㊟成均館スキャンダルの登場人物による現代パラレル。
ご注意ください。
「そんなに悲観することもないと思うけどね。」
ジェシンの睨みなどものともせず、ヨンハは頭の後ろで手を組んでベンチの背もたれにもたれた。だらんと両手を広げてだらしなく座り、空を仰ぐようにしているジェシンと、足を組んで姿勢良く空を仰ぐヨンハは、どう見ても違う世界の人種に見えるのだが、これで本当に10年来の友人である上、一度も関係は切れたことがないのだから不思議なものだ。
「何を根拠に?」
首をねじ曲げてヨンハを睨んでいたジェシンは、すでに上を向いていた。
「真面目な子だろ?それに男慣れしてない。そんな子が、苦手だったり嫌いだったりする男と毎日二人きりになるもんか。まず、ユニちゃんはお前のことは普通に好きだね。」
知り合い、精々先輩としてな、と内心呟いて、ジェシンは黙ってヨンハの言葉を聞いていた。
「で、大事な事は、ユニちゃんは女の子の友達が周りにいる、ということだ。」
ヨンハは何だかものすごく自信満々だ。
「いいか。花の女子大学生だ。恋に恋い焦がれるお年頃だ。自分にも彼氏が欲しいが、友達の恋愛話も大好物だ。そんな中、今までそんな話のなかったユニちゃんに、フェイクとはいえ恋の話が持ち上がった訳だ。そして現在進行形だ。相手も分る状態でな。」
それはもう、弁舌さわやかにヨンハは演説した。
「興味津々。そして女同士だから、赤裸々に聞くぜ。どんな話をするの、どこかにデートにでも行った?優しい?そんな話から・・・。」
「そういや、お前が女の習性についてよくそんなこと言ってたから、適当に答えろよって教えておいたぜ。」
「ああそう!俺、凄く貢献したじゃん!じゃなくて!そんな可愛い話ばかりじゃなくてさ・・・。」
「他に何があるってんだよ。」
「だ~か~ら~!女同士だから赤裸々だっつうの!もっと突っ込んでくるの!手は繋いだ?キスは?もしかして相手の部屋に行ったりする?そうしたら気をつけなよ、ちゃんと避妊しないとね、とかさ。」
ヨンハの言葉を聞いて、ジェシンは空を見上げたまま固まった。
「・・・それはあいつに教えてねえ・・・。まさか聞かれたか?もう?つき合ってそう経ってないことになってるはずだぞ?」
「早けりゃつき合ったその日にキスしてるカップルなんていくらでもいるぜ。」
「てめえ以外にか?」
「俺なんて、つき合ったその日にベッドインも経験ずみ!」
「てめえは参考にならねえ。」
「ああ、ああ、俺の事はいいから!つまり、それぐらい女同士の会話って生臭いもんだっていうことだよ!」
「・・・で、それが何だってんだよ?」
固まったままそう聞くジェシンに、ヨンハは調子を戻した。
「そんな話を、今までは他人事だと思って聞いてきたわけだ。けど、自分が対象の話になってくる。フェイクとはいえ、相手が実物でいるんだ。意識しないわけないだろ?その時に、お前がユニちゃんにとってきちんと親しい男になっていたら、そういう恋人としての行為ができるかどうかの対象にお前がなってくるわけだ。そこでユニちゃんのハートをガッと射止めるイベントを・・・。」
「どんな?」
「それは自分で考えろよ~。だって、俺の聞いたってお前は参考にしないだろ?」
「いいから言ってみろ。」
「うんとね、誕生日に薔薇の花束を持ってお祝いに行ってあげたりとか、記念日にリングを贈ったりとか、誕生日に高いバッグをプレゼントしたりとか、クラブを貸し切って一晩中騒ぐとか・・・。」
「・・・いい。てめえのはユニには全然合わねえ。」
「ほら見ろ!」
とヨンハの話を途中でぶった切ったジェシンに、当然ヨンハは怒った。
「人に聞いといて!ユニちゃんへの10分の1位の優しさを俺にも向けてくれよっ!」
「そんなもったいねえ事するわけないだろ?」
ふん、と鼻を鳴らしてジェシンは横目でヨンハを見た。
「ぜんぶユニに向けてねえと逃げられそうな気がする。てめえに優しくするつもりは昔も今もねえけどな。」
ひどい!と叫ぶヨンハは、口ほどは怒った顔をしておらず、どこか楽しそうにジェシンの方に視線を流すと、くすり、と空を見上げ続けるジェシンを見て笑った。