極秘でおねがいします その95 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 お仕事が忙しいかもしれないけれど、一度お会いしたいから!と母親に懇願され、兄にはにやにやと笑われて、ジェシンは実家を這う這うの体で退散した。兄嫁のアンナも楽しそうに笑っている。元気そうでよかった。体調に気を付けて元気な赤ちゃん見せてください。飯も美味かった。おかずも分けてもらってありがとう母さん。これは賄賂じゃねえよな。流石にタッパー一つのおかずでユニは連れてこねえよ。

 

 午前にユニを下ろした場所にたどり着き大きくため息をついた。俺に恋人ができたのがそんなに天変地異みたいなことのように扱われるのが不思議で仕方がない。あいつもそうなるんだろうな、と思いつくのは後輩イ・ソンジュンだ。

 

 年始めの飲み会の時、『ユニイ』の新作が話題になった。ジェシンが編集者をしているからだが、何よりも最後に載せる参考文献や博物館などの施設名のところに、成均館大学とイ・ソンジュンの名前があったのだ。勿論本人と大学には許可をもらっているのでソンジュンは当たり前に分かっていたことだが、言いだしたのはヨンハだった。

 

 「カラン!お前いつの間にユニイ先生と・・・!」

 

 わざとらしくわなわなと震えて見せるヨンハに、ソンジュンはしれりとかわしてみせた。

 

 「大学が所蔵する古い文献の閲覧を許可しただけですよ。まあ小説の内容年代を聞いて参考になりそうなものをピックアップしたのが俺ですから、名前を載せて頂いたんでしょうね。」

 

 「お会いしたのか~?!」

 

 「いいえ。あくまでも資料提供です。簡単な解説もお渡ししたので。」

 

 「俺が・・・俺が女の子と遊ぶ暇もなく働いている間に・・・。」

 

 「ヨリム先輩忙しかったもんね。」

 

 「先輩が忙しかったらユンシクも忙しかったんだろう?」

 

 「当たり前だ!俺とテムルは一心同体!」

 

 「何言ってんだお前・・・。」

 

 「カランが可愛い女子大生に囲まれている間、俺は爺どもと飯を食ってたんだ!」

 

 「別に俺は女子大生に囲まれてはいません。論文三昧です。」

 

 「何というもったいないことを!地の利があるというのに!」

 

 ヨンハのいう事ではないが、確かにソンジュンは若い女性の多くいる場所にはいる。学生、という意味で。地の利はあるかもしれないが、女性を目指してそこにいるわけではないので、利の意味はほぼないし、本人にとっても何の得でもない。場所のわりに女っ気のない男なのだ。

 

 親にも友人にも騒がれるのはあいつも同じだな、と同類を見つけた気分になって、ジェシンはシートに深くもたれた。ユニは8時ごろ家を出ます、という連絡をくれていた。まだ少し時間がある。

 

 ソンジュンには新作に直筆のサインをしたものと手紙を添えて贈った。大学にも寄贈した。ジェシンに礼の電話をよこし、ユニにもしたと言っていた。

 

 「素晴らしい物語です、先輩。主人公の成長が周囲の人生の自覚も促す、その成長過程も見事ですが、何よりも主人公の背骨を作った生い立ちが生々しく辛く、けれど自らも自らの故郷の窮乏も家族も見捨てないその強さをもち続ける人間の底力を見せた第三章に感激しました。」

 

 「・・・先生喜ぶぜ・・・一番苦労したんだよ第三章に。分かるやつには分かるんだな。」

 

 少し悔しかった。ユニが何を書きたかったのかを見破ることのできるソンジュンの鋭い頭脳がうらやましかった。彼の様であればもっと編集者としてユニの力になれるのに、とも思った。

 

 「でも美しいと思ったのはエンディングです、先輩。」

 

 それは、苦界から足を抜かせることができた主人公の姉が、都の片隅に開いた小さな女学堂のシーンだ。貧しい身なりの少女たちが早朝に門をくぐる。それを出迎える女人は朝日を正面に浴びて光り輝いている。通りがかった一人の官吏がそれを見てつぶやくのだ。

 

 『地上に太陽がある。手の届くところに光がある。それがどんなに誰かを励ますだろうか。』

 

 

 「コロ先輩・・・ユニさんにとって、手の届く太陽があったのでしょうね・・・。その一人がコロ先輩だったのだろうと俺は思うんです。うらやましい。本当にうらやましいです。」

 

 

 

 

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