路傍の花 その25 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 「ムン・ジェシン殿が言われた通り、俺は老論ですから老論の中で地道にやるつもりですよ。」

 

 ソンジュンは平然と言った。ユニとユンシクの叔父から言われなくても大事にするつもりなどなかった。一発二発殴ったとしたって、ソンジュンの腹立ちは収まるものではない。友人を貶められた怒り、たとえユンシクでなかったとしても、弱いものを踏みつけることで憂さを晴らす低俗な輩への怒り、嫌悪。家が同じ派閥なのが幸いだ、とソンジュンは嗤う。

 

 「そのすました笑い顔が怖いねえ、イ・ソンジュン君。」

 

 ヨンハが恐れ入ったように、けれど楽しそうに笑った。

 

 「だからどうやるってんだよ!」

 

 ジェシンはソンジュンの腹の中を読まずに直接口から言葉で聞きたいらしい。ソンジュンだって具体的には何をするかなんて考えていない。だが、ソンジュンの生家は圧倒的に老論の中で力があり、そしてその後を継ぐだろうと言われているソンジュンは、父親をしのぐ秀才と言われている。父親と同じように生きるつもりはなかったが、それでもソンジュンは今同じ学堂にいる老論の子弟たちに自分が劣ることなどないという自負がある。学問本位でいれば、であるが。だが、今国でまず台頭を表すには、その頭脳が抜きんでていなければならない。頭脳がなければ、入り口さえ開けてもらえないのだ。勿論家としての力があれば、縁故縁故で入り込んでくる者もいる。けれど物を覚え、理解する能力がない者に何ができるのか、とソンジュンは思っている。そんな奴らに負ける気はしないし、そんな奴らの下にいる気はさらさらない。つまり、ソンジュンは今回ユンシクに乱暴した学堂の『知り人』の下にいることは絶対にないし、その者たちのことを嫌悪し続けるわけだから、老論の中で力をつけるだろうソンジュンに認められないまま、不遇の人生を送ることになる、そういう未来を与えるのだ、ということを、何とヨンハはほぼ正確にジェシンに言って聞かせた。口をつぐむソンジュンの代わりに。

 

 「へえ・・・ホントかよ、できんのかよ、お前に。」

 

 「俺は根拠のないことは言いません。」

 

 「お前は言ってねえがな!」

 

 「けれど否定はしませんから。」

 

 「じゃあお前が殴らねえ代わりに俺が殴ってやるよ、名前を言え。」

 

 「言いませんよ。数年後に分かるでしょう。」

 

 「お前が嫌いな奴を当てろってか?!そんな悠長なこと言うんじゃねえ!」

 

 とうとうヨンハが腹を抱えて笑い出した。お前らいい組み合わせだよ、と涙までこぼしている。

 

 「イ・ソンジュン君。君、いい性格してるねえ。ねえねえ。次にある小科、受けるかい?」

 

 笑いながらそう聞くヨンハに、ソンジュンは少し考えてから言った。

 

 「次・・・とは思っていなかったのですが、キム・ユンシクが受けるのなら俺も時期を早めようかと思います。」

 

 むすりとしていたジェシンも、少し身を乗り出してきた。

 

 「あのちび、受けるって言ってたか?」

 

 「ちびって・・・俺と同じ年ですよ、彼は。そうですね・・・はっきりとは聞いていないけれど、早く一人前になって姉上様のご苦労に報いたいというようなことを言っていましたね。」

 

 それは会うたびにユンシクが言っていたことだった。僕が早く姉上や母上が望む形で働いて俸禄を貰えるようになったら、姉上は堂々と家に戻ってきてくれると思う、と。俸禄を貰えるようになるということは、階級はあれど、官吏として働くということだ。最低でも小科には受からなければ、下級官吏にもなれない。ユンシクは必ず小科を受ける。焦ってもいるから、必ず次の小科は受けるつもりでいるだろう。

 

 戻ってくるスンドリが見えた。勿論ユニはいない。叔父の家でユンシクの頬を冷やしてやっているだろう。あの優しい姉に報いるために、ユンシクはどんな気持ちで独りで学問にはげんでいるのか。今はソンジュンともジェシンやヨンハとも学ぶ場は違うけれど、もし小科に共に受かったら。

 

 「多少年少だけれど、いい席次で受かれば、成均館に共に入れるかもしれないよ。」

 

 ユンシク君に発破をかけないとね、とヨンハが片目をつぶった。

 

 

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