㊟一周年記念リクエスト。
成均館スキャンダルの登場人物による創作です。
ご注意下さい。
養生の為に疲れさせてはいけない。
しかし、寂しい思いもさせたくない。
三人は、やはりユニにとっては
やってくる客。
気を使うな、というほうが無理なこと。
けれど、誰も、ユニに会いに行かない、という
考えは持っていない。
ただ、昔と違い、年相応の常識も思いやりも
ちゃんと身に着けてきてるから、
三人は相談した。
それでもユニにとっては勝手な話。
しかし、そんなことを気にしていては
ユニに会えはしない。
三人の中で、時間も立場も一番
自由に使えるのはヨンハ。
だから
「お前たちの非番の日を俺に教えろよ。
俺はその合間を埋める。」
「埋めるって・・・お前が一番多いじゃねえかよ!」
「仕方がないだろ?
俺が一番暇なんだから~!」
「釈然としませんが、
テムルの無理が重なるといけませんから
合間の日、全部に行ってはいけませんよ。」
「テムルが『寂しいわ?ヨリム先輩に会いたいわ?』
って言ったら?」
「絶対言わねえな。」
「テムルはそんなはしたないことは言いません。」
そんな軽口を言っていないと
心が暗く沈みそうになる。
養生次第で長生きはできるかもしれない、
それはヨンハの言う通りだろう。
しかし、完治の話など聞かない病。
考えたくはないが、事実なのだ。
「・・・ポン・・・という亀が食えるかどうか、
というより、手に入るかもわからねえんだろ?
あいつが食いたいものを食わせよう。
そのほうがたくさん食うだろう?」
「スッポン。」
「テムルは牛肉でだしを取った汁が好きでしたね。
汁ものなら体も温まるし、
毎日、毎食飲ませれば・・・。」
ああ、ああ、とヨンハは扇子を振った。
「医師に聞いて、献立は整えた!
汁もちゃんと牛肉を使わせている!
毎回、これでもか、という強壮の食い物は
やはり味も濃いし食いきれないと困るから、
テムルの好きな菜も作らせてる。
俺も調べるが、お前たちももっといいものがないか
気を付けておいてくれよ~。」
そんな会合が開かれているとも知らず、
ユニは床に横たわっている。
部屋は温まり、火鉢には湯気の立つ薬缶。
敷布団は二重に敷かれ、
オンドルでほんのりと暖かい床だが
どうしても忍び寄る冷えから守ってくれている。
枕元には籠に入った色とりどりの絹の布。
ハンナが届けられた布に、急いで布ひもを縫い付け、
作ってくれた口元の覆い。
今は部屋に一人なのでつけてはいない。
夜になると体が熱を帯びる。
高熱ではない。
しかし一日続く倦怠感の果てに出る熱。
そして、一度始まると止まらない嫌な咳。
気怠さはしばらく前から感じていた。
疲れやすくなったのは年齢のせいだと勝手に決めて
気にも留めていなかったユニ。
家族にうつっていないと知らされて
本当に安堵した。
ふっと目が覚めるとじっとりとかいている汗。
さっきまで見ていた夢は思い出せない。
なんだか成均館にいたときだったような気がする。
誰かの眼を気にしていたような。
あ・・・でもあの時は世の中すべての眼を気にしてたわ。
男装だとばれるのが怖かったのだもの・・・。
床の上に起き上がり、
そばに置いてある手拭いで
額と首筋の汗を拭った。
どちらかと言えば、冷や汗に近い汗しかかかない。
それはこの病の特徴なのだろうか。
床に横たわり目をつぶる。
王様、ミョンファはまた一人身ごもっております。
娘をお守りください。
役立たずの母で申し訳ございません。
私の代わりに、ミョンファをお守りください。
また見た夢で分かった。
見ていたのは王様。
儒生服のユニを愛し気に見つめる王様。
大丈夫。
王様はミョンファを守ってくださる。
朝、ユニの熱は下がっていた。