1978年のアルバム(その42 Little Criminals / Randy Newman)
1978年のアルバム・シリーズ
全米最高位No.8から、全米最高位No.9
へ・・・
ということで、登場するのが・・・
Little Criminals / Randy Newman
Randy Newmanは、このシリーズ初登場
1974年のアルバム Good Old Boys以来3年ぶりの新作
Three Dog Nightの全米No.1ヒット Mama Told Me
の作者として知られた人ですが、その前作
が出たころ、「現代版フォスター
のような人・・・」と音楽誌に記されていたことが、印象に残っています。・・・
勿論、『フォスター』とは、音楽の教科書でも学んだ『アメリカ音楽の父』と呼ばれるStephen Foster、David Foster
ではありません。(笑)
そして1975年ですが、日本でも放映されていたThe Midnight Specialに、Randy Newman
が出たことがあり、眼鏡
をかけたその知的な風貌、さすが『現代版フォスター』、そう思いましたし、確か1曲は、Sail Away
、ピアノを弾いて2曲歌い、ジーンと心に響くものを感じました。・・・
そんなイメージの、Randy Newmanでしたが・・・
Little Crminalsは、「小さな犯罪者」
という邦題で日本でも発売
そこからのシングル Short Peopleが全米ヒット・チャートをなんと急上昇
その歌詞が・・・
Short People Got No Reason To Live~
Randy Newmanって、『現代版フォスター』だったのでは
・・・
確かに世の中を風刺した歌もよく書かれていて、Mama Told Meなんかもユニークな歌ですが・・・
こんな酷いことを歌っていいのか・・・そうも思いました。(苦笑)
Short Peopleと同時に、アルバム Little Criminals
もチャートを上昇してきました。
こちらはEaglesのメンバーが参加していることも話題に
1978年初頭、Saturday Night Feverが大ブレイクする直前くらいと思います。・・・
レコーディングは、1977年7月~9月、カリフォルニア州、ノースハリウッドの Warner Bros. Recording Studiosと The Burbank Stusios
にて・・・
Randy Newmanヴォーカル、キーボード、シンセサイザー
Michael Boddickerシンセサイザー、シンセサイザー・プログラミング
その他、Eaglesのメンバー等、楽曲ごとに豪華メンバーが参加しています。
エンジニアリングは、Lee Herschberg、Loyd Cliff
プロデュースは、Lenny Waronker、Russ Titelman
Warner Bros.の重鎮のお2人ですね。・・・
アルバム・ジャケット、デザインは、Mike Salisbury
写真撮影は、カリフォルニア州、ロスアンゼルス、7th ストリート、1013にて・・・
Bob Seidemann
全曲、Randy Newmanの作品です。
A面、ピアノの音が響いて・・・
Short People、シニカルな歌い方のRandy
バッキング・ヴォーカルに、EaglesのGlenn Frey
、J.D. Souther
、Tim Schmit
Klaus Voormannベース、Milt Holland
コンガ、Jim Keltner
ドラムス
そして効果的な音を出している Waddy Wachtelギター
凄いメンバー、コミカルに歌われていますが、酷い歌
(笑)
Randy曰く「ジョーク
」とのことですが・・・
"Don't Want No Short People 'Round Here~"
実は、全ての人が言いたいことなのかもしれません。・・・
全米No.2、アダルト・コンテンポラリー・チャートではNo.25
そしてCash Box誌では、全米No.1
勿論、Randy Newmanの最大のヒット曲となりました。
2曲目、オールド・タイム風のピアノに、ホーンの音色・・・
You Can't Fool The Fat Man、邦題「太った奴を馬鹿にはできない」
Willie Weeksベース、Milt Holland
コンガ、Andy Newmark
ドラムス
こちらも凄いメンバー、そしてシンセサイザーによるものと思われますが・・・
ストリングス、ホーンのビッグ・バンド風な音が作られ、語るように歌うRandy
2曲続けて、身体的特徴が歌われていますが・・・
ダブル・ミーニングとして皮肉が込められているようです。・・・
3曲目、軽快なピアノのイントロにギターが加わって、Randyが歌う・・・
Little Criminals、タイトル曲、「小さな犯罪者」
Willie Weeksベース、Andy Newmark
ドラムス、Rick Marotta
ドラムス
Milt Hollandパーカッション、Glenn Frey
ギター、そして Joe Walsh
ギター
印象的なイントロのフレーズに合わせて、軽快に歌うRandy
そして、Joe Walshのスライド・ギター・ソロが響きます。・・・
「小さな犯罪者」とは、全ての人を指しているのでしょう。・・・
4曲目、ストリングス音が流れ・・・ピアノをバックに静かに始まる・・・
Texas Girl At The Funeral Of Her Father、邦題はただの「テキサス娘」
・・・ですが、Ralph Griersonのピアノをバックに・・・
その「テキサス娘」の父親の葬式の状況を、Randyが静かに歌います。
「亡き父親」は「船乗り」、それとも「天国へ旅立つ」ということを、航海にたとえたのでしょうか・・・恐らく実話に基づいているのでしょう。・・・
5曲目、やはりピアノからですが、ムードは一転、コンガも入ってきて・・・
Jolly Coppers On Parade
Klaus Voormannベース、Milt Holland
コンガ、Jim Keltner
ドラムス、テンプル・ブロック、Waddy Wachtel
ギター
ピアノの音も力強く、Randyが歌うミディアム・テンポのロック
実際に行われたパレード・・・そこで子供が殺されたことへの警察への怒り
この歌にも皮肉が込められているようです。・・・
6曲目、重厚なストリングスが響き、ピアノでRandyの歌・・・
In Germany Before The War、邦題は「嵐の前のドイツにて」
1934年というのは、ヒトラー総統が誕生した年・・・それまでは、デュッセルドルフでは普通の毎日だったのに・・・
"I'm Looking At The River, But I'm Thinking Of The Sea~"
このようなわかりやすい言葉、自らユダヤ人であるRandyが歌うと・・・
恐ろしく、そして悲しく響いています。・・・
B面、交響曲のようなイントロから、ピアノによるRandyの歌・・・
Sigmund Freud's Impersonation Of Albert Einstein In Amarica
邦題は「フロイトによるアインシュタインの物真似」
Willie Weeksベース、Jim Keltner
ドラムス
1905年とは、アインシュタインが「特殊相対性理論」を発表した年
フロイトとアインシュタインは、第二次世界大戦の前に、戦争について書簡で議論を交わした間柄・・・
そんなところの皮肉もこの歌に込められています。・・・
2曲目、ピアノから静かに歌い始める・・・
Baltimore、ギターが入ってきて、徐々に盛り上がってきます。・・・
Willie Weeksベース、Andy Newmark
ドラムス、Rick Marotta
ドラムス
Milt Hollandパーカッション、そしてギターは、Glenn Frey
バッキング・ヴォーカルとして、Glenn Frey、J.D. Souther
この2人で、Eagles風のサウンドに・・・
「ボルチモア」という南北戦争の舞台であり、アメリカの最も歴史のある都市の歌・・・ということで、内容は、Hotel California
に共通するものも感じます。・・・
尚、この歌はその後、Nina Simoneほか多くの人がカバーしています。・・・
3曲目、やはりピアノで静かに歌い始める・・・
I'll Be Home、Harry Nilsson
の1970年のアルバム Nilsson Sings Newman
に書かれたナンバー
、いわばセルフ・カバー
Klaus Voormannベース、Jim Keltner
ドラムス、そして心地よい音を聴かせる Waddy Wachtel
ギター
シンプルな、アルバム唯一のラヴ・ソング
です。・・・
4曲目、今度はピアノからでも、カントリー調に、ギターも加わって・・・
Rider In The Rain
Randyの心地よい歌をバックアップするバッキング・ヴォーカルは・・・
Don Henley、Glenn Frey
、J.D. Souther
この3人の参加で、この曲もEaglesを思わせる曲調に・・・
Willie Weeksベース、Rick Marotta
ドラムス
そして、Waddy Wachtelのギターが終始、心地よいムードを作ります。
5曲目、軽快なピアノから、ややブルース風の曲調に・・・
Kathleen (Cathlicism Made Easier)
Willie Weeksベース、Rick Marotta
ドラムス、そして何と Ry Cooder
マンドリン、そして、あのJoe Walsh
のギターも登場します。・・・
やや不気味な歌い方のRandy、"Kathleen"を洗脳するということでしょう。(苦笑)
6曲目、アルバム最後は、Randy
が1人、ピアノで静かに歌う・・・
Old Man On The Farm、邦題「年老いた農夫」
文字通り、寂しい老農夫の姿が歌われ・・・
このアルバムも静かに幕を閉じます。・・・
前述の通り、全米最高位No.8
勿論、Short Peopleの大ヒットに帰するところが大きいとは思いますが・・・
多くの人が、この素晴らしいアルバムを知るきっかけとなったことは、本当に良いことであったと思っています。
それにしても、Short People、大ヒットしたことで、障害者団体等から抗議があったり、放送禁止になった地域もあったようです。
当時でもそのような状況だったので、昨今ではもっと大変なことになっていたのではと思います。
もしかしたら、英語圏でない日本からも多くクレームが行っていたかもしれないでしょう。(苦笑)
因みに、この Short People
この表現はあくまで比喩ということなら・・・
この歌に歌われていることは、まさにその通りと思っています。
歴史上の人物から、時勢の話題まで、バラエティ豊かな題材を取り上げる Randy Newman
昨今では、ディズニー映画のサウンド・トラック
で一般には馴染まれているかもしれませんが・・・
そのように幅広い音楽を生み出す人
やはり「現代版フォスター」と言える方であるように思います。
尚、自分自身、あまり詳しくはありませんので、このシリーズ、次に登場するとしたら、1980年の Trouble In Paradiseくらいかもしれません。(苦笑)