泡沫の夢~成均館外伝 王様とユニ その86 記念リクエスト~ | それからの成均館

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『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟一周年記念リクエスト。
  成均館スキャンダルの登場人物による創作です。
  ご注意下さい。
 
 
 ユニは一時かなりやせた。
 夜になると咳き込んで眠れない。
 微熱もあって心も塞ぐ。
 嫌な夢も見るようで、
 昼、少し気分が良いから眠れば、と
 ハンナや訪ねてきたヨンハたちが勧めても
 眠るのを嫌がった。
 
 しかし、頻繁に送られてくる
 娘ミョンファの手紙。
 その紙の隅にチョンと残される小さな指の痕。
 孫サンシクの指に墨をつけて
 まるで印のように毎回押されてくる。
 それに励まされて、
 食欲もわかないままではあったが、
 ユニは一生懸命に食べた。
 
 時には不思議な味わいの肉もあった。
 滋養が大事だと、毎食
 贅沢だと思うほど肉類が膳に上る。
 汁など毎回牛骨でとったものだ。
 処方されている薬湯は、
 苦かったり薬くさかったりして飲みたくないが、
 ミョンファの為、サンシクの為、
 それに心配してくれている人たちのために、
 ユニは目をつぶって一滴も余さず飲み続けている。
 
 毎日換気するユニの寝室と部屋。
 ユニもヨンハに頼んで
 病に関して医師から話を聞いた。
 だから、ユニの使った手拭い、肌着、チョゴリに至るまで、
 ハンナに命じて庭で火を熾させ
 大鍋で煮沸させる。
 捨てるのはもったいない。
 けれど、仕えてくれているハンナ、
 訪ねてきてくれるヨンハやジェシン、ソンジュンに
 うつすわけにはいかない。
 ユニも必死だった。
 
 夏をそうして乗り切ったユニ。
 熱は出なくなった。
 疲れやすいのは変わりないが、
 咳も出なくなった。
 頬もふっくらとしてきた。
 
 「いわゆる小康状態というものですな。」
 
 ユニの回復具合を尋ねたヨンハに
 医師ははっきりと告げた。
 
 「完治ではございませんな。
  確かに表に出る症状はなくなった。
  しかし体のうちにはまだ病は巣食って居る。
  これからの季節、風邪でもひかれたら
  悪化いたします。」
 
 出歩かせるなどもってのほかですよ、と
 念を押されて、ヨンハは頷いた。
 
 ミョンファの二人目の赤子の出産が
 近づいているのだ。
 しかし、時期が悪い。
 ちょうど冬に入ってしまっている。
 一目会わせるために
 ユニをこっそり連れ帰ろうと思っていたが
 無理だろう、とヨンハは肩を落とした。
 それに、ミョンファと赤子を連れ出すこともできない。
 産婦や生まれたての赤子は
 外に出すものではないのだ。
 
 いかんいかん!
 明るく行こう!
 
 医師の話を聞いたのはヨンハの屋敷。
 今日はソンジュンがユニのところへ行っている。
 また本でも持って行っているだろう、
 とヨンハはユニを励ますことを
 考えることにした。
 
 
 ユニを訪ねていたソンジュン。
 春先にユニがここに移ってから、
 非番のたびに訪ねてきている。
 最初は顔を布で覆い、
 その上にそむけていたユニ。
 今も覆いを口元にしているのは変わらないが、
 まっすぐにソンジュンを見て話をするようになった。
 顔を覆っていてもわかる瞳のきらめきは
 体調の良さを物語っている。
 けれど、この病について
 調べて回ったソンジュンは知っている。
 
 瞳の下にある頬。
 のぼせたように赤みがさしている。
 医師がまず見立てる脈と顔色。
 脈はさすがにわからないが、
 顔色はどの文献を読んでも一緒だった。
 
 病が体内に残っている間は、
 熱のあるなしにかかわらず、
 顔色の悪さにも関わらず、
 頬が異様に赤く色づく。
 
 それがこの病の一つの特徴だと、
 目の前の、ふんわりと赤い頬のままのユニを
 ソンジュンは眺めた。
 
 そんなソンジュンの心の中も知らず、
 ユニは目をくりくりと張って尋ねてくる。
 
 「あのね、ハンナが教えてくれないんだけど、
  一つ、どうしてもわからない肉があるの。
  滋養にいい乾燥肉を、戻して汁にしているだけですって
  言うんだけど、その肉の汁のときは
  すごくとろみがあるし、鶏肉みたいでおいしいんだけど、
  絶対鶏肉じゃないのよ・・・。
  何か知ってる?カラン、食べてみる?」
 
 背中に汗が流れる。
 何かを知ったらテムルは食べなくなるかもしれない。
 ようやく漢方で見つけたんだ・・・。
 滋養に満ちた食材・・・。
 スッポンの肉・・・。
 亀だなんて言ったら、
 気持ち悪がって食べないかもしれない。
 
 ソンジュンは言い訳を
 懸命に探した。
 
 

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