NHKの「逆転人生」はワタシの大好きない番組のひとつ。
逆境を乗り越える人の話は、理屈抜きで感動と気付きがあるから。
今回の放送は、大木トオルさんのお話。
「ブルースシンガーの挑戦 犬との絆で笑顔を広げる」だった。
幼少期に、家庭の事情で家族や愛犬から離れて、1人親戚の家に住む事となり、ご飯のお代わりが出来ないほど、気を遣いながら暮らしていた。
大木さんにとって当時の楽しみは、ラジオで流れてくる黒人のブルース音楽を聴くことだった。
黒人の憂いを歌ったブルースに共通点を感じて、ブルースの虜になった。
ブルース歌手として本場のアメリカで挑戦しようと単身渡米した。
しかし、なぜ黄色人種がブルースを歌うのか?
なかなか活動を理解して貰えない日々は続いた。
メディアからのインタビューでも、黒人ではないのになぜブルースを歌うのかを必ず聞かれたそうだ。
その時大木さんは、いつもこう答えたそうだ。
「ブルースはピープルミュージックだ。誰しも苦しみや哀しみがある。それをブルースにして歌ってはいけませんか?」と。
その後もレストランで差別され嫌な思いをするなど、アメリカでは挫折も味わった。
しかし、それこそブルースの真髄である「自分では、どうにも出来ない人の嘆きや哀しみに」にぶつけてブルースを歌ううちに、黒人のブルースファンからも徐々に支持をされる様になって来たそうだ。
アジア人のブルースシンガーとして、一定の知名度と成功を収めた大木さんだが、もうひとつ心にあったのは、いつも自分の側にいて慰めてくれた愛犬への想いだった。
ある日、「アメリカでは“セラピードッグ”という特別な訓練を受けた犬がいて、高齢者施設や病院で高齢者や入院患者に元気を笑顔を与え、モチベーションを高めリハビリなどに前向きになる」という話を聞いた大木トオルさんが、実際にその様子を見た事だった。
“ブルースとセラピードッグの共通点”に気がついたと言います。
幼少期に自分を慰めてくれた愛犬を思い出し、セラピードッグの素晴らしさに気づいた大木さんは、ブルース歌手活動の側セラピードッグの訓練方法を学び、自らシベリアンハスキーを飼いセラピードッグ育成を始めました。
渡米から9年後、日本でも高齢者介護の問題が顕著になって来た時期に、その素晴らしさを伝えるべく日本へ帰国し訓練場開設し、セラピードッグの育成に取組みました。
近年の研究で様々なセラピードッグな効果が実証されてます。
一番は、人が犬と目を合わすと、
人間の脳から「オキシトシン」が分泌されることです。
オキシトシンには“心を癒やす”“体の痛みを和げる”“絆の形成”などが報告されていますが、“やる気がでる”“モチベーションがあがる”などの効果も見られるとの事。
研究によると、犬と見つめあったときに人間の体内のオキシトシンは3倍以上に増加すると言う驚きの結果が出てます。
これが、犬のセラピー効果の大きな理由だと考えられ、さらにこの実験では、人と見つめあうことで、犬の側にもオキシトシンが分泌されていることが分かったそうです。
また、犬の前で“会話している”“鼻歌を歌っている”“泣いている”という3つの状況を作り、犬がどこへ寄っていくかを調べた結果、1番少なかった“会話している”を基準にすると…
・会話している→1.0倍
・鼻歌を歌っている→3.6倍
・泣いている→50倍
と言う結果が出たそうです。
「犬は人の悲しみや苦しみを感じ取り、助けたいと行動を取ろうとしているみたいだ」と。
1985年のある日、人に虐待されたと思われる
ボロボロの母犬(チロリ)と生まれたばかりの仔犬に出会った。
仔犬は直ぐに里親が見つかったが、母親は引き取り手がなかった。
5日後、
チロリは突然逃げてしまった。
「誰かが保健所に通報したのかもしれないと思った」そうだが、
直ぐに大木さんは動物愛護センターに行き、幸い収容されたチロリを見つける事が出来た。
大木さんは、このままチロリを捨て置けず連れて帰って飼うことにした。
3年後、一緒に暮らしていたハスキーが癌になった時、チロリはハスキーにもの凄く寄り添い患部を舐めるなどしていたと言う。
この様子を見た大木さんは、虐待を受けたチロリだから痛みが解るのか?もしかしたらセラピードッグとして生きていけるかも知れないな?と思ったそうです。
「捨て犬でも、もう一度輝けるかも知れない…」
チロリの可能性に賭けて見ることにしたそうです。訓練を始めたチロリでしたが、杖を持った人に合わせてゆっくり歩く訓練で、チロリは杖に異常に怯えた態度を示したそうです。
「杖の様な棒で叩かれるなど虐待されたトラウマによる反応だろう」と大木さんは思ったそうだす。
そこで大木さんは杖からの恐怖心を無くすために、チロリに毎晩添い寝して、自分に慣れて来るとチロリの側に杖を置いて、杖は怖いものではない事を伝えようとしたそうです。
無理強いではなくチロリのペースに合わせて根気良く続けていると、いつしかチロリは杖に慣れてくれ、どの犬よりセラピードッグの訓練で頑張ってくれたそうです。
半年後、都内の高齢者施設でセラピードッグとしてデビュー。
高齢者の目を見つめ寄り添い、セラピードッグとして立派に活躍したそうです。
ある男性の入所者は、3年前に認知症と診断された男性は、寝ている状態が多く声をかけても反応が乏しく、歩行訓練や会話にも消極的だったそうだが、チロリと定期的に会ううちに6ヶ月めには、チロリが来ると笑顔を見せる様になり、自らチロリの名前を呼ぶまでになった。
これまで全くやる気を示さなかったが、チロリがいればリハビリを頑張る様になった男性。
男性の変化を見ていた施設長は言う「チロリが残されたやる気、意欲を引き出してくれた」と。
大木さんは、そんなチロリを見て仮説を立てた。
「もしかしたら、チロリには過酷な背景があり、虐待されたからこそ、痛みが分かるから病気の人に一生懸命寄り添おうとしているのではないか?」
その仮説から、大木さんは動物愛護センターに行き、引取り手がなく殺処分を間近に控えた保護犬の一部から、セラピードッグの訓練犬として引き取る事を始めたそうです。
ただ大木さんは、何も胸を張って言えないと言います。「全ての子を連れ帰る事は出来ない。他の子は見捨てているのだから…」と。
まだ、年間5,000件以上、猫は27,000件以上もの殺処分されるのが現状だそうです。
「殺処分から助けた犬がセラピードッグとして、人を助けているお役に立つ事が、世の中に浸透し理解されれば、殺処分を止める動きが始まるのではないか。人と犬の共存が私の悲願です」と大木さんは言う。
訓練犬は、餌で覚えさせる事は一切せず、最後は褒めてあげる事だそうです。
東日本大震災後、野犬化した犬も引き取ったそうです。人間不信になってしまった犬たちは、人に怯え威嚇します。
餌をあげるだけで、人が近づくとケージに直ぐ隠れるところから、少しずつ変化しケージから出てくれる様になるまで半年間もかかったそうですが、餌をあげる以外は、特に何もしなかったそうです。
とにかく無理強いしない。
心を開いてくれるまで待つ。
心に傷をおったこの子達には、それしかないと大木さんは言います。
どんな子も無理強いしない。褒める。
根気強く陽気に楽しく教えていく。
私もわんちゃんを再び飼うつもりなので、この大木さんの言葉を胸に心してわんちゃんに向き合いたいと思います。
大木トオルさん、これからも頑張って下さい‼️