路傍の花 その52 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 ユニという娘は素晴らしい人だ。それは顔立ちの美しさのことではない。勿論容貌の良さが入り口になることもある。だが、その人を気に入る、好きになるには、やはりその人に魅力がなければならない。

 ユニは明るく笑顔がかわいらしい。それに話をするだけでも、受け答えに品があり、考えられた丁寧な言葉が返ってくる。頭の良さをそんなところでも感じるのに、ユンシクが語る昔話からは、もっと広く深い学識があることが分かる。そしてそれは大げさでも何でもなく、ユンシクの小科受験の際に、一緒に部屋で自分がまだ読んだことがなく、家にも所蔵のない本を筆写するぐらい学問が好きだ。ユンシクは小科で王様が驚いたくらい美しい字を披露しているが、ユニの字はもっと美しいらしい。ユンシクは筆の師もユニなのだ。病の身の弟を世話し、学問すら教え、そして家族のために家のことをすべてこなしてきたユニ。その姿に皆魅了されている。ユニの存在自体が素晴らしいものなのに。

 

 その存在の意味の一つである『女』であることへの理不尽さを感じなければならないことなど、一つもないのに、それを感じてしまわざるを得ないことが勝手にやってくるのだ。ユニは何一つ悪くないというのに。女だからこそ受ける仕打ちに、ユニは打ちのめされている。

 

 そんなことをした奴らに、ソンジュンは怒りを抑えられない。

 

 それでも、ユニにとって一番いい形で事を納めなければならない。それは叔父の望みでもあった。

 

 女人へのこのような仕打ちは、やった者たちより、やられた女人、娘たちの方が、彼女たちのこれからに傷をつけ、心にも深く傷をつける。叔父は、少しでもユニが好奇の目にさらされないように、表面に出る形で騒ぎにしたくない、そう願った。ユニに辛い思いはもうたくさんです、と。

 

 だからソンジュンは怒りを胸の中で燃やす。表情は冷徹に、静かに。そう自分に言い聞かせ、怒りを制御してハ・インスの前に立っているのだ。

 

 

 

 「あまりに怪しいので捕まえて見ると、店の主人が一度会ったことのある男だったのです。その男は、自分の屋敷の主人に付き従って、店の主人の姪にあたる方を屋敷の主人が花妻として強引に買い取ろうとした場にいたのだそうです。その姪ごが叔父のところに引き取られていたのを知って、どうも覗きに来たようですね。」

 

 「それが俺と何の関係があるというのだ。遠回しに言わなくてもいい。店にいる姪とはあの貧乏人の南人の姉という女だろう。君が・・・いや、コロとヨリムもか・・・妙に夢中になって通っていたあの茶店の。」

 

 「そうです。お察しなら話は早い。そう、今の話はキム・ユンシクの姉君の話なんです。」

 

 「そんな貧乏人の話なぞ聞きたくない。自分の姉妹を売る羽目になるような家の者が学問をしたところで、結局は何にもなれるものではない。結局は権力と金が物を言うのだからね、この世は。」

 

 「そうですね。けれど、その権力は支持する人があってのこと、その人たちがはなれていくような評判が立ってしまえば、夢のように消えてしまうものですよ。」

 

 インスはソンジュンをじっと見た。

 

 「何が言いたい。」

 

 ソンジュンもインスを見返した。

 

 「ハ大監のご評判に関してです。」

 

 インスは鼻で笑った。

 

 「何をいまさら。陰で競合する相手を蹴落としているとか、金で地位を買ったとか、そんな評判は今更だ。それに皆やっていることだから、その結果に実りが大きかった方が悪く言われるだけのこと。何の影響もない。ああ・・・君のお父上、左議政様をよくご接待差し上げていることかな。やはり目上の方には可愛がっていただかないと先は見通せないという事だろう。わが父はそれでうまくやってきているのだからね。君も成均館で派閥の先輩方に可愛がられる存在になったほうが、将来のためではないのかな。いつまでもお父上の御威光に頼れるわけではないのだからね。」

 

 ははは、と笑うインスに、ソンジュンは表情一つ変えなかった。

 

 「大監様のその評判は十分承知していますよ。父だとて、知っていることでしょうから俺が何を言うこともありません。両班の世界では慣習のような物でしょうから。ただ、俺が本日言いたいのは、我が父が最も嫌うであろうご評判のことですよ。」

 

 インスが笑いを納めてソンジュンを睨んだ。

 

 

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