馬籠宿のほぼ真ん中にある「藤村記念館」。
文豪・島崎藤村の生家で馬籠宿本陣の跡地にあって、日本遺産に認定されています。
「血につながるふるさと 心につながるふるさと 言葉につながるふるさと」
入口の白壁には、藤村が地元の小学校での講演で述べた言葉が書かれた銘板があります。
冠木門をくぐり、右手にある「藤村記念堂」を進みます。
藤村記念堂は、藤村が亡くなって4年後に建てられたものです。
「木曽路はすべて山の中である。」で始まる『夜明け前』直筆原稿のレプリカ。
藤村記念堂を抜けると、小説『夜明け前』にも登場する「隠居所」があります。
1895(明治28)年の大火で唯一焼け残ったもので、当時のままです。
隠居所は、藤村の祖父母が暮らしていた建物です。
少年時代の藤村が、この2階を勉強部屋として使用したそうです。
藤村童話をイメージした「ふるさとの部屋(DVDコーナー)記念文庫」。
企画展示室「第二文庫」では「島崎緑二作品展」が開催されていました。
緑二さんは藤村のお孫さんで、もう亡くなられています。
40年前に初めて馬籠宿を訪れたとき、緑二さんから藤村の話をお聞きしました。
そのときのことが思い出されて、懐かしくなりました。
常設展示室となっている「第三文庫」。
『若菜集』から絶筆『東方の門』までの原稿などが展示されています。
終焉の地である神奈川県大磯町の書斎も復元されています。
一巡すると藤村の生涯をたどることができるようになっています。
「まだあげ初めし前髪の 林檎のもとに見えしとき 前にさしたる花櫛の 花ある君と思ひけり」
空で言える、私の好きな詩『初恋』の碑が庭にありました。
庭側から見た「藤村記念堂」と「隠居所」。
記念堂の向こうに見える建物は、『初恋』のモデル、おふゆさんの生家「大黒屋」さんです。
これまでに何度も見学していますが、今回も見応えがありました。
小説や詩だけでなく、人間としての島崎藤村に魅力があるからだと思いました。