サイエンス・ファクト クリストファー・ノーラン監督『インターステラー』を妄想力で読み解く① | 天野という窓

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今回は「ノーラン監督作品を妄想力で読み解く!」シリーズ、各論編の第4回として、

2014年公開の『インターステラー』について書きたいと思います(その①)。

 

『インターステラー』も、他のノーラン監督作品同様に

「時空間」を創造し、そこにキャラクターを投入して振る舞いを観察してみようという思考実験系の作品であるように思います。

その実験の成果として、大きく3つのものが描かれていると感じました。

 

①映像化された理論物理学的現象

②ノーラン的「愛」

③時間を超えた「stellar」

 

まず①ですが、これはとっても分かりやすいですね。

ワームホールにブラックホール、事象の地平面を越えたブラックホールの内側、五次元空間(の中に作られた三次元空間)など、理論的にはあり得るものの誰も観測したことがない、というかほぼ観測不可能に近い現象を映像化する。

(ブラックホールは2019年に観測されましたが)

 

ストーリーの重要なキーポイントになっている点も面白いですよね。

相対性理論の、いわゆるウラシマ効果(超重力下では時間の進みが遅くなる)無くしてこの物語は成立しませんし、ブラックホールのスイングバイで船の加速度を得るなんて、SFマニアなら泣いて喜ぶ設定です。

 

(個人的には、せっかくブラックホールの中に入るなら「事象の地平面を越えた宇宙船(クーパー)が、外からどう見えるのか?」も映像化してほしかったなあ、とこぼしておきます。。)

 

…SFと言えば、この作品は一応、SFに分類されると思いますが

ノーラン監督としてはサイエンス「フィクション」として描く意図はなかったんじゃないかと思います。

 

主だった映像にはちゃんと理論物理学的な考証が入っているようですし、何よりデザイン。

宇宙船のデザインだったり、その内装だったり、宇宙服だったり…

フィクションとして誇張したものというよりは、現在の宇宙開発の延長線上に位置するような、非常に「現実感」を感じさせるデザインです。

(現実問題として、あれで恒星間ミッションが可能なのかという点は置いておいて)

 

架空の組織ではなく、NASA(表向き存在しない)のミッションであるという設定も効いていますね。

 

そして、(映画を観る限り)船内等の映像にほとんどCGを使っていない。

メカメカしく、ちゃんと「実物」を作って動かしているんですよね。かなり気合を感じます。

 

SF作品によく登場するような、理論物理学的な宇宙ネタをふんだんに盛り込みつつ、フィクションとして描く意図は、実はなさそうに見える。

つまり「現在の延長線上として、いつかは訪れるファクト」として、SF的題材を取り扱っている。

 

実はこれ、この映画の核心のような気がしています。

(それについては③で触れようと思います)

 

思考実験的な作品でありつつ、単なる空想に留まらない現実感を担保し、

それによって、「過去-現在-未来」に連綿と連なる、ある系譜を描いてみせる。

 

「Interstellar」というタイトルにはそんな意図が秘められている、と勝手に考えているのですが、

それについては、もう少し先で書きたいと思います。