収録・配信講義に切り替わった関係上,専門記述に関して直接の質問対応をすることができなくなってしまいました。そこで,少し詳しめにブログ記事を書いておくことにします。例年,質問が多い部分を共有しておきます。

 

ブログの体裁では読みにくいと思いますので,PDF版もこちらに掲載しておきます(ただし,PDF版は,各自で勉強してもらいやすいように,太字下線処理は行なっていませんので,ご了承ください。→https://www.dropbox.com/s/u9vg5dxg1o02pyy/200328%E5%B0%82%E9%96%80%E8%A8%98%E8%BF%B0%E6%86%B2%E6%B3%95%EF%BC%88%E9%81%95%E6%86%B2%E5%AF%A9%E6%9F%BB%E5%9F%BA%E6%BA%96%EF%BC%91%EF%BC%89.pdf?dl=0

専門記述憲法対策の合理的学習法

公務員試験で課される「専門記述憲法」では,「違憲審査基準」に言及しなければならない問題が多く出題されています。誤解を恐れずに言えば,違憲審査基準に対する理解を適切に表現できれば,合格ラインを超えます(事例問題においては,その基準へのあてはめも求められます)。

違憲審査基準

まずは,違憲審査基準が何だったのかを復習していきましょう。違憲審査基準は,裁判所が,ある国家行為が合憲かどうかを判断する際に用いる判断基準です。

 

ここでは,検討を進めるために,裁判所がある自由権を規制する法律の違憲性を審査する場合,を想定して解説していきます。

裁判所が違憲審査を行う場合に,違憲審査基準としてどのようなものを選択すべきなのでしょうか。

 

法学部の授業では,この審査基準として何を選ぶのかについて判例の判断枠組みや学説の内容を整理していきますが,みなさんが受けるのは公務員試験です。そこで,公務員試験の専門記述対策として,まずは,汎用性が高い以下の3つの基準を整理し,使いこなせるようにしておくことをオススメしておきます(この3つの基準は,合わせて「三種の基準」と呼ばれることがあります)。以下でも,この用語法によって解説していきます。

目的手段審査・三種の基準

ある法律の違憲性を判断する場合は,当該法律の規制目的および手段を審査することが多いです(ここでは「自由権を規制する立法」を想定して解説していきます(※1)。

 

目的と審査をどの程度厳格に審査するのかによって,三種の基準を使い分けていくことになります。

どのように使いこなすのかを説明する前に,三種の基準に内容を確認しておきます。

  1. 厳格な基準
  2. 厳格な合理性の基準
  3. 合理性の基準

厳格な基準

まず,1の「厳格な基準」は,問題となっている法律の規制目的がやむを得ない利益を達成するためであるかどうかを審査します。もしこのような利益を達成するためではない,という結論になれば,当該法律は違憲となります。
 
一方,このような利益を達成するためであると認定された場合は,手段審査を行います。手段審査では,当該法律が採用している規制手段が,当該規制目的を達成するために必要最小限の手段といえるかどうかを審査します。この基準による違憲審査をクリアするためには,手段が過剰であってもクリアできませんし,過小であってもクリアできません(そのため,ぴったり裁断された手段と言えるかどうかをみる,と説明されることもあります)。

厳格な合理性の基準

次に,2の「厳格な合理性の基準」は,問題となっている法律の規制目的が重要な利益を達成するためであるかどうかを審査します。もしこのような利益を達成するためではない,という結論になれば,当該法律は違憲となります。
 
一方,このような利益を達成するためであると認定された場合は,手段審査を行います。手段審査では,当該法律が採用している規制手段が,当該規制目的との関係で実質的に関連しているといえるかどうかを審査します。実質的に関連している,というのは,典型的には,当該目的を達成する手段として複数想定される場合において,目的達成のために他に選びうる制限的でない手段がない場合のことをいいます。

合理性の基準

最後に,3の「合理性の基準」は,問題となっている規制目的が正当な利益を達成するためであるかどうかを審査します。もしこのような利益を達成するためではない,という結論になれば,当該法律は違憲となります。
ここでいう「正当な利益」とは,「不当な目的ではない」という程度の意味合いになりますので,ほとんどの規制目的がこの審査をクリアすることになります

一方,このような利益を達成するためであると認定された場合は,手段審査を行います。手段審査では,当該法律が採用している規制手段が,当該規制目的との関係で合理的に関連しているといえるかどうかを審査します。この審査基準は,かなり緩やかな審査を行うことになります。
 
また,手段審査も,合理的に関連していれば足りる,とするので,仮に,当該規制手段以外に他に選びうる制限的でない手段が存在している場合でも,当該法律が採用した規制手段が目的達成のために役立っているといえるのであるから,合理的に関連していると結論づけられることになり,合憲と判断されます。

次回予告

以上の内容については,答案にそのまま書くことはありませんが,質問を受けることがある部分について,少し詳しく解説しました。
 
次回の記事では,上記の審査基準をどのように答案に表現するのかを確認したうえで,これらの基準の使い分けについて検討していきます。
 
(※1)生存権などの社会権だと,判断手法が異なりますので,注意してください。また,自由権の規制においても,例えば,表現の自由に対する内容規制が問題となる場合には,「定義付け衡量」という手法が用いられます。この記事で全て完璧というわけではない点に注意してください。この記事では,専門記述試験でよく問われることをできるようになるという目的を達成するため,まずは三種の基準のみ解説します。

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https://ameblo.jp/takayukiyasuda515/entry-12460894145.html

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