極秘でおねがいします その73 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 「・・・ったく、我慢してるってのによぅ・・・。」

 

 今の今まで眠り込んでいたせいか、かすれた低い声しか出なかった。びくり、と体を震わせたユニを、ジェシンは片腕で遠慮なく引き寄せた。

 

 髪に鼻先をうずめる。ジェシンも借りたから同じシャンプーの香りがするが、その先に暖かく揺蕩うユニ自身の甘い香りを見つけて、思い切り吸い込んだ。

 

 「・・・起こしちゃった、ごめんなさい・・・。」

 

 「怒ってねえよ・・・ただ。」

 

 腹が減ったな、と思ったんだ。

 

 

 寝る間際に見たネットの記事。読み飛ばしたはずだったのにしっかり頭に残っていたらしい。調べもしないで頭から信じてはならない、それは現状情報があふれかえる社会で、情報を発信している側のジェシンとしては当たり前の姿勢だが、自分に都合の良いことはつい信じてしまう大衆心理はわからないでもない。現に今、自分がその通りの状態だ。

 

 人は、満たされていると性欲が旺盛でなくなる。飢餓状態というのは子孫を残すために繁殖への欲を大きくする。また、かつての我が国もそうだが、夜、明りを灯さず狭いところで体を寄せ合って長時間眠る時間は・・・

 

 現在の出生率の低さを題材にしたネット記事だった。様々な要因を挙げている。例えば今の40台ぐらいから結婚という形が絶対ではなくなっていること。就業の難しさ、教育費の高額化などから子供を持つことへの躊躇があること。そして豊かになった生活が、繁殖への欲を奪っているということ。

 

 すべて使い古された論調であり意見であり、正直もう当たり前の意見として頭に入っていることだ。それなのに、頭に残っている。

 

 

 腹が減ったな、と又思う。この目の前の美味そうな女を食っていいかな、と甘い香りを吸い込む。腹減ってるもんな。旨そうだもんな。

 

 「・・・どうぞ・・・。」

 

 という声が聞こえた。夢中で息をしていた髪の毛の中から顔を引きはがすと、目の前にはベッドライトに照らされたユニの顔。オレンジ色のその光の中で、ユニは嬉しそうに笑っていた。

 

 「食べたければ、どうぞ。」

 

 私もお腹が空いたわ。

 

 

 

 少しまどろんだらしい。ふと目を開けると、ユニがジェシンの腕枕を外して上体を起こし、カーテンを少しだけ開けていた。外から入るのは月灯りだろうか。その思いがけない明るさに刺激されたらしい。そしてユニのぬくもりが離れた寂しさと。

 

 「・・・どこか辛いか・・・?」

 

 体、と話しかけたジェシンに、ユニは驚いたように振り向き、首を振った。パジャマはボタンが全部留まっておらず、見え隠れする鎖骨の下を俺は知っている、とジェシンはぼんやりとだが喜びが広がっていくのを感じた。

 

 予想はしていたが、ユニはジェシンが初めての男だった。力を籠めすぎないように、ジェシンはむさぼりたいのをこらえて優しくユニの体を暴いた。どうしていいかわからないとでもいうように、ジェシンの手から逃れようと、逆にジェシンに必死にしがみつこうとするどちらのユニもかわいらしくて、あちこちに唇を這わせた。キスすら数えるほどしかしていない二人なのに、まるでお互いを熟知しているかのようにお互いの体を受け入れていくその過程があまりにも気持ちよすぎて、ジェシンはうめいた。きつすぎるほどのユニの中は、初めてそこが開かれた証拠でもあり、ジェシンは最後の最後で理性を振り絞って中から脱出した。記事とは違って、まだ、そう、繁殖するわけにはいかなかったからだ。そこまでの合意はなく始めてしまった交歓に、最低限のマナーをジェシンは必死に守ったという具合だ。

 

 シャワーさせてやればよかったか。俺がぶちまけた腹の上の奴はきれいに拭いたはずだが、もう少しさっぱりさせてやった方がよく眠れたか・・・。

 

 そんなことを考えながらベッドに座ったユニの腰に腕を回すと、月が、とユニが口を開いた。

 

 「昔は、月明かり、星明りが夜の恵みだったのでしょうね・・・。カーテンを開けておけばよかった・・・そうしたら私、もっと・・・。」

 

 ははは、とジェシンは笑った。腰に回した腕に力を込めて引き倒す。胸の上に倒れてきたユニに軽く口づけて腰を撫でた。

 

 暗い部屋の中でも白く美しかったユニ。今は月灯りに照らされてさらに輝いて、確かにさらに旨そうだ。

 

 パジャマのボタンは、ちゃんと留める必要などなかった。

 

 

にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村