が入れる食堂などに形を変え、街を守った。戦中にヨンハの父が落とした金は、復興に役に立ったし、土地を横取りされることを阻止した。その横取りをし続けたのがハ一家だった。安く土地を買いたたき、そこに酒を飲ませる店を作り、売春を横行させた。人の流れを当てにして周囲にできる小さな飲食店などからは見回り代と称して金をとる。何軒もつぶれた。だが人がいなければ商売はできないと、また新しく誰かが店を開く。その繰り返しだった。

 

 警察は売春を取り締まる側だ。しかし、隠し宿的な売春宿はスラムなどの人の寄り付かない場所に設けられる。その窓口が酒を飲ませる賑やかな店だ。宿は摘発されるたびに場所を変え、多分ハ一家の一番の収入源だろう。それは公然の秘密だった。

 

 ジェシンの父はジェシンに仕事の話はめったにしないが、ハ・インスの父はそうではないらしい。たまたま中学から一緒の学校になったジェシンは、インスにとっては憎き相手だった、最初から。突っかかること突っかかること。それでも成績ではインスは一度もジェシンに勝てたことはなく、体格も運動面もジェシンの方が優れていたために、劣等感も相まって、ジェシンに対しての敵対心を隠さなかった。ヨンハは今に至るまで何度もインスに誘われたり、友人としての鞍替えをそそのかされたりしている。ジェシンの周囲を崩そうとしてくるのだ。だが、元からそんなに人と深く交わらないジェシンのこと、ヨンハが靡かなければ何という事もなかった。その状態で今に至っている。

 

 「別にお前が気にすることじゃねえ。」

 

 「嫌い。コロのこと嫌ってくるし、俺の親父からしてもあいつの親父がやってることはごろつきのやることだってことらしいよ。」

 

 一番はさ、とヨンハは顔をしかめた。

 

 「下っ端にかっぱらいや暴力行為をさせて平気なところだよ。お前がさ、助けた子を襲った奴らも、絶対ハ家に取り込まれてる奴らだぜ。ジョンが何か言ってなかった?」

 

 「なんだよ、俺が店に行ったの知ってたのか?」

 

 「俺にあった後学校来なかったじゃん。家に帰るわけないし、暇潰せるのなんかジョンのところしかないだろ。」

 

 「お前昨日登校したのかよ・・・。」

 

 「遅刻したけどさ!」

 

 ジョンからそのチンピラたちが以前の浮浪児みたいな様子とは違って妙に金回りよくなっていそうだったと聞いたことを話すと、やっぱりね、とヨンハは鼻息を荒くした。

 

 「勢力を大きくしようとしてるんだよ。うちがさ、ジョンの店みたいなところを一気に減らしたじゃん。そこの空きを埋めようとしてるらしいんだけど、これからさあ、アメリカ兵って減るじゃん・・・分かってんのかなあ・・・。」

 

 停戦が落ち着けば軍は縮小するのは道理だ。その前にヨンハの父は連合国相手の商売を整理したのだ。ハ一家は逆を行こうとしている。

 

 「でも、そんな学もないチンピラにさせる仕事なんて荒っぽい事しかないじゃん。売春宿で売るクスリが・・・今一番金になるんだよ。元手をタダにするなら、そりゃ盗むよな。」

 

 医者なんか狙い目だよ、とヨンハはため息をついた。

 

 

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