㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。
ご注意ください。
大体年末か年始にヨンハから集合がかけられる。正直一番時間に都合がつかないのはヨンハなのだが、ジェシンも編集者という割と不規則な仕事だし、ソンジュンがいつ論文を書いているかなんてわからないからお互いさまではある。旗振り役がヨンハなだけなのだ。ユンシクはヨンハの秘書をしているからヨンハの都合さえ合えば問題ない。大型休暇は、サービス業に従事している人以外は春節になるうえ、未だこの時期は里帰りの風潮があるものだから、その時期は混雑することもあり逆に集まったことはなく、今回はヨンハの都合上年始早々になった。12月末はぎりぎりまで仕事を詰められているのだそうだ。
ジェシンにとっても、皆と集まるのは楽しい時間だ。ただ今回は少しだけしこりがある。春先に取材旅行先でユニといるところに彼らに遭遇した、その顛末にはっきりした解決は行っていないのだ。
ジェシンが取材旅行に行くとヨンハに漏らしてしまったからこそ、ヨンハの悪乗りで起こってしまったことなのだが、ジェシンの担当作家が匿名の『ユニイ』であることで、会ってしまった時のジェシンの態度は理解されていた。後からそれぞれから謝罪もされた。ただ、ソンジュンには次の日に博物館でユニをはっきりと目撃されてしまい秘密を知られてしまったが。
正直、ヨンハやソンジュンに知られることはもういいのだ。彼らは黙っていてくれと言えば必ず秘密を守ってくれる奴らだし、ユニが合いたくなければ会わなければいい。だが、ユニはその後、資料を見せてもらうという理由もあってソンジュンとは会えた。普通に。その後もつらそうなそぶりはなかった。年月というのは大したものだ、とジェシンが感心するほど。
だがユンシクは家族だ。家族だからこそ、一度つながりを復活させてしまえば、『家族』という理由で否応なしに関係は勝手に切れなくなる。それこそまたユニが消息を自ら断たない限り。
噂の対象となったソンジュンとは、おそらくお互いが被害者であるという認識もあったのだろう。その時の辛さを、家族が軽く受け止め、その上噂を本当にすればいいなどという考えを持ったその無神経さにユニは落胆し、離れねばならないほどの嫌悪を感じたのだ。少しでも縁を絶とうと、学費まですべて親に送付してまで。そこまでされて、ユニの両親はわが娘に見限られたことを知ったのだ。自分たちが娘の人生を、人格を軽く見てしまったからこそ起こったこと。勿論前段階での大学でのいざこざが原因にしろ、それに油を注いで燃やしてしまったのは両親だったのだ。本当は火を消してくれるはずの人たちだったのに。
さてと、とジェシンは腹を据えた。酒を飲む前に話してしまおう、そう決めた。そこで揉めるならさっさと退散しようと思った。ソンジュンは知っているからいい。ヨンハもまあ、面倒くさいことを言うかもしれないが言って見れば他人だ、冷静に何かを見るだろう。だが、ユンシクにとって姉のことをジェシンの口から知らされるのはどう感じるか、それは流石に心配ではあった。ジェシンはユニの絶対的見方だ。だがユンシクだって後輩として可愛いのだ。明るくて賢い、弟のようなユンシク。少々裏切っていた気分でいたのは正直辛くはあった。ここでユンシクになじられてたって、それは甘んじて受け、許さないのならそれでいい。だが、ユニの傍は離れない。
集まりのある日、ジェシンはユンシクだけ先に呼び出した。その日は仕事自体は休みなのだと聞いていた。集合は現地。その1時間前に、近くのカフェで落ち合った。
正直に、お前の姉のことだ、と言ってあった。当然ユンシクが断るわけもなく、ジェシンが待ち合わせ場所につくと、ユンシクの姿は既にあった。椅子を引いて座る。ホットコーヒーを注文するジェシンを凝視するユンシクの視線を感じる。コーヒーはすぐに来るからちょっと待て、と言い、ジェシンは座り直した。はい、とかしこまっているユンシクはどう反応するだろうか。