『花四箱』と仲間たち その3 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟フォロワー様500名記念リクエスト。

  成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 「俺んちはさ~、人の売り買いはしてないんだぞっ!」

 

 とソンジュンの相談の内容にとりあえず茶々を入れたヨンハだったが、その後は真面目な顔に変わった。ソンジュンが何を聞きたいか頼みたいかをすぐに把握したからだ。

 

 「で、ウタクはほかには何も情報を出してないのか、そいつが自分で娘を売り買いしているわけじゃあないんだろ?」

 

 必ず仲介者がいる、と踏んでいるヨンハ。そう、人の身を商品として扱う者はいるのだ。例えば、妓楼にいる妓生。自分が頭を下げて身売りしてくることなどない。女衒と呼ばれる、花街に娘を買ってきて売る、そういう生業の者がいるのだ。女であればだれでも、というものもいれば、将来性のありそうな、例えば美しくなりそうな容貌だったり、芸に器用さを発揮するだろうと見込まれたり、というものを重視する者もいる。前者は場末の、それこそ体を壊すまで男の相手をさせられるようなところと商売するし、後者は高級な妓楼、もしくは妓生を育てるところとつながりを持っている。だが、その女衒ではないだろうな、とヨンハは言った。

 

「元が素人娘を両班の親父が金に飽かせて囲ったようなもんだろ。花妻稼業をさせる娘を扱うやつもいるんだ。」

 

 表向きは、いわゆる仲人のような形を取り、裕福な商人の隠居や、若い花妻を持ちたい両班の男に斡旋する者が存在することを、ソンジュンはこの時初めて知った。ヨンハは遊び人だ。妓楼で浮名を流しているのは相変わらずだが、官吏になってお互いに暗行御史などの任務の仕事のやり方の違いなどを通じて、ヨンハがただ女遊びをしているわけではないことをソンジュンは知った。

 

 妓楼というところは、その土地のすべての情報が集まるところです、王様。

 

 報告の際に、任務中妓楼に入り浸っていたことを知った王様に嫌な顔をされたヨンハが言い放った言葉。男というのは馬鹿でして、とヨンハは不敵に笑ったらしい。

 

 床の中だとねえ、口が緩むんですよ。目の前の女には何を言っても許されるみたいに思うんでしょうか。酒が入っているせいもあるのでしょうが、女が聞くことにほいほいと口を開くんですよ・・・好かれたい一心かもしれませんけどね、男ってバカなんですよう、王様。

 

 そうやって若い頃から世間を知ってきたヨンハは、妓楼の女将からも接待を受けたりする。よもやま話の中に、妓楼にいる妓生たちの生い立ちや出身地、出身身分や売られたわけなども聞く機会はあった。その中で、いわゆる人の売り買いをする人物にも様々な種類があることを知ったのだ。奴婢の売買も含めて。

 

 「直接知っているのだとしたらひでえ男だよな。もしかしたら今の場所より前からやってたのかもしれないが、そうだとしたら。そうじゃないなら、まあ・・・付き合いのある商売人が間に入ってるだろうねえ。」

 

 ウタクに調べさせることをヨンハはソンジュンに進言してくれた。その男と懇意にしている商売人、または出入りの平民がいないかということ。協力している役人もしくは手下の存在。そして、今までに消えた娘たちの確実な身元。親がどう言い聞かされてどれぐらいの金をつかまされたかという事実。そしてできれば、売られた娘本人の消息。

 

 ソンジュンはヨンハの助言通り、ウタクに書き送ろうと思ったが、いきなり今まで連絡など特に取っていなかったソンジュンから日を置かずに書状が行くなど、不審に思われるかもしれないと思い、ヨンハにもう一度頼んで、商売に来ましたとばかりの下人を一人遣いに出してもらった。そして書状は燃やしてしまうようにと書き、できれば調べが途中でも、所用を作って直接都に来てくれた方がいいとも書いた。

 

 ウタクは一人で動いているだろうから、と時間がかかるのは分かっていた。そしてその予想通り、ウタクが現れたのは半年ほどたったころで、げっそりとやつれたその姿に、ソンジュンは心底驚いた。

 

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