メロディ その22 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 とりあえず、と彼氏談義は置いておいて、ジェシンは本題に入った。途端に空気が重くなる。

 

 ユニによると、無くなるものは小さなもの、それこそ置き忘れたのかとあきらめがつくぐらいのものばかりだったので、最近まで気にすることもなかったのだそうだ。

 

 ハンカチが三枚ほど。ペン類が四、五本。財布など、大騒ぎになるものがないところが巧妙さを感じさせる。何の気なしにペン皿に置いたヘアピンやリップクリーム。自前で持って来ていた花柄のダブルクリップ。なくしちゃった、あ~あ、と思ってきたが、ここに来て頻度が、というかものがなくなることが日数を置かないことに、やはり気持ちが悪くなったのだという。

 

 手紙に入っていたハンカチとボールペンの画像を見せると、私のだと思います、と顔色を悪くした。ハンカチはそれこそ一年近く前に亡くしたと思っていたもの、ペンはつい先日だという。

 

 「そのハンカチ、三枚組でお土産に頂いたものなの・・・社長の奥様が海外旅行に行ったときに、女性事務員みんなに口紅とかお菓子とかと一緒に下さったものの一つで。柄がとっても素敵だからなくしてがっかりしてたの・・・みんな、って言っても事務員は三人しかいないけど・・・違うブランドで頂いたから、絶対に私のなの、この柄は・・・。」

 

 「なくしものがあるのは勤務中だけですか?」

 

 「勤務中というか、会社の中でしかなくなっていないの。だって・・・ほかに決まっていく場所なんてバーぐらいしかないから、私・・・。お買い物行くのに、会社で使っているボールペンは持って行かないでしょ、大体持ち帰らないんだし。」

 

 そうなったら、手紙を送ってくる人物は、ユニの会社に関わっているということに確定してしまう。

 

 「立ち入ったことを聞きますけれど、会社は女性ばかりではないですよね。」

 

 「勿論!でもね、男性社員はみんな営業で出払っていることが多いの。伝票とか、注文書とかの処理に帰ってくるぐらい。一番長く会社にいるのは社長ぐらいかな・・・。」

 

 「ほかに出入りの方は?」

 

 「それは勿論いらっしゃるわ。宅配の方は大体決まった方が来られるし、取引先様はこちらから出向くことが多いからお会いすることもないんだけれど、資材を納めている会社の人とか、事務機器のリース会社の人とかの相手は私だし。」

 

 「それも決まった人?」

 

 「ここ数年は担当はお変わりないわ。」

 

 そうですか、とジェシンはうなずいて、それからユニに一つ提案をした。

 

 店の裏口につけた防犯カメラ。それをユニにには知らせていなかった。けれど確実に手紙を入れる男は映っており、実際に物がなくなる、言い換えれば持ち物が盗まれるという被害が出ているわけだから、そろそろそれを放っておいてエスカレートさせないようにしないといけない。だからカメラに映った人物を確認してほしい。画像はあまり鮮明ではないが、見知った人物ならばわかるかもしれない。分かれば直接ジェシンが出向いて忠告するから、と。

 

 「俺は一応・・・弁護士という肩書があります。人は肩書に・・・弱い。法に強いものが前面に出てくれば、割と相手は矛を収めることが多い。だから、俺に任せてください。」

 

 「でも・・・私の知り合いなら、私が話すことも出来るわ。」

 

 「ユニさんに直接好意を伝えられないからこういう行動に出ているんですよ。思い通りにいかないことにいら立ちを感じたら、それこそユニさん自身をどこかに連れて行こうとするかもしれない。」

 

 今は、ハンカチやボールペンを形代にしているだけなのだ、とジェシンは言葉を飲み込んだ。物のように、ユニを自分の所有物にしてしまおう、そんな思考に陥ってしまえば、ただでも今人のものを勝手に盗むという行為をしてしまっているのに、余計に周りが見えなくなって、何でもしてしまう、それがストーカー気質の人間の怖いところだ。

 

 ジェシンが出ることが正解かどうかはわからない。相手へのアクセスを閉じられると、ストーカー気質のものは激昂して過激な行為に移ることが多い。だが、何もしなければしないで、自分の行為が許されると思ってエスカレートとしていくのだ。本当に厄介なのだ、こういう人物に執着されるということは。ジェシンはユニの件があって、過去の案件などを、学生時代にバイトしていた弁護士事務所の先生に頼んで見せてもらったりもしたのだ。大体が、胸糞の悪い事件だった。

 

 けれど、何もしないわけにはいかないのだ。ジェシンにとってユニは、仮にもコンビを組むパートナーで、そして。

 

 あこがれの女性なのだから。

 

 

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