放榜礼の日に~ソンジュン編 その14~ | それからの成均館

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『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。


 馬を急がせたソンジュン。
 どうも、執事とスンドリは
 どこかで追い越してしまったらしい。
 ユニの屋敷に着いたときは、
 まだ着いていなかった。

 驚くユニの母に事情を話し、
 ユニを急いで着替えに追いやった。
 ユンシクもとりあえず着替える。
 執事はユニの事情を知ってはいるが、
 男装の娘に求婚書を渡すのも、
 変なものだろうから。

 しかし、とソンジュンは居間で首を傾げた。

 「義母上様・・・。
  その・・・求婚書のやりとりの際は・・・
  本人たちはその場にいるものなんでしょうか?」

 当然婚姻など初めてのソンジュン。
 元々興味もなかったので、
 しきたり自体も詳しくはない。

 「そうですね。
  イ家のように代理の者が行える場合は、
  当人は出ませんね。
  もちろん、こちらは娘ですので、
  本来は父親ですが、親である私が
  その場で受け取ることになります。
  ユニが出ることはありません・・・。」

 では、慌てて着替えさせることもなかった、と
 ソンジュンがため息をついていると、
 ユニの母は笑った。

 「けれど、ユニも、
  娘のなりで求婚書を貰いたいでしょう。
  連れ帰ってくださってありがとうございます。」

 さ、若様もユニの部屋でお待ちください、
 これは年をとった者の仕事ですから、と
 ユニの母に言われて、ソンジュンは居間を出た。
 すでに花飾りはとってある。
 馬に乗るときに邪魔になったので、
 ユニがソンジュンの分も抱きしめて帰ってきたのだ。

 着替え終わったユニは、
 白いチョゴリに濃い桃色のチマを膨らませて座っていた。
 チマはソンジュンの母が作ってくれたもの。
 ソンジュンの母は、娘の着物をあつらえる楽しみを
 ユニをかまうことで満たしてしまっている。

 ユニの母に言われたことを告げて、
 ソンジュンはユニの側に座った。
 なんとなく落ち着かず、
 手を取り合ってうつむいている。
 論語でも読んで心を落ち着かせようかと
 ユニの部屋を見回したとき、
 訪ないを乞う声が聞こえてきた。

 スンドリ明るい声も聞こえる。
 奥様ぁ!坊ちゃまの使いの案内で参りましたあ!
 表に馬が繋いでますが?
 坊ちゃまはお帰りですかあ?
 
 ユニがクスクス笑い出す。
 ソンジュンも笑った。
 スンドリの底抜けに明るい声で、
 なんだか気が楽になった。
 それに、ソンジュンがいることが分かれば、
 使用人ではあるが、イ家に勤めていることで
 どうも尊大な態度に感じることもある執事も、
 きちんとユニの母に礼を尽くすだろう。
 若様にしかられるのが目に見えているから。
 
 「明日から暫く祝いの行事が続くよ。」

 「・・・それなんだけど、私は休もうかと思って・・・。」

 「どうして?」

 「なるべく目立ちたくないの・・・。
  挨拶回りみたいな行事ばかりでしょ?
  試験疲れで寝込んだって・・・お休みするわ。」

 確かに、ユニは目立つわけにはいかない、と
 ソンジュンは納得した。
 それに、そうすれば、ユニが男たちの中で
 過ごす時間も減る。
 ソンジュンにとってはとても安心すること。

 「ユニ・・・。婚礼はまだ先だけど・・・
  これで君と俺は、正式な婚約者だよ・・・。
  口約束だけじゃない。」

 でも、とユニはソンジュンの胸にもたれた。
 
 「どうやってユンシクと入れ替われるのかしら・・・。
  王様のお指図に、ってチョン博士はおっしゃったけれど・・・。」

 そうだね、とソンジュンはユニを抱きしめた。

 「王様にご相談申し上げるよ。
  もし、王様のおかんがえに無理があるなら、
  俺と一緒に地方へ出向させて貰って
  そこで入れ替わればいい。」

 「壮元のあなたにそんなことさせるわけないでしょう?」

 「だから大丈夫だよ。
  王様には俺と君にふさわしい方法が
  たぶん胸の中におありだよ。」

 さあ、俺に顔を見せておくれよ、婚約者さん、と
 ソンジュンのからかうような声に、ユニは顔を上げた。

 愛しげに頬を包まれ、
 そっと唇をふさがれる。
 今日、婚約者となった二人は、
 夢中でお互いの香りを貪った。

 うっとりとユニを胸に抱き、
 うっとりとソンジュンの胸に抱かれていた二人は、
 玄関の物音に気づいた。
 君はここに、とソンジュンはユニを離し、
 部屋を出て行く。
 玄関先では、辞去しようとしている
 イ家の執事の姿があった。

 「若様。奥様のお指図で、
  本日求婚書をキム家の奥様に
  お渡しいたしました。
  返書もいただいております。」

 うなずいたソンジュンは
 執事に一人で帰るように指示した。

 「俺も後ほど帰宅する。
  スンドリ、お前は今日もこちらに
  世話になるように。
  暫く用心を頼む。」

 ユニの母から求婚書を受け取ったソンジュン。
 自ら書き、母に預けていたのだ。
 いつでもユニの家に持って行けるように。
 ようやく、求婚書はその役割を果たした。

 ユニは、ソンジュンに見せられた求婚書を見て
 泣いた。
 胸にそれを抱きしめて。
 ようやく、現実だと分かって。

 ソンジュンは、ユニが泣き止むまで
 肩を抱いて寄り添っていた。

 ヨンハの馬に乗ってソンジュンは帰る。
 ユニは玄関まで見送ってくれた。
 直前まで味わったユニの唇。
 大科までの分を取り返すかのように、
 ユニの部屋でユニを抱きしめていたソンジュン。

 胸を張り、ゆったりと馬を歩かせるその姿は、
 夢を一つ叶えた男の自信に満ちあふれていた。


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