1978年のアルバム(その56 Let’sKeepItThatWay/AnneMurray)
カナダを代表する女性シンガー
Anne Murray
’70年代初頭から、代表曲といえる Snowbirdをはじめとして、コンスタントにヒットは出していて・・・
日本でも大手レコード会社からリリースされていたので、ちょうど同じように出ていた Helen Reedyと同様、日本でも結構オンエアされていました。・・・
それが・・・
日本では、やはり同じレコード会社からリリースされた Olivia Newton-Johnの登場によって・・・地味な存在になってしまったことは否めないでしょう。・・・
'70年代半ば頃からも、コンスタントに新譜はリリースしていたものの、大きなヒットはなかったのですが・・・
1978年、後半、You Needed Meという曲が、全米チャートを上昇
してきました。
別に特別な歌という印象はなく(失礼
)しっとりとしたカントリー調のバラード・ナンバー
・・・
それが、いつの間にか、全米No.1に
驚きましたが・・・どこへ行ってもディスコ・ミュージック一色の1978年
Anne Murrayのやや低い声で歌われるこの歌
が・・・
何か多くの人を、ほっとする気分にさせたことも事実でしょう。
尚、本国カナダでは、Snowbird
をはじめ、7曲もNo.1
を放っていましたが、全米No.1
は初の快挙でした。
そして日本でも「辛い別れ」の邦題でシングル発売されましたが・・・
実は、この曲、1978年の初頭にリリースされたアルバム・・・
Let's Keep It That Way
そこからの2枚目のシングル・カットだったのですよね。
日本でもリリースされていて、邦題は「愛の香り」でした。・・・
そして、ちょうどヒットがあまりなかった時期だけに、音楽雑誌等の広告も、小さくなっていたのでした。(苦笑)
さて・・・ということで、アルバム Let's Keep It That Way
レコーディング、ミキシングは、トロントのEastern Soundにて・・・
Anne Murrayヴォーカル
参加ミュージシャン
キーボードは、Pat Riccio Jr.、Doug Riley
ドラムス、パーカッションは、Barry Keaneベースは、Tom Szczesniak
ギターは、Aidan Mason、Brian Russell
、Bob Mann
、John Leslie Hug
スティール・ギター、ドブロは、Jay Dee Maness、Bob Lucier
、Pee Wee Charles
バッキング・ヴォーカルは、Bill Hughes、Bruce Murray
、Deborah Schaal
、そして、Anne Murray
ストリングス&ホーン・アレンジメントは、Doug Riley、Rick Wilkins
エンジニアリングは、Ken Friesen、Tim McCauley
エグゼクティヴ・プロデューサーは、Balmur Ltd
プロデュースは、Jim Ed Normanです。
アルバム・ジャケット、アート・ディレクション、デザインは・・・
Paul Cade、Robert Anderson
写真撮影は、当時のご主人、Bill Langstrothです。
A面、カントリー・フレーバーたっぷりのムードに、スティール・ギターが響き・・・
Let's Keep It That Wayでスタート
、タイトル曲で邦題「愛の香り」
多くのフォーク&カントリーの楽曲を書いているソング・ライター Curly Putman、Rafe Van Hoy
の作品
リラックスした雰囲気の中、やや低めの説得力のある歌を聴かせます。
尚、この歌はその後、Juice Newtonの初ヒット曲(全米カントリー・チャートNo.37
)、その後、Mac Davis
、Nancy Sinatra
も取り上げています。
2曲目、明るく軽快なビートが響き・・・
Walk Right Back、そう、The Everly Brothers
の1961年のヒット曲
(全米No.7
、全英No.1
)、Sonny Curtis
の作品
Anneが元体育教師であることは有名ですが、「毎日一人ぼっち・・・」の筈が・・・
まさに溌溂とした感じで元気をもらえるナンバーに
アルバムからの第1弾シングルで、全米No.105
、全米アダルト・コンテンポラリー・チャートでは、No.15
、でしたが、全米カントリー・チャートでは、No.4
一方、カナダでは、No.32
、アダルト・コンテンポラリー・チャートでは、No.3
、カントリー・チャートでは、No.2
、さすがです。
邦題は「寂しき日々」でした。・・・
3曲目、心地よいギターの音から、静かに歌い始める・・・
Just To Feel This Love From You、Jackie DeShannon
のナンバーで、彼女の前年リリースのアルバム You're The Only Dancer
に収録
Jackie DeShannon、Dean McDougall
の作品
ともにJim Ed Normanプロデュースということで、取り上げられたのでしょう。・・・
ペダル・スティールの音が響き、Anneの説得力のある歌声
邦題は、「愛がすべて」でした。・・・
4曲目、美しいアコースティック・ギターのピッキングから、Anneの歌
We Don't Make Love Anymore、Kenny Rogers
のナンバー
彼の1977年のアルバム Daytime Friends収録
Kenny Rogers、Marianne Gordon
の作品
、邦題は「ひとりの部屋」
ギターをバックにじっくり聴かせ、ストリングスも効果的です。
5曲目、アコースティック・ギターのカッティングから、フォーク・ロック・ナンバー
I Still Wish The Very Best For You
Brent Titcomb、Richard Miller
の作品
軽快に歌うAnneをバックアップするコーラスは、Bill Hughes
印象的なギター・ソロは、John Leslie Hug、邦題は「あなたの面影」
です。
B面、アコースティック・ギターから静かに始まるのは・・・
You Needed Me、勿論、「辛い別れ」
新進のソング・ライター Randy Goodrumの作品
じっくり聴かせるAnne、途中のストリングスも印象的
前述の通り、アルバムから第2弾シングルで、全米No.1
全米アダルト・コンテンポラリー・チャートNo.3、全米カントリー・チャートNo.4
カナダでは、レギュラー・チャート、アダルト・コンテンポラリー・チャート、カントリー・チャート、全てでNo.1
さすがの一言
、全英ではNo.22
そして翌年のグラミー賞では、Best Female Pop Vocal Performanceを受賞
また、1999年のBoyzone(全英No.1
)をはじめ、多くのアーティストがカバー
日本でもテレビ・ドラマの主題歌にも使われたり、永遠のスタンダード・ナンバーとなっています。
2曲目、アコースティック・ギターと、Bob Lucierの奏でるスティール・ギターから、心地よくAnne
が歌い始める・・・
You're A Part Of Me
当時は、ソング・ライターとして知られていた Kim Carnesの作品
Kim自身のアルバム Kim Carnes
に収録
シングルとしてもリリースされていました。・・・
カントリー・バラード風ですが、力強さも感じるナンバー
バックのピアノの音が印象的、ここでの邦題は「あなたとともに」です。
3曲目、ドラムスから、軽快なリズム、トロピカルなムードで始まる・・・
Hold Me Tight、そう、Johnny Nash
の1968年のヒット曲(全米No.5
)
彼の作品で、同名アルバムにも収録されています。
ここでは、Barry Keaneのパーカッションがフィーチャー
レゲエ風の楽しいサウンドとなっています。
4曲目、ピアノとスティール・ギターから始まりますが・・・
Tennessee Waltz、説明不要でしょう。・・・
Pee Wee King作曲、Redd Stewart作詞、彼ら自身のGolden West Cowboys
が最初ですが、何といっても有名にしたのは、Patti Page
1950年に全米No.1ですが、その後ロング・セラーに
そして日本では、江利チエミさんの歌であまりにも有名ですね。・・・
・・・この近い時代だったら、Emmylou Harris、最も多く歌われている楽曲の1つでしょう。・・・
でもここでは、アコースティックなサウンドをバックに、唯一無二のAnne Murrayの歌の世界
でしょう。・・・
尚、Patti Pageは、晩年に、You Needed Me
をレコーディングしています。・・・
5曲目、ピアノにスティール・ギターが絡んで、Anneが静かに歌い始める・・・
There's Always A Goodbye
シンガー・ソングライター Randy Richardsの作品
彼自身も同年にリリースしています。・・・
邦題は「いつもさようなら」
メロディアスなナンバーで、ストリングも効果的に静かではありますが、タイトル通り、アルバムもドラマチックに幕を閉じます。・・・
You Needed Meの大ヒットに帰するものが大きいとは思いますが・・・
アルバム Let's Keep It That Way
全米最高位No.12
全米カントリー・アルバム・チャートNo.1
カナダアルバム・チャートNo.1
、カントリー・アルバム・チャートもNo.1
Anne Murray最大のヒット・アルバム
となりました。
1975年辺りからヒットが途絶え、「過去の人」と思われかねなかった Anne Murray
SnowbirdのAnne Murray
から、You Needed Me
のAnne Murray
へ・・・
カナダの歌姫から、世界規模のスーパースターへ躍進を遂げたのでした。
元体育教員だったということで、テレビ・シリーズ gleeの Jane Lynch演じる Sue Sylvesterを見ると、Anne Murray
を連想することがあります。
(勿論、あんな意地悪な人ではないでしょうが・・・(笑))
残念ながら、2008年のコンサート以来、表舞台からは退いているようですが、2010年のバンクーバー冬季五輪の開会式には登場
カナダでは、いかに重要な人であるかを世界中が認識したと思っています。
1978年・・・
You Needed Me、そしてこのアルバム Let's Keep It That Way
によって、Anne Murray
はSnowbird
から、ポップス史に名を残す、女性シンガーに大躍進したのでした。